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古村治彦です。 本日は、来る2012年7月1日に開催される副島隆彦先生の「第4回副島隆彦の“予言者”金融セミナー」のご案内をいたします。 副島先生の最新刊『欧米日 やらせの景気回復』(2012年4月、徳間書店)の中にご案内のハガキが挟んでありますが、こちらのブログでもご紹介いたします。 開催日:2012年7月1日 開演:午前11時(開場・受付:午前10時) 終了:午後5時30分(予定) 受講料:15,000円(税込)/全自由席 定員:596名(ただし、座席を追加する場合もございます) 会場:東商ホール(東京商工会議所ビル4階) 100-0005 東京都千代田区丸の内3-2-2 アクセス:JR有楽町駅・・・5分 地下鉄千代田線二重橋駅前・・・2分 都営三田線日比谷駅・・・2分 申し込み期限:2012年6月18日(月)(それ以降のお申し込みは直接お電話で承りま す) お問い合わせ:ブレイントラスト企画(成甲書房内) 101-0051 東京都千代田区神田神保町1-42 電話:03-3292-8401(平日:午前10時から午後6時まで) ファクシミリ:050-3156-3040 email: seminar@seikoshobo.co.jp ![]() 東商ホールへのアクセス ![]() 古村治彦です。 ![]() 今回も拙著『アメリカ政治の秘密』を宣伝いたします。宣伝ばかりで申し訳ありません。ですが、本は最初の数週間が勝負だと経験上考えておりまして、もうしばらく宣伝にお付き合いをいただけますようによろしくお願い申し上げます。 『アメリカ政治の秘密』は、2012年5月13日にウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内「今日のぼやき・広報ページ」に中田安彦(アルルの男・ヒロシ)SNSI筆頭研究員による紹介文である「「1306」 爆弾のような破壊力を持った一冊!! 古村治彦著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)を強力に推薦する。2012年5月13日」が掲載されて以降、興味を持っていただける方が急増中であります。アマゾンの順位では、最高で全体121位、現在は165位と健闘中です。昨日は、担当編集者から電話があり、新人にしては大健闘だということも言われました。 これもひとえに皆様方のご協力のおかげです。誠にありがとうございます。今後も精進してまいります。 ※「今日のぼやき・広報ページ」へは、こちらからどうぞ。 また、ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」では、『アメリカ政治の秘密』の頒布が始まりました。4冊セット1万円ですが、今ではもう書店で手に入らない書籍も多数取り揃えております。ご利用をいただけますようよろしくお願い申し上げます。 ※「副島隆彦の学問道場」の本の頒布コーナーへは、こちらからどうぞ。 以上、宣伝をいたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 古村治彦です。今日は、2012年5月11日です。 ![]() 先日、2012年5月12日に発売予定の単著『アメリカ政治の秘密』の見本が出来上がり、出版社PHP研究所に受け取りに行ってきました。 本日、いよいよ『アメリカ政治の秘密』が取次から書店に配送される「配本」という佐合が開始されます。都内の書店では5月13日頃から。全国的にはその1、2日後くらいから書店の店頭に並べられると思います。 皆様のお手元に本を実際にお届けできる日が近づいてきました。もし書店等で見かけられましたら、是非、手に取ってご覧いただければと思います。宜しくお願い申し上げます。 本日、このブログでは、本の発売直前ということで、本の宣伝を行いたいと思います。何をやるのかと言いますと、『アメリカ政治の秘密』から、副島隆彦先生に書いていただきました序文と、目次をここに紹介します。 これらを参考にしていただき、是非、『アメリカ政治の秘密』をお読みいただけますように、よろしくお願い申し上げます。 (貼り付けはじめ) 副島隆彦による序文 本書、『アメリカ政治の秘密』の著者である古村治彦(ルビ:ふるむらはるひこ)氏は、私が主宰する副島国家戦略研究所(SNSI ルビ:エス・エヌ・エス・アイ)の研究員である。 古村氏は、二〇〇一年から六年間、アメリカのロサンゼルスにある南カリフォルニア大学の大学院に留学し、本場でアメリカ政治学を学んできた若手学者である。彼がこれから日米の政治分析やアメリカ政治研究で活躍してくれることを私は強く希望している。 今回、古村氏が、これまでの調査研究の成果をまとめて、初めての単著『アメリカ政治の秘密』として、PHP研究所から出版していただくことになった。私も大変喜んでいる。私は、才能のある若い知識人をたくさん育てていくことが、私の責務であると考え活動してきた。私は、副島国家戦略研究所(SNSI ルビ:エスエヌエスアイ)を主宰し、集まってくる「才能はあるが恵まれた環境にいない」若者たちを育てている。古村氏もその一人である。SNSI(ルビ:エスエヌエスアイ)は、中田安彦氏や古村氏に続いてこれからも若い人材を世に出していく。 本書、『アメリカ政治の秘密』は、私が二〇年前から確立した「帝国―属国理論」とアメリカ政治研究の系譜に連なる本である。私の主著『属国・日本論』(五月書房、一九九七年)と『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』(講談社+α文庫、一九九九年)及びSNSI筆頭研究員の中田安彦氏の『ジャパン・ハンドラーズ』(日本文芸社、二〇〇五年)で、日本における現在のアメリカ政治研究、日米関係研究は、飛躍的に進歩したと自画自賛している。 本書、『アメリカ政治の秘密』は、私や中田氏の研究の枠組みを用いている。だが、著者独自の視点からの新事実の発見と分析がふんだんに盛り込まれている。 この一〇年でようやく、日本国民の中に「日本はアメリカの属国である(残念だ)」という考えが受け容れられるようになった。普通の人たちでも「日本はアメリカの属国だから仕方がないんだ」と平気で口にする。 私が一九九七年に『属国・日本論』を出した頃は、「日本はアメリカの属国である」と書いても、冷たく黙殺され鼻で嗤(ルビ;わら)われた。もしくは激しく嫌われて、反論される反応しかなかった。それが、一般国民に間でも、「日本属国論」がじわじわと浸透しつつある。しかし、知識層だけでなく、日本の大テレビ局五社(それにNHK)と大新聞社五社の合計一一社は、今も私を徹底的に無視している。 「日本属国論」が浸透するようになった理由は、やはりアメリカの日本管理が杜撰になり、これまでのような温和さと鷹揚さがなくなったからだ。アメリカが日本を上手に管理し、操るだけの余裕がなくなった。かつ、日本人の側も「何かおかしいな」という疑問を抱くようになったからだ。 アメリカは、長年、日本をうまく管理してきた。一九九〇年代までは、日本全体がアメリカに“洗脳”されている状態だった。 選抜され、フルブライト奨学金でアメリカの大学に留学させてもらった人々は、アメリカに育てられて日本に帰ってくる。そして、日本の政界、財界、マスコミなどで重要なポジションに就く。彼らは、頭からどっぷりとアメリカの行動を何でも支持する。そして今もアメリカの国債を、円高対策のためと称して、日本国民の血税を使って一回あたり何兆円も購入する。この状況が現在でも続いている。 しかし、アメリカも相当に行き詰ってきた。アメリカは世界覇権国(ルビ:ヘジェモニック・ステイト)として世界で君臨してきたが、覇権国(=帝国 ルビ:エムパイア)としての国内だけでなく、世界の経営もうまくいかなくなってきている。だから、主要な周辺属国のひとつである日本を良い気持ちにさせながら管理していくという方法がなかなか取れなくなった。その結果、日本に対して露骨な、そして凶暴な本性を垣間(ルビ:かいま)見せるようになってきた。 その表れのひとつとして、日本からアメリカへの留学生の数は、一九九七年に史上最高の四七〇七三人を記録した。それ以降、減少し続けている。二〇一〇年には、わずか二一二九〇人となり、一九九七年と比べ半減している(日米教育委員会の統計)。それに比べてアジア諸国からのアメリカ留学が一段と増加し日本だけが減少している。このアメリカの衰退は、そのまま現在の世界経済の状況をも映し出している。 ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、日本に来るたびに嘆いている。「ハーバード大学に留学してくる日本人学生の数が激減している。これは日米関係にとってマイナスになる」と。ナイが学科長をしているハーバード大学ケネディ行政学大学院(通称“Kスクール”)には、日本の各省庁から多く留学していた。が、その数が激減している。ハーバード大学のウェブサイトで(http://www.hio.harvard.edu/abouthio/statistics/studentstatistics/academicyear2010-2011/)で調べると、中国や韓国からの留学生が数十人いるのに対して、日本からの留学生の数はわずか一二名だ。日本からのエリート留学生が減ると、ナイは、二つの面で困る。 まず、自分たちの食い扶持の収入が減る。アメリカの大学経営は、一般企業に劣らずシビアな競争の世界である。二つ目は、自分たちの意思に従って、日本を管理する、日本側の人材が減少してしまう。これまでのように立派に“洗脳”して日本に送り返して、重要ポストに就け、アメリカの政策を東アジアで貫徹する仕掛け(仕組み)そのものが弱体化していく。 アメリカにとって海外からの留学生は、一つの産業である。世界中の若者が最新の学問を学びに、また英語を身に着けるためにアメリカにやってくる。アメリカの大学にとって留学生は、多額のお金を落としてくれる大事なお客様なのである。最新の統計によれば(http://www.fulbright.jp/study/res/t1-college02.html)、アメリカへの留学生の数は約七二万人である。そのうちのおよそ三分の二の四六万人がアジアからの留学生だ。上位の三カ国は、中国、インド、韓国である。日本は第七位となっている。 学費と生活費で、アメリカへの留学生一人当たり年四〇〇万円(約三万ドル)くらいかかる。すると、日本人留学生が最盛期の約四万七〇〇〇人から約二万二〇〇〇人に減少すると、単純計算で約一〇〇〇億円の減収だ。アメリカの留学産業にとって、この減収は大きな痛手だろう。 本書は、前半部では「アメリカの外交の手口(世界各国への介入の仕方)」を、後半部では「アメリカの日本管理(日本の計画的な操り)の手口」を取り上げている。前半部で明らかになったことは、二〇一〇年末から二〇一一年にかけて発生した中東諸国の「アラブの春」が、アメリカ政府(とくにヒラリー・クリントン派)によってあらかじめ周到に準備されていたものであることだ。 後半部は、日本に対するアメリカの最新の管理の諸手法を解明した。 これらを本書『アメリカの秘密』は、必ずしもジャーナリズムの手法に寄らず学問的な緻密さで白日の下に明らかにした。読者諸氏のご高配を賜りたい。 二〇一二年三月六日 副島隆彦 ========== 『アメリカ政治の秘密』・目次 副島隆彦による序文 まえがき 第一章 ヒラリーに乗っ取られた外交―オバマ外交の変質 ●世界中から歓迎されたオバマ大統領の誕生 ●現実主義的な外交姿勢を標榜したオバマ大統領 ●オバマ政権の外交姿勢が変化した ●オバマ政権でヒラリーを応援してきた女傑三人衆 ●サマンサ・パワー ●スーザン・ライス ●アン・マリー・スローター 第二章 現在のアメリカ外交の基本政策は民主化 ●民主化はアメリカの外交目標である ●アメリカが準備していた「アラブの春」 ●米国務省政策企画局長 ●全米民主政治のための基金 ●米国国際開発庁 ●政治学における民主化理論・現実政治に仕える政治学 ●アラブの春と同時期に起きていたミャンマーの民政移管 第三章 アメリカ外交の流れ―介入主義と現実主義 ●アメリカ外交政策の流れを大まかに分類する ●介入主義 ●現実主義 ●ネオコンについて改めて説明する ●レーガン政権の基礎となった「カークパトリック・ドクトリン」ネオコン派第一世代 ●カークパトリック・ドクトリンに反発したネオコン第二世代 ●現実主義派が多数を占めていたジョージ・H・W・ブッシュ政権 第四章 アメリカの介入外交はケネディから本格化した ●ケネディが行った介入主義的政策 ●ケネディが行った日本の労組穏健化への取り組み ●ケネディ外交の基礎となった近代化論 ●近代化論の創始者W・W・ロストウとアレクサンダー・ガーシェンクロン ●ネオコン第二世代の先駆けはガリガリ右翼ロストウ ●近代化論に対抗する二つの理論 ●ケネディの介入主義から日本管理は始まった 第五章 エドウィン・O・ライシャワーとチャルマーズ・ジョンソン―日本管理路線の創始者と反対者 ●菊クラブ=ジャパン・ハンドラーズ=日本研究正統派の創始者・ライシャワー ●ケネディ・ライシャワー路線 日本管理路線の始まり ●ライシャワーの日本管理路線を引き継いだ「菊クラブ」 ●ライシャワーは日本古代史の研究者として出発 ●ライシャワーが日本で流行させた近代化論 ●ライシャワーの日本近代化論に説得力を与えたジャンセンの坂本龍馬研究 ●ロストウの近代化論をそのまま利用したライシャワー ●チャルマーズ・ジョンソン=日本研究正統派から「修正主義者」のレッテルを貼られた学者 ●チャルマーズ・ジョンソンの通産省研究 ●アメリカでも民主党政権になると採用される産業政策 ●日本研究の二つの流れ:正統派と修正主義派 第六章 日本管理の前線司令官 ジェラルド・カーティス ●カーティスが期待する日本の若手政治家たち ●カーティスが作った野党人脈が菅内閣につながった ●日本管理は世代を超えて継続されている ●日本の選挙の研究で博士号を取得 ●実はアメリカ本国で学者として評価なしのカーティス ●日本のTPP参加推進担当 第七章 ライシャワーの嫡流:ケント・カルダー ●ライシャワーの最後の弟子 ●現在の国務省日本部長はカルダーの弟子 ●民主党の普天間基地移設問題のキーマンとの人脈 ●日本にあるアメリカの軍事基地を維持するための研究 ●“バラマキ政治”補償型政治で政治家優位を説明 ●産業政策はうまく機能しなかったという主張 第八章 日本管理のための洗脳担当:リチャード・サミュエルズ ●学者一筋の人生なのにどこか怪しいサミュエルズ ●サミュエルズが主催する洗脳の道具としての危機シミュレーション ●ついに日本でも開催されたサミュエルズ式シミュレーション ●サミュエルズの代理人・油木清明 ●普天間基地移設問題についてのサミュエルズの考え ●産業界の研究を行ったサミュエルズ ●岸信介を通じて日本政治の連続性を研究 ●日米安全保障戦略についての研究に着手 あとがき (貼り付け終わり) ![]() ※『アメリカ政治の秘密』の内容を講演会でお話しした内容が収められたDVD『今、世界経済がどう変質しつつあるか』が発売されています。DVD頒布ページへは、こちらからどうぞ。 古村治彦です。 今回は、『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』をご紹介します。 ========== 「宣伝文0006」 パラグ・カンナ著『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』(古村治彦訳、講談社、2011年)が発売されました。 古村治彦(ふるむらはるひこ)筆 2011年6月10日 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦です。このたび、私が翻訳しました『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』(原題:How to Run the World: Charting a Course to the Next Renaissance)が講談社から発売になりました。全国各地の書店にも置いてあります。 本書の著者パラグ・カンナは新進気鋭の国際政治学者、地政学者です。1977年生まれで、現在ワシントンにあるニューアメリカ財団の主任研究員をしています。デビュー作『「三つの帝国の時代」』は話題となりました。本書『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』はカンナの著作第2弾です。 本書『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』で、カンナは「巨大化する外交(メガ・ディプロマシー)」という概念を提唱しています。このメガ・ディプロマシーとは、これまで職業外交官たちや国際機関が独占してきた外交に様々なアクターが参加することでより機能するものとするというものです。NGO、有名人、宗教家、人道支援活動家たちが能力を持ちより、分業することで外交を行うというものです。 カンナはこれまで大きな厄災をもたしてきた国境は引き直されるべきだと主張しています。そして、鉄道や石油や天然ガスのパイプラインを重視すべきだとも述べています。カンナは、アメリカの衰退と併せて、現代の国民国家と各国政府が機能を果たせなくなりつつあると指摘しています。こうした状況は1000年前の中世とよく似ていると指摘しています。 原著は、2011年1月に発売されました。同時期に翻訳を進めておりましたところ、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、3月12日には東京電力福島第一原子力発電所で原子炉のトラブルから放射能漏れ事故が発生しました。著者のカンナ氏は、日本の読者のために、「日本は必ず復興する」という趣旨の日本語版の序文を送ってくれました。この序文も読みごたえがあります。是非手にとってお読みください。 本書『ネクスト・ルネサンス』の発刊に際し、このページでは、海外での書評、著者パラグ・カンナ氏のインタビュー、カンナ氏がニューヨーク・タイムズ紙に掲載した論稿をご紹介したいと思います。 『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』をどうぞよろしくお願い申し上げます。 ========== ●Kirkus Book Review (出版前の本の書評を行い掲載するウェブサイト) 2010年10月15日になされた書評 http://www.kirkusreviews.com/book-reviews/non-fiction/parag-khanna/how-run-world/?spdy=2011 ニューアメリカ財団の上級研究員パラグ・カンナ(『「三つの帝国」の時代』の著者)は、世界が不安定になっている時期に世界の諸問題を解決するために新しい「メガ・ディプロマシー(巨大化する外交)」が必要だと説く。カンナは、職業外交官たちが長い間、世界をどう動かすかを交渉して決めてきた、と書く。古代シュメールで都市国家が繁栄した時代、外交官たちは王たちの間で神の言葉を取り次いだ。現代社会においては、外交官たちは大きな戦争の後、戦後処理として世界を分割するための交渉を行ってきた。 今日の「分裂し、断片的になり、統治不可能な」世界において、世界を単独でコントロールする力を持つ超大国は存在しない。ポスト冷戦時代の世界では、各国政府、企業、市民活動家たちの連携を基にした新しい外交の方法が必要となっている。情報技術革命によって、公的部門と民間部門は効率的に協働でき、国境を越え、テロリズム、エイズの大流行、気候変動といった世界規模の諸問題に対処できるとカンナは書いている。この新しい形の外交にとって、企業家、学者、活動家、有名人、その他様々な人たちが新しい外交の重要な参加者となる。彼らはこれまでにはなかった協力体制を構築し、地雷禁止、最貧国の債務免除、国際刑事裁判所の創設などの目的を達成しようとしている。 そうした人々には、ビル・ゲイツ、メリンダ・ゲイツ夫妻、ボノやアンジェリーナ・ジョリーまで様々な人が数えられる。こうした人々は財力と影響力を持っている。またオープンソサエティ財団は世界規模の重要な問題を提起し続け、世界経済フォーラム(WEF)は「新しい外交の設計者」となっている。WEFは年に何度も開かれる会合に多様な参加者を招き、議論の場を提供している。クリントン・グローバル・イニシアチブは政治、経済、社会の各分野のリーダーたちの提携を推進している。 カンナは新しい外交が世界規模の諸問題の解決のための斬新なアプローチを提供するとして、その方法をいくつか提案している。世界各国が協力して情報を共有するという協力体制を作る。ソマリアの漁民が海賊行為に走らないようにする(例えば高速漁船を提供して漁獲高を上げるなど)。そして、イランと北朝鮮に対して、彼らには核開発プログラムは必要ないと説得する。環境保護の分野では、新しい外交によって官民連携が意義あるものとなる、とカンナは書いている。これまでいくつも結ばれてきた国際的な合意よりも環境分野に影響を与え、環境保護が進むようになるとカンナは主張している。メガ・ディプロマシーのモデルとして、カンナはヨーロッパを挙げている。域内では国境がなくなったヨーロッパ連合(EU)の加盟国は共通の諸問題の解決のために実験と協力を継続している。 世界統治に対する議論への大きな貢献となる一冊である。 ========== ●「Amazon.com」に掲載された著者パラグ・カンナのインタビュー http://www.amazon.com/How-Run-World-Charting-Renaissance/dp/1400068274/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1305046793&sr=8-1 インタビュアーはスティーヴ・クレモンス。ブログ「ワシントン・ノート」の著者。クレモンスとカンナはニューアメリカ財団の同僚。 質問:デビュー作『「三つの帝国」の時代』であなたは、現代の世界は、数十カ国の新興国に対して、複数の超大国が影響力を及ぼそうと競争している世界だ、と書いた。本書『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』で、あなたは、新しい世界の構造はどのようになると書いているのか? 答え:私は「これからの世界は強力な国々とそうではない国々で構成されるようになる」とは考えていない。これからの世界は1000年前の中世世界のようになると考えている。1000年前の中世世界では、現在と同様、東洋と西洋が同時に強力であった時代である。それ以降現代まで、両方が同時期に強力ということはなかった。中国の宋帝国では紙幣が発明された(中国は今でも紙幣をたくさん保有している!)。南インドに栄えたチョーラ朝は東アフリカからインドネシアにかけての海を支配した。アラブ・イスラム世界はアッバース朝時代に繁栄のピークを迎えた。アッバース朝の領土は現代のスペインのアンダルシア地方から中央アジアにまで広がっていた。一方、ヨーロッパの神聖ローマ帝国は不確実で、不安定な状況にあった。 質問:1000年前のグローバライゼーションと現在のグローバライゼーションはどれくらい似ているか? 答え:歴史的に見ると、十字軍の遠征の終結は、時代の重要な転換点になった。ヨーロッパはコモディティやスパイスを獲得するために商業に集中するようになり、新しい土地や商品の発見のために遠洋航海を始めた。これが史上初の世界規模の通商システムを創造することにつながった。ヨーロッパ中で活躍した銀行網は長距離の遠洋航海のための資金を集めた。この時期の長距離遠洋航海では多額の資金に加えてコンパスの発明も大きな貢献となった。イタリア人のマルコ・ポーロやモロッコ人のイブン・バトゥータは数千マイルの旅を行った。その結果、東洋と西洋の相互理解は深まった。グローバライゼーションは経済、戦略、文化の面で昔のように再び起こっている。興味深いのは、中世時代のグローバライゼーションの参加者は、都市、企業、教会、ギルド、傭兵、大学、人道主義活動家であったことだ。これは現代のグローバライゼーションでも同じである。 質問:現代のような複雑な世界における外交はどうあるべきだろうか? 答え:外交は主権ではなく地位と権威を基礎にした政府で行われてきた。今日、外交は聖職者、企業経営者、有名人、活動家、その他の人々といった幅広い人々の間で行われる相互活動である。彼らは資金、資源、才能を持ちよって世界規模の諸問題に対処している。私はこれを「メガ・ディプロマシー(巨大化する外交)」と呼んでいる。世界中の人々がたかだか200の政府に代表されることなど不可能だ。その代わり、メガ・ディプロマシーではより多くのグループが自分たちを代表して、自分たちの利益を追求することができる。各国家の違いを強調する外交に代わり、メガ・ディプロマシーはこうしたグループ間のより有機的な連帯を創造することができる。こうしたグループが連帯することで協働も生まれる。 質問:複雑さを伴う新しい時代の秩序をアメリカはどのようにコントロールできるだろうか? 答え:アメリカが世界中で行ってきたことはこれまでのどの国家や帝国がやったことよりも偉大である。アメリカの企業は金融、技術、マネジメント技術を世界中に広めた。アメリカの大学は中東やアジア地域にキャンパスを置き、次代のリーダーたちを教育している。アメリカ市民と慈善団体は世界で最も寛大である。アメリカはこれまで数十年間尊敬すべきリーダーたちがやってきたように、これからも国を開き、世界の諸問題に関与する必要がある。アメリカは各国政府ではなく、市民たち同士の関係を構築すべきだ。ヨーロッパ、日本、インドの市民たちとアメリカの市民たちがより良い関係を築く。そうなれば同盟はより長続きし、安定したものになる。 ===== ●「中央アジアにおける新しいシルクロード(Central Asia's New Silk Roads)」 2010年8月12日 ニューヨーク・タイムズ紙論説欄(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙論説欄から転載) パラグ・カンナ(PARAG KHANNA)筆 モンゴルのウランバートルから。アフガニスタンで新たに発見されたリチウム鉱脈は、海に面していない中央アジア地域で見つかる他の天然資源と同じ運命をたどるだろう。欧米諸国が見つけて開発するが、それらをコントロールするのはアジアである。 シベリアの木材、モンゴルの鉄鉱石、カザフスタンの石油、トルクメニスタンの天然ガス、アフガニスタンの銅鉱石は新しく建設された中国向けの輸送ネットワークを通じて中国国内に運ばれている。こうした資源が世界最大の人口を抱える中国の急速な経済発展を支えている。 中国は現在、急ピッチで中央アジア地域に道路、鉄道、パイプラインを建設している。こうした社会資本は欧米諸国にもチャンスを与えるし、中央アジア諸国にも経済発展の機会を与える。19世紀に繰り広げられたグレート・ゲーム(Great Game)を、天然資源を巡ってこの21世紀でやることなどない。欧米諸国は中国の国内発展を支援するようにすべきだ。欧米諸国は、中国の地方政府を指導することで、繊維製品や農産物の輸出を増やすことに貢献できる。また欧米の先進諸国は、多くの天然資源輸出国が陥った「資源の呪い(resource curse)」に中国がかからないように輸出品の多様化を進めることにも協力できる。 中国は海に面していない中央アジアを海につなげるために社会資本の整備を進めている。欧米諸国は新しい建設される、東西を結ぶシルクロード(East-West Silk Road)を成功させるように動く必要がある。この新しいシルクロードは石油を運ぶためのものとなる。 カスピ海沿岸の油田からカザフスタンを通る石油パイプライン、トルクメニスタンからウズベキスタンとカザフスタンを通る、最近完成した天然ガスのパイプライン、ロシア国内を通る道路や鉄道の建設計画などこの地域の社会資本の整備は着々と進んでいる。これらの道路やパイプラインは、パキスタンのグワダルの天然の良港にまでつながっている。中国は中央アジアを大国間の緩衝地帯から東西を結ぶ回廊にしようと努力している。その証拠が中央アジア地域の社会資本整備に中国が深く参画していることである。中国政府の指導者たちは、ユーラシアを中国の経済発展に必要な天然資源を大量に埋蔵している地域だと見ている。 中国が中央アジアとアフリカに進出していることを新しい植民地主義ではないかと疑いを持って見る必要はない。欧米諸国の各企業は、中国が建設した道路、鉄道をいかに利用してそうした地域で成功を収めるか、戦略を練るようにすべきだ。中国と競争するのではなく協調していくことが重要だ。中央アジアで中国と協調するためには、社会資本建設に多額の投資を行うこと、地図上の役に立たない、恣意的な国境を超える新しい線(道路やパイプラインなど)を引くことである。道路やパイプラインは経済的利益を中央アジア、中国、欧米各国にもたらす。 中央アジアの社会資本プロジェクトで最も重要なものはまだ建設されていない、トルクメニスタン・アフガニスタン・パキスタン・インド(TAPI)天然ガスパイプラインと、イラン・パキスタン・インド(IPI)天然ガスパイプラインである。TAPI天然ガスパイプラインについて言えば、アフガニスタンの治安情勢が確保されないために建設が進まない。TAPI天然ガスパイプラインに投資しようという投資家は数多くいるし、アジア開発銀行も融資をしようとしているだけに残念だ。TAPI天然ガスパイプラインが建設されることでアフガニスタンの人々には職を与えることができるし、エネルギー不足が続いているアフガニスタンとパキスタンに安いエネルギーを供給することができる。米軍はアフガニスタンで軍事戦略を進めているが、その戦略の中にパイプライン建設など経済開発プロジェクトも含めるようにすべきだ。 イラン・パキスタン・インド(IPI)天然ガスパイプラインについて言うと、アメリカは建設に反対しているが、イランとパキスタンは建設を始めることで合意に達した。 アメリカ政府が気づくべき、最も重要なことは、イランを孤立させると近東と中央アジアをつなぐ架橋がなくなってしまうということだ。ヨーロッパ各国も中国もこのことにきちんと気づいている。ヨーロッパはナブコ・パイプラインを建設し、中国が融資を行って建設が進められている北部アフガニスタンからイランへと続く道路を建設している。ヨーロッパや中国派こうしてイランを孤立させるのではなく参加させることで地域を安定させようとしているのだ。 中央アジア諸国の地方政府では天然資源を発見しても精製も輸出もできない。欧米諸国が開発に参加することで関係する国々全てに利益が出るようになる。アフガニスタンは、鉱山技術をほとんど持っていないが、中国、オーストラリア、ロシアの企業群がアフガニスタン国内の鉱山開発を進めることができる。モンゴルでは外国企業による鉱山開発がここ20年ほどにわたり続いており、その結果、モンゴルはミネラルの輸出を急増させ、経済発展が加速している。モンゴルは鉱山技術以外にも欧米諸国の知識を利用している。モンゴルはノルウェイの真似をして、開発危機を設立し、ミネラル輸出で得られる利益を国民に還元している。またペルー人の高名な経済学者であるヘルナンド・デ・ソトをモンゴル政府が招聘している。デ・ソトは所有権と小規模開発の専門家であるが、彼の指導のもと、国内の整備を行おうとしている。モンゴルは新しいシルクロードの重要な部分を構成している。 中国もロシアも今や中央アジアを自国の裏庭だと見なしてはいない。その反対で、中国とロシア両国は欧米諸国が現在中央アジアで十分な役割を果たしていないと不満を持っている。欧米諸国は19世紀から中央アジアで様々な活動を行ってきたのに、現在、その動きが低調だというのだ。しかし、そんなことはない。シェブロンと中央アジア諸国に派遣されていたアメリカの大使たちはリーダーシップを発揮して、バクー・ティビリシ・ジェイハン・パイプラインを建設した。その当時、ソビエト連邦は崩壊し、コーカサス地方は不安定な状況にあった。 中央アジア地域に展開している欧米諸国の軍隊は、中国が融資をしたいと望んでいる天然資源開発プロジェクトや社会資本整備計画を防衛することに集中すべきだ。特にアフガニスタンに駐留しているNATO軍や中央アジア諸国と協定を結んでいるアメリカ軍はそのようにすべきだ。アフガニスタンにあるアイナク銅鉱山はすでに欧米の軍隊が守備している。アフガニスタンでは前述したとおり、リチウム鉱脈が発見された。中国は携帯電話と電気自動車の電池を製造するためにリチウムを求めている。それならば、NATO軍はこの鉱脈の守備も行うべきだ。 中国は中央アジア地域を貫く道路やパイプラインなどの社会資本の建設を積極的に進めている。ペルシア湾岸地域の自由貿易港であるドバイは、繊維製品など中央アジアの製品をヨーロッパやアメリカに輸出する港として生き残ることができる。欧米諸国が中央アジアからの製品にかける関税を引き下げたら、中央アジアの経済は多様化し、天然資源の輸出だけに頼るようなことはなくなり、資源の呪いを避けることができる。そうなると、中央アジア各国で非エネルギー部門における雇用も増加する。その結果、海に面していない中央アジアで最も必要な2つのことが実現する。それは安定と相互のつながりの深化である。 グレートゲームの遺産とも言うべきものに、この地域での「戦略的三角形」をどのように形作るかという考えがある。アメリカ―中国―インド、アメリカ・インド・アフガニスタン、アメリカ・中国・イランなどの可能性が考えられる。しかし、こうした対立を前提にした考えは中央アジアにとって何の利益ももたらさないどころか、害悪となる。中央アジアが栄えた時代、この地域は全ての方向に開かれていたのだ。長年にわたり、カイバル峠は侵略者と犯罪者にとって中央アジアへの玄関口となってきた。現在、カイバル峠はアフガニスタンに駐留するアメリカ軍の補給路となっている。カイバル峠を通っているのはアメリカ軍に雇われたマフィアたちである。しかし、できるならば、カイバル峠は色とりどりの民間トラックがホーンを鳴らしながら通って欲しいものである。 中央アジアの経済発展と安定は、中国の投資と中東地域の富によってもたらされる。シルクロードは歴史上常に、相互利益のための双方向の通路として機能してきた。デュランドラインと呼ばれるパキスタン・アフガニスタン間の国境線は半世紀にわたり何の利益ももたらさなかった。石油を運ぶ新しいシルクロードは中央アジアに将来、多大な利益をもたらすだろう。 パラグ・カンナ:ニューアメリカ財団上級研究員。著書に『三つの帝国の時代』(講談社刊)がある。 古村治彦です。 今回は、『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』をご紹介します。この本は、全米史上最大の被害額650億ドル(約6兆円)を出したねずみ講事件の物語です。バーナード・マドフという金融詐欺師がどうしてこのような事件を起こすことになったのかが克明に描かれています。 日本でもAIJ事件で約2000億円の年金資金が失われました。このAIJを日本版マドフ事件と呼ぶ向きもあるようです。どうして人はお金のことで騙されるのか、この本の中にヒントや答えがあると訳者である私には考えます。 ========== 「0081」 翻訳&宣伝 『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』(アダム・レボー著、副島隆彦=監訳・解説、古村治彦=翻訳、成甲書房)発売記念。レボーが書いた記事の翻訳をご紹介します。 古村治彦(ふるむらはるひこ)訳 2010年4月15日 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦です。本日は、2010年4月17日に発売となります、『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』発刊記念としまして、著者アダム・レボーが2009年に本書に関連して書いた記事を翻訳し、掲載します。 今回ご紹介するレボーが書いた記事では、マドフの起こした金融詐欺事件について、著書でも書いていますが、ユダヤ人の歴史やユダヤ社会の持つ特徴の面から論じています。今回の事件で、ユダヤという視点から事件を論じ、本にまでしたのはレボーくらいです。 バーナード・マドフが起こした事件は単なる金融詐欺ではありません。そこには色々な要素が絡んでいます。是非、お読みください。 それでは拙訳をお読みください。 ========== マドフはどうしてネズミ講事件を起こしたのか?それは復讐のためである(What made Madoff do it? Revenge) アダム・レボー(Adam LeBor)筆 ザ・ジューイッシュ・クロニクル(ロンドンを拠点とするユダヤ系新聞) 2009年8月20日付 人々はバーナード・マドフのことを「バーナードおじさん(Uncle Bernie)」とか「ユダヤ系米国債(The Jewish T-Bill)」と呼んでいた。マドフへの投資は、最も安全な投資だと考えられていた。マドフは美しい白髪で、ロンドンのサヴィル・ロウの店で仕立てたスーツを着て、上品な身のこなしをしていた。彼は、親しみやすさ、安定、正直さを体中から発していた。彼はウォール街の有名人だった。彼は株式取引で大成功を収め、また投資ビジネスでも有名になっていた。マドフは、ユダヤ系社会で行われる慈善事業には常に絡んでいたし、大富豪たちの良き相談相手だった。彼は、マンハッタンのアッパーイーストサイド、美しいパームビーチカントリークラブ、そしてフランスのプロヴァンスを自分の庭のようにして活動していた。 そんな素晴らしい生活もマドフが「一つの大きな嘘」を告白したことで終焉を迎えた。マドフは、華麗な外見の裏側で、ユダヤ系社会の裏側で連綿と続いてきた、「犯罪の歴史」を受け継いでいたのだ。ユダヤ系社会の犯罪の歴史が始まったのは、マンハッタンのローワーイーストサイドであった。マドフは現代に甦った、アーノルド・ロスステインであり、マイヤー・ランスキーだった。 ロスステインとランスキーは、バットと銃を使った暴力で犯罪帝国ともいうべき、巨大な縄張りを築いた。マドフはコンピューターを使い、史上最高額の被害を出した詐欺を行った。自分たちのことを経験と知識が豊富だと考えていた投資家たちに、毎月、マドフが行ったという株式取引(実際には行われなかった)の詳細な結果が送られてきた。報告書に書かれていた数字はウソだらけだったが、報告書の内容を精査し、疑問を呈する人は一人もいなかった。 マドフの詐欺事件の被害額は、650億ドル(約6兆円)となっている。マドフの詐欺は、21世紀型の詐欺であると言えるだろう。マドフの詐欺は、強欲さ(greed)が高じた騙されやすさ(gullibility)と、投資に参加する素人の数が増えたことによって起きた。しかし、この事件の根本にあるのは、ユダヤ系移民の2つの波とそれによって形成されたユダヤ系アメリカ人の分裂した心理があるのだ。 バーナード・マドフの祖父母たちは、約100年前に東欧からアメリカにやって来た。200万人以上のユダヤ人がアメリカに大挙して移民してきた。その波の中にマドフの祖父母たちがいた。彼らは、戦争、ユダヤ人虐殺(ポグロム、pogroms)から逃れ、黄金の国(the Goldene Medinah)アメリカでの新しい生活を夢見てやって来た。東欧からやって来たユダヤ移民たちは、自分たちよりも早くアメリカに渡り、成功を収めたユダヤ人たちから歓迎されるものと期待していたが、その期待は裏切られた。ドイツからアメリカに渡った初期のユダヤ人(イェッケ)たちは、ニューヨークを国際金融センターに育てた。リーマン家、ウォーバーグ家、シフ家など錚々たる名家となった。彼らは、東欧から押し寄せてくるユダヤ移民たちに恐怖を覚えた。イェッケたちは、東欧からのユダヤ移民によって、反ユダヤ主義(antisemitism)が助長されることを恐れた。東欧からのユダヤ移民たちは訛りの強い英語で、下品なことばかり話していた。彼らはいつも騒がしく、マナーもなっていなかった。彼らは、東欧の寒村シュテッテル(shtetls)からやってきていた。シュテッテルには水道も電気もなかった。 新しくやって来た東欧からのユダヤ移民たちの多くは、ローワーイーストサイドに住み着いた。ローワーイーストサイドで、マドフの祖父母は、シュヴァッツ(shvitz)と呼ばれるトルコ式浴場を経営していた。ローワーイーストサイドは東欧の寒村シュテトルがマンハッタンの裏路地に移植されたような場所であった。薄汚いスラム、低賃金の工場、もぐりの酒場、売春宿などがひしめいていた。ローワーイーストサイドを牛耳っていたのはシェターカー(shtarkers)と呼ばれた、ならず者たちだった。彼らは独立独歩の精神に富んでいた。全てのシェターカーが犯罪者ではなかったが、犯罪者のすべてはシェターカーだった。ローワーイーストサイドの狭い路地やスラムから、ユダヤ系のギャングが生まれた。そんな場所でバーナード・マドフは成長したのだ。彼は子供時代をローワーイーストサイドで過ごした。祖父母が経営しているシュヴァッツに良く遊びに行っていた。マドフはギャングたちの慣習や価値観を吸収していった。 マドフは、「親近感を利用した詐欺(affinity fraud)」と呼ばれる方法で、ユダヤ系社会のリーダーたちを意図的に騙した。親近感を利用した詐欺の場合、ターゲットには、宗教、人種グループが標的となる。あるメンバーがグループ内のメンバー間の信頼感を利用して他のメンバーを騙すのである。マドフは、ユダヤ系コミュニティのネットワーク、例えば、慈善団体、学校、大学、シナゴーグ、カントリークラブのつながりを利用して金を奪ったのである。 彼の詐欺は、ユダヤ教現代正統派(modern Orthodox)に属する五番街シナゴーグ(ニューヨーク)から始まったと言える。ここにはアメリカで最も金持ちや権力者が集まる。シナゴーグから、イェシヴァ大学(Yeshiva University)につながった。マドフは、イェシヴァ大学のビジネススクールの理事長になった。また、マドフは、ラマズ・デイ・スクールやその他いくつもの慈善団体とつながりを持つようになった。 マドフは、ホロコーストの生き残りでノーベル賞受賞者のエリ・ヴィーゼル(Elie Wiesel)さえも騙した。ヴィーゼルは彼自身の資産と、運営する慈善団体の資産のほとんどをマドフに投資して失ってしまった。バーナード・マドフの祖父母が移民船から上陸し、イェッケたちから差別されてから1世紀が経った。1世紀が経っても、マドフはシェターカーであり、イェッケたちに復讐(revenge)をしようとしたのだ。これはもう聖書に出てくる歴史物語のようなものなのだ。 (終わり) 古村治彦です。 今週末に、私の初の単著である『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』(PHP研究所)が発売になります。今週は、私がこれまでに翻訳をいたしました本を皆様にご紹介します。訳書も併せて手に取っていただければ幸いです。 今日は、私が初めて訳出しました『メルトダウン 金融溶解』(トーマス・ウッズ著、副島隆彦監訳、解説、古村治彦訳、ロン・ポール序文、成甲書房、2009年)をご紹介いたします。 ========== 「宣伝0001」 宣伝文 『メルトダウン 金融溶解』(トーマス・ウッズ著、副島隆彦監訳、解説、古村治彦訳、ロン・ポール序文、成甲書房)発売決定! 古村治彦(ふるむらはるひこ)筆 2009年7月25日 ※2009年7月29日に加筆しました ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。今回は論文ではなく、宣伝を掲載いたします。読者の皆様には、ご寛恕くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 今回、宣伝をいたしますのは、副島隆彦(そえじまたかひこ)先生が監訳と解説をなさいました、最新刊『メルトダウン 金融溶解』です。私、古村が翻訳をいたしました。今回の本は、アメリカにおいてベストセラーとなりました、Thomas E. Woods Jr. Meltdown: A Free-Market Look at Why the Stock Market Collapsed, the Economy Tanked, and Government Bailouts Will Make Things Worse(Washington D.C., Regency Publishing, Inc. 2009)を翻訳したものです。著者であるトーマス・ウッズの本の初めての邦語訳です。 今回の翻訳プロジェクトは、4月初旬にスタートしました。まず、古村が約1カ月の期間をかけて、原文180ページ(脚注を含む)を翻訳しました。その後、副島隆彦先生が、内容と翻訳を精査されました。また、副島先生が、前書き(「はじめに」)と後書き(「訳者解説」)を書かれました。後書きには私も文案を提出し、その中からいくつかの部分を認めて採用していただきました。この作業が6月末ごろまで続きました。そして、このたび、完成し、出版の運びとなりました。 『メルトダウン』の大事な部分は、「昨年から世界中を苦しめている金融危機を引き起こしたのは、連邦準備制度(Federal Reserve System)である。中央銀行制度がある限り、これからもバブルが発生し、人々を苦しめる」という主張です。連邦準備制度の行った、低金利政策と通貨供給量の増大政策によって、ドル紙幣がじゃぶじゃぶと刷り散らかされました。その結果、市場にお金が溢れかえり、バブル経済となり、投機が促進されました。 サブプライムローンなど、冷静に考えれば破たんすることは目に見えていました。そのサブプライムローンを組み込んだ金融商品(MBS)や、企業の貸倒引当金を担保とした金融商品(CDS)など、リスクを無視した投機的な商品が世界中に販売されました。それらは大きな利益を上げていました。しかし、バブルが崩壊し、それらが大きな負債となってしまいました。現在、多くの人々が経済不況に苦しみ、金融危機の出口は見えない状況です。 『メルトダウン 金融溶解』で、著者のトーマス・ウッズは、今回の国際金融危機について、オーストリア学派の景気循環理論を使いながら、分かりやすく説明しています。バブル発生のメカニズム、オーストリア学派の理論など、幅広い知識を得ることができます。 また、アメリカで若者の圧倒的支持を受けている、リバータリアン政治家、ロン・ポールが序文を寄せています。日本でロン・ポールの文章が活字となったのは初めてのことだと思います。この点も、『メルトダウン 金融溶解』の持つ素晴らしい点だと思います。 『メルトダウン 金融溶解』をぜひ、手にとってお読みくださるように、よろしくお願い申し上げます。 ========== 『メルトダウン 金融溶解』目次 [はじめに] なぜ、金融はメルトダウンした(溶けて流れた)のか 副島隆彦 [本書を押す] 残念ながら経済危機はまだ続いている ロン・ポール [第一章] 重要なのに無視され続けた問題 金融恐慌の根本原因を探る より大きな救済策、より厳しい規制、より大きな政府 「支出によって経済を回復する」という迷信 アメリカ経済を破壊するのは連邦準備制度だ [第二章] 連邦政府はいかにして住宅バブルを生み出したか 金融恐慌の真犯人を見つけた 二〇〇六年、すでに大変な状況が到来していた 恐慌の犯人その1=ファニーメイとフレディマック 恐慌の犯人その2=地域再投資法と貸付時の積極的差別是正措置 恐慌の犯人その3=政府の誘導による投機 恐慌の犯人その4=住宅取得優遇税制 恐慌の犯人その5=連邦準備制度と意図的な低金利 「より広範な規制」が最善策なのだろうか 恐慌の犯人その6=「大きすぎて潰せない」という迷信 果たしてどんな未来が待ち受けているのか [第三章] ウォール街への大規模救済策 ポールソン財務長官とバーナンキFRB議長の大罪 救済策はこうして開始された 「大きすぎて潰せない」とは「生かしておくには大きすぎる」 「不良債権救済プログラム」は政府による金融資産の強制収容 「空売りは反愛国的行為だ」と叫ぶ政府の意図 モラル・ハザードを助長する救済策 問題は「規制緩和」でも「規制強化」でもない 金融恐慌下でも資金調達は機能していた 「とりあえず何かやれ!」の大合唱 銀行の国有化でチャベス大統領よりも左傾化するアメリカ 国民からの略奪物、それが救済策の適用 国債や借入金の支払期限が来た時に何かが起きる [第四章] 政府が原因となるバブル景気とその崩壊のサイクル 真に理解すべきは「景気循環=ビジネス・サイクル」 経営者たちに襲いかかる「過ちの束」 「金利とは、お金につく値段である」 連邦準備制度が介入してもたらされる「実体なき経済」 「好景気は永遠に続く」というケインズの幻想 「景気循環理論」を改めておさらいする 持ちこたえれば持ちこたえるほど、傷は大きく深くなる 公共事業による景気刺激という愚行 ITバブルの崩壊は何よりの実例である 「二〇年不況」を生んだ日本のバブル崩壊を考える オーストリア学派の景気循環理論が意味するもの [第五章] 大恐慌についての神話 大恐慌を長引かせたのはニューディール政策だった 連邦準備制度創設以前のバブル景気とバブル崩壊 忘れ去られてしまった一九二〇年の恐慌 大恐慌の襲来を予測したオーストリア学派 フーバーは自由放任主義者ではなかった―それこそが問題だった ルーズベルトはこうして大恐慌を長引かせた 「戦争が好景気をもたらす」という陳腐な神話 「大恐慌」と「日本の二〇年不況」を教訓とする [第六章] 通貨という正体不明の生き物について 通貨にまつわる神話を覆す 通貨はどのように生まれるのか ただの紙切れが紙幣となるカラクリ なぜ金と銀が通貨となるのか そして連邦準備制度が誕生した インフレーションとは何か?なぜインフレーションは悪なのか? 物価が上昇する本当の原因とは デフレーションは「結果」であって「原因ではない」 人工的に通貨を作り出すことの問題点 金の使用に反対する主張、その間違いの数々 ・金と銀は柔軟性が十分ではない。もっと柔軟性に富んだ通貨が必要だ ・貴金属は大きくてかさばり、使いにくい ・金本位制はコストがかかり過ぎる。紙幣は製造するのにコストがかからない ・現代経済の取引すべてをまかなうには金と銀の量が足りない ・金の供給量の増加は、経済活動の活発化についていけない [第七章] 今なすべきことは何か? 「アメリカを愛するなら消費せよ」という戯言 「GDP=国内総生産」は虚妄のデータである ケインズがまるで誤解していた「セーの法則」 生産的支出と消費的支出、これだけの相違点 私たちが緊急になすべきことを列記する ・大企業や銀行を倒産させる ・ファニーメイとフレディマックを廃止する ・救済策を止め、政府支出を削減する ・政府による通貨の操作を止める ・連邦準備制度についてきちんと議論する ・特別な貸出し窓口を閉鎖する ・通貨の独占を止める オーストリア学派は私たちに警告してくれていたのに [あとがき] さらに読み進めたい読者のために [脚注一覧] [訳者解説] 副島隆彦/古村治彦 古村治彦です。 2012年5月2日に、PHP研究所に伺い、『アメリカ政治の秘密』の見本本をいただきました。見本本とは、私の理解では、本が全部刷り上がる少し前に、20冊ほど本として刷り上がったものです。 ![]() いよいよ来週、全国の書店に向けて、本が発送されるそうです。発送はトラックで行われるそうで、東京から距離が離れている場所だと到着が数日、遅れるということです。ですから、発売も遅れるそうです。私は鹿児島で育ちましたが、ジャンプやサンデーのような少年漫画誌や週刊文春や週刊新潮などの週刊誌などは東京から少し遅れて発売されていたことを思い出します。 この本の初めての読者であり、製作者でもある編集者の方も「面白いよ」と言ってくださいました。この言葉を多くの方々に言っていただける自信もありますが、同時に不安もあります。 発売が迫りましたら、またお知らせをいたします。最近、このブログが宣伝ばかりになって申し訳ないのですが、現在、ある本の翻訳に取り掛かっております。そのため、なかなか時間が取れないのですが、現在の政治状況について言いたいことはあります。ひと段落したら、ブログで文章を書いていきたいと思います。 宜しくお願い申し上げます。 私、古村治彦(ふるむらはるひこ)の初めての単著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』が2012年5月第2週にPHP研究所から発売になります。 ![]() 『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』 どうぞよろしくお願い申し上げます。 古村治彦です。 2012年3月24日に開催されました、第26回副島隆彦を囲む会(SKK)主催定例会の内容を収めたDVDが頒布開始となります。お申し込みは以下のアドレスからお願いいたします。 http://snsi.jp/shops ※ページの下の方にDVDのコーナーがあります。 ![]() ●「アラブの春についての5つの根拠のない噂話(Five myths about the Arab Spring)」
2012年1月13日付 ワシントン・ポスト紙 ファウアド・アジャミ筆 http://www.washingtonpost.com/opinions/five-myths-about-the-arab-spring/2011/12/21/gIQA32TVuP_story.html 一年前に「アラブの春(Arab Spring)」が始まった時、西洋社会は大きなショックを受けた。アラブの人々は、表面上は、自由を望ます、暴政に進んで身をゆだねているように西洋の人々には見えたからだ。しかし、ひとたび、人々の力が解放されると、動乱は際限なく広がり、アラブ諸国の街頭では大混乱が起こり、政治勢力は人々に受け入れられやすい公約を発表した。アラブ諸国の反体制運動は、アラブの春についての自称専門家や「常識」を数多く生み出した。その中には誤解や誤りがある。これから、アラブの春を発生させ、拡大させた原因を精査していきたい。 1.2009年のオバマ大統領のカイロ演説が人々を触発し、アラブの春が発生した アラブの春については、真実からかけ離れた話が出回っている(Nothing could be further from the truth)。北アフリカ諸国で反体制・反政府運動が始まった時、アラブの人々やイスラム教徒たちがオバマ大統領の誕生の際に抱いた好意は、きれいさっぱりと消えていた。2009年6月、オバマ大統領はカイロを訪問し。アラブ・イスラム世界に対してアメリカは新しいアプローチの仕方を取ると演説の中で約束した。しかし、アラブ世界やイラン国内で長年苦しい戦いを続けてきたリベラル派の人々は、オバマ大統領は口だけだと看破していた。オバマ大統領はカイロ演説の中で次のように語った。「私は、アメリカ合衆国とイスラム教徒の人々との関係を全く新しくすることを約束する。私たちは共通の利益と相互尊敬を基礎とした世界に共に生きている」と。しかし、アラブの人々は、アメリカの新リーダーが、イスラム教徒との関係について現状維持できればよいと楽観的に考えていると見ぬいていた。 オバマ大統領は、シリアとイランといった国々とアメリカとの関係を修復しようとした。ジョージ・W・ブッシュ(子)前政権の「自由のための外交」とは決別しようとした。2009年4月、ヒラリー・ロドハム・クリントン国務長官は、「イデオロギーは全く時代遅れのものとなった」と述べ、ブッシュ前政権の攻撃的な外交政策は過去の遺物となったことを宣言した。2009年夏、イラン国内各地で大統領選挙に端を発した暴動が発生した。この時、オバマ政権の自制的な外交姿勢は姿を消した。 オバマ大統領の父親はケニア人であり、幼少期をインドネシアで過ごした。オバマはコスモポリタン的である。それだからこそ、オバマ大統領はアメリカ国内の諸問題の解決に集中するに違いないとアラブの人々は考えていた。チュニジアとエジプトで反体制運動に参加した人々は、アメリカが助けに来てくれるとは考えていなかった。リビアの反体制運動をアメリカは支援したが、それは遅すぎるものであり、リビアの反体制運動支援を推進したのは、アメリカ政府ではなく、フランス政府とイギリス政府だった。 2.アラブの春はフェイスブックとツイッターを使った革命だった アラブの春に参加した若者たちは、フェイスブックとツイッターを使って、独裁政府に捕捉されることなしにお互いに連絡を取り合うことができた。CNNのウォルフ・ブリッツアー記者が、グーグルの若き幹部であるワエル・ゴニムに「ホスニ・ムバラク大統領が権力を失った後、エジプトはどうなりますか」と質問した。ゴニムは、「その質問はフェイスブックにしてください」と答えた。ゴニムはカイロのタヒール広場で起こった反政府運動を代表する顔だった。しかし、エジプトの独裁者を打ち倒したのは普通の人々だった。 アラブの春は伝統的な手法によって盛り上がった。シリア各地の反政府運動が盛り上がっている都市では、金曜礼拝を終えた人々が集まって集会を開いている。シリア国内の状況は、暴力の使用を躊躇しない政権と政権に挑戦する勇気ある人々の意地比べになっている。ダルアー、ホムス、ハマといった都市部の若者たちは権威に対して恐怖を持つ文化を乗り越え、独裁政治に挑戦している。 モハメド・ブアジジはチュニジアの地方都市で行商をしていた。この若者が2010年12月に焼身自殺をしたことで、チュニジア国内で反政府運動が発生した。ブアジジはフェイスブックを使っていなかった。彼にあったのは怒りと絶望だった。私たちは技術の進歩にある程度の歯止めをかけるべきかもしれない。アラブ世界におけるインターネットの浸透度はそこまで広くも深くもない。 3.オバマ政権はホスニ・ムバラクをスケープゴートにした ムバラク大統領が失脚したのは自業自得である。アメリカ政府は、ムバラクが嵐を乗り切ることができると考えていた。エジプト国民が団結して独裁者を追い落とした時、オバマ政権は混乱し、ムバラク大統領に対して、同情を示した。エジプト人の大多数は、このような頓珍漢なオバマ大統領に対して軽蔑の念しかもっていなかった。ムバラクは、アメリカとアラブ世界とをつなぐ重要な柱のような存在だった。ムバラクが失脚する数週間前、クリントン国務長官は「エジプトの政権は安定している」と発言していたことを思い出していただきたい。 アメリカは何にでも首を突っ込むがそれは止めた方が良い。アメリカから遠く離れた国々には、アメリカが利用することも、排除することもできない政治勢力が必ず存在する。ムバラクは約30年間にわたり、豊かなエジプトを支配することができた。独裁者ムバラクは、エジプト国民を弾圧し、国民の利益など考えることはなかった。ムバラクは法律をことごとく無視して政権の座に座り、自分の後継者を決めることもしなかった。ムバラクは彼の能力が欠如した息子に権力の座を譲りたいと考えていたようであるが。ムバラクは軍部出身である。エジプトの軍部は、ムバラクが世襲を行おうとしていたことを恥辱だと捉えていた。エジプトでの反政府運動・反体制運動に関して言うと、ホワイトハウスと国務省の政策担当者たちは、ただの観客に過ぎなかった。 4.イラクのサダム・フセインがアメリカ軍によって追い落とされたことがアラブの春の発生を促した 私はイラク戦争を支持してきたので、イラク戦争とアラブの春に関係があったらどんなに良いことだろうか、と考える。しかし、イラクはアラブの春とは何の関係も持たない。イラク戦争を支持した保守派はそのように考えたがるが、実際はそうではない。 アラブの春が始まった2010年末、イラクは既にアラブ世界の関心の的ではなくなっていた。当時、イラクではテロ事件が頻発し、世俗主義が広がっていた。アラブ人の中で、イラクのマリキ首相がイラクに正しい政治文化を導入するだけの力を持っているなどと考える人はほとんどいなかった。イラクの場合、2つの問題があった。一つは、イラクの独裁者サダム・フセインはイラク国内の反体制運動ではなく、アメリカの力で追い落とされたということである。そしてイラクの新しい秩序は、シーア派に力を持たせる結果ということになった。しかし、スンニ派のイラクの政治的な変化にあまり影響を受けていない。スンニ派はアメリカの対イラク戦争と占領に反対し続け、シーア派が固めた新しいイラク政府に従わない状況にある。 タヒール広場でのエジプトの人々の熱狂は他国の反体制運動に大きな影響を与えた・エジプトはアラブ世界の政治と文化の流れを作る国である。イラクはエジプトの作る流れに乗るだけの国でしかない。アラブの春とイラクを結びつけて考えるアラブ人はほぼいないだろう。 5.アラブの春で盛り上がった反体制運動は、アラブ諸国とイスラエルとの間の和平プロセスの将来に大きなダメージを与えた。 確かに、一部の暴徒がムバラクの失脚後、カイロのイスラエル大使館に押し掛けた。しかし、アラブ諸国とイスラエルの相互承認は、アラブ諸国が独裁者たちによって支配されている間には全く進まなかった。アメリカがムバラク政権を支持し保護するための前提条件として、イスラエルとの平和条約があったはずだ。しかし、ムバラク大統領は、イスラエルとはイスラエルと距離を取り続けた。彼が大統領の地位にあった30年間で、イスラエルを訪問したのはただの一度である。ムバラクは、1995年に暗殺されたイツハク・ラビンイスラエル首相の葬儀に参列した。彼のイスラエル訪問はその時だけだ。ムバラク大統領は反近代主義、反米主義、反ユダヤ主義をうまくミックスして、自分の政権の維持に利用した。1979年にイスラエルとエジプトは、アメリカのキャンプ・デービッドで平和条約を締結した。この条約は今でも維持されているが、イスラエルとエジプトとの間は長い間、冷たい平和が保たれてはいたが、交流はなかった。 1973年の十月戦争(第四次中東戦争)以降、シリアはイスラエルと実質的な和平状態に入っている。この「和平」を称賛する人は誰もいない。シリア・イスラエル国境では紛争は起きていないが、シリアは、レバノン・イスラエル国境からイスラエルに対して攻撃を仕掛けてきた。イスラエルのエフード・バラク防衛相は最近、「アサド政権の崩壊は中東地域全体にとって福音である」と発言している。この発言はイスラエルがアサド政権の崩壊を待っているということを示している。 アラブの反体制運動・民主化運動の指導者たちは、イスラエルと和平を主張している訳ではない。しかし、反体制運動・民主化運動の指導者たちは、独裁者たちが政治や経済の失敗を取り繕うためにイスラエルとの争いを安易に利用したということをよく分かっている。シリアの人々がアサド大統領の暴政よりもイスラエルを恐れている、と信じている人はどれくらいいるだろうか? ファウアド・アジャミ(Fouad Ajami):スタンフォード大学フーバー研究所上級研究員。フーバー研究所「イスラム主義と国際秩序」研究グループ共同代表。 (終わり) ●「論説記事:シリア国内での大量虐殺を止めるには」
2012年2月23日付 ニューヨーク・タイムズ紙 アン・マリー・スローター筆 http://www.nytimes.com/2012/02/24/opinion/how-to-halt-the-butchery-in-syria.html シリア国内の内戦状態は長期化し、多数の死傷者を出す事態になっている。また、シリア国内は不安定さを増している。こうした状況を改善するためには、外国によるシリアへの軍事介入しかない。こうした介入に反対する人々は、お経のように「シリアはリビアとは違う」ということを繰り返し述べている。しかし実際には、シリアはリビアよりも戦略的にずっと重要な場所に位置している。そして内戦状態が長期化すればするほど、私たち(アメリカ)の国益を脅かすことになる。シリア国内への「外国」の軍事介入は、シリア国内の血塗られた、長期にわたる内戦を止めるための最高の希望となることは間違いない。介入に反対する人々が繰り返し唱えるお経のような文句は、「シリアはリビアではない」というものだ。実際のことを言うと、シリアはアメリカの戦略から見ると、リビアよりも重要な位置にある。そうしたシリアで内戦が長引くと、アメリカの国益にも悪影響を与える。アメリカはシリアの近隣諸国に援助を与え、シリア国内で続いている人々の殺害を止めるようにすべきだ。 反体制派に武器を与えることは、最も簡単な選択肢である。しかし、この選択肢は、世界が最も恐れる結果をもたらす可能性が高い。レバノン、トルコ、イラク、ヨルダンの代理戦争になり、それぞれの勢力によってシリアが分裂してしまうことが考えられる。また、アルカイーダやその他のテロ組織がシリア国内で勢力を伸ばすことも考えられる。そうなると、テロ組織は化学兵器や生物兵器をシリア国内で入手することが可能となる。 選択肢はある。約70カ国の代表が本日、チュニスに集まり、会議を開いた。この会議は「シリアの友人たち(Friends of Syria)」と呼ばれている。この会議では、シリア国内に「殺害禁止区域」を設定することをシリアに求めることが決まった。この区域内では信条、人種、政治的立場に関係なく、全てのシリア国民が保護される。政府軍からの離脱者で構成されている自由シリア軍はその数を増やしている。自由シリア軍が主体になって、トルコ、レバノン、ヨルダンそれぞれとの国境の近くに殺害禁止区域を設定すればよい。こうした区域はそれぞれとの国境にできるだけ近く設定すべきだ。そうすれば、赤十字やその他の組織が人道的な支援として、食料、水、医薬品を運び入れることができるし、負傷者を国外に脱出させることもできる。殺害禁止区域は既に立ち上がっている文民委員会が管理すればよい。 このような殺害禁止区域を設定するには、反政府側の兵士たちに対戦車、対スナイパー、対飛行機用の武器を与える必要がある。こうした武器は、トルコ、カタール、サウジアラビア、ヨルダンから供与したらよい。カタール、トルコ、そして可能ならばイギリスとフランスの特殊部隊がシリア国内に入り、戦術的、戦略的なアドバイスを自由シリア軍に与えるというのも良いだろう。外国の特殊部隊をシリア国内に送るのは兵站の面からも、政治的な面からも可能である。いや、既に実行されているかもしれない。 特殊部隊はシリア政府軍の動きに関する情報と、反政府軍が人口密集地帯を攻撃にさらされないようにし、自分たちもスナイパーからの狙撃を受けないようにするための通信手段をうまく管理することができる。政府軍の将兵が的確な攻撃を受け、捕虜となり、もしくは脱走しても報復されないということになれば、殺害禁止区域の重要性は増し、政府軍側も殺害禁止区域を守り、その区域を拡大することに注意を向けるようになる。 次の段階としては、戦車と飛行機の動きに関する情報が必要になる。そして、シリア政府軍の重火器と通信手段の情報を得ることも必要だ。その目的は、各都市の攻撃を担当している政府軍の各部隊を弱体化させ、孤立させることだ。そうすれば反政府軍は政府軍の舞台と直接交渉し、自分たちの側に寝返らせることができ、反政府軍のコントロールする地域を拡大することができる。 シリア国内、国外でこうした活動を行うための援助を与える際の重要な条件は、援助が防御にのみ使われるということだ。シリア政府軍の攻撃を止めさせる、もしくは殺害禁止区域を設定してもそれを敢えて攻撃しようとするシリア政府軍を排除する、これらが防御的であるということだ。外国への介入を限定的に行うということは常に難しいことである。しかし、今回の場合、自由シリア軍が攻撃的になった場合、国際社会からの援助は停止しなければならない。殺害禁止区域内で最も尊重されなければならないのは、人々の安全と人道的支援である。報復、復讐のための攻撃は絶対に許されない。 シリアのアサド大統領は、政府が援助しているギャングに対する依存を強めている。また、各都市を重火器で防衛している。しかし、軍隊を数多く駐屯させている訳ではない。それは、アサド大統領が政府軍の将兵たちの忠誠心に疑いを持っているからだ。彼らにシリア国民に銃を突きつけ発砲させることができるか不安を持っているのだ。殺害禁止区域が設定された場合、政府軍の兵士がこの区域に入ったら自分の元同僚たちと出会うことになる。政府軍の兵士たちをこのような状況に置けば、そして脱走する機会を与えれば、シリア政府軍の将兵は進んでシリア自由軍に参加することだろう。その数は、推定ではあるが、30万はくだらないだろう。 トルコとアラブ連盟はまたシリア国内の反体制派をより積極的に支援すべきだ。無人ヘリコプターを使っての物資と武器の運搬はその一例である。無人ヘリコプターはアメリカ軍がアフガニスタンで実際に使用した。もしくは、シリア政府軍の対空防御装置と臼砲を攻撃し、殺害禁止区域を守ることも必要だ。 トルコは自国の軍隊をシリアに派遣することに懐疑的である。トルコが軍隊を派遣したら、アサド大統領は、トルコに対して宣戦布告をし、報復をするだろう。しかし、トルコはシリア国内の内戦状態から少なからず悪影響を受けているのだから、介入して、問題を解決すべきだ。また、アラブ連盟所属の各国も武器や物資をトルコに貸与して問題解決に貢献すべきだ。 リビア国内での場合と同様、国際社会は、アサド大統領が自国民に対して行っている戦争行為から直接的な影響を受けてしまう近隣諸国からの承認、もしくは招聘がない限り、いかなる活動をも行うべきではない。従って、国際社会が動くかどうかは、アラブ連盟とトルコがどのような行動計画を採用するかにかかっている。ロシアと中国が、シリア国内の大量虐殺を許すような拒否権の発動ではなく、棄権をしてくれるなら、アラブ連盟は国連安全保障理事会で、介入容認の決議を通すことができる。それがだめなら、トルコとアラブ連盟は、自分たちの権威に基づいて介入ができる。もしくは国連安保理の13の理事国と国連総会の137カ国によるアサド大統領を非難する決議に基づいて行動すればよい。 シリア国内の反政府運動・民主化運動に参加する人々の力は過去11カ月で確実に強くなった。彼らは、弾丸に対しては抗議のシュプレッヒコール、ジェスチャー、そして肉体で対応している。国際社会は、シリア国内の状況を非暴力の方へ促し、現在死のゾーンとなっている土地を平和のゾーンに変えるように努力すべきだ。シリア国民はこうしたことを達成する能力を持っている。国際社会は、達成するための道具をシリア国民に与えるべきである。 アン・マリー・スローター:プリンストン大学教授(政治学・国際関係論)。2009年から2011年まで、米国務省政策企画局長を務めた。 (終わり) ![]() 古村治彦です。 本日は、私が訳出しました『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』の著者であるパラグ・カンナ(Parag Khanna)の最新のインタビュー記事を皆様にご紹介いたします。彼の「21世紀は都市の時代である」という主張は、『ネクスト・ルネサンス』でも紹介されています。面白いのは、インタビューの後半部です。富裕層の資金について、スイスとシンガポールは連携すべきだという「面白い」主張をしています。 それではお読みください。 ========== ●都市群国家(The Cities-State) Schweizer Monat | April 2012 Interview with Florian Rittmeyer http://www.paragkhanna.com/?p=1767 21世紀の世界を動かすのは、中国でも、インドでも、ブラジルでもない。都市だ。これは、パラグ・カンナによる予言である。カンナは、スイスを都市が寄り集まった国家だと考えている。そして、カンナは、スイスはシンガポールと連携すべきだと提案している。 インタビュアー:カンナさん、都市国家という考えは、ここ数年、スイス国内でよく議論されている話題です。この都市国家という考えについてどのようなご意見をお持ちですか? カンナ:都市国家という考えはスイスだけで流行しているのはないのですよ。私は先ごろ、ロンドンである夕食会のホストを務めました。この夕食会には、イギリスの政治家、ジャーナリストなどが集まって、ロンドンは、ヴェニス、フィレンツェ、ハンザ同盟のような中世の都市国家のような位置を占めることができるかということを議論しました。参加者の中にはロンドンは、イギリスから離脱すべきだという意見を表明する人たちもいました。私は、都市国家という考えが再び脚光を浴びることに賛成です。このアイディアは素晴らしいですし、議論をすることも素晴らしいことです。もちろん、実効性が大きな問題になってきます。ロンドンはイギリスから離脱すべきだという考えは、滑稽です。ロンドンはイギリスの一部であることで利益を得ていますし、イギリスにロンドンがあることでイギリスには利益になってもいます。同じことがチューリッヒやジュネーブにも言えます。 インタビュアー:スイス全体が大きな都市国家であるという考えについてどのようにお考えになりますか? カンナ:都市国家という存在は、計画性を持って作られた存在です。スイスは何世紀もの時間をかけて発展してきました。都市国家をConfoederatio Helvetica(ラテン語の「スイス」)にそのまま当てはめることはできません。私はスイスが都市国家とは申しません。それよりは、複数の都市が寄り集まったもの、異なった機能を持つ諸都市の集合と言えましょう。都市国家(city-state)と言うよりは、都市群国家(cities-state)と言った方が良いかと思います。 インタビュアー:えっ、都市群国家ですか? カンナ:これは私なりの表現です。しかし、チューリッヒやベルンにいるスイスの一流ブランドの幹部の皆さんにインスピレーションを与える表現だと思いますよ。彼らは、スイスという言葉を使うのにうんざりしていますからね。重要なのは、スイス国内にある様々なハブ(都市)が寄り集まった時に発揮する強さを強調することです。スイスは国土の狭い国ですが、多くの魅力を発信しています。グシュタードとサンモリッツは夏でも冬でも楽しめる場所です。チューリッヒは国際的な金融センターです。バーゼルは科学産業の中心地、ジュネーブは、金融と外交の中心地です。それぞれの場所は、スイスという全体に貢献できる強さを持っています。このような都市群国家としてのスイスは、現在の世界に生きるコスモポリタンたちにとって無限の魅力を与えているのです。 インタビュアー:カンナさん、あなたは、コスモポリタン的なジュネーブ、ダイナミックなチューリッヒ、豪華なダボス(毎年世界経済フォーラムの総会が開かれる)といった場所に大変お詳しいと思います。しかし、もしご自身がこのスイスでほとんどの時間を過ごすことになったら、どのような生活になると想像されますか? カンナ:私が自分の活動のベースをロンドン、ニューヨーク、そしてシンガポール以外に置くというのは今のところ考えられません。人間というのは時間と移動の利便性について考えるもので、自分の仕事がしやすい場所にベースを置くものですね。ですから、その場所のインフラの質というものが大変重要になってきます。田舎でのゆったりした生活と都市部での現代的な仕事の機会がうまく調和していることが望ましいですよね。その点で、スイスは最高の場所です!スイスの美しさ、それは、チューリッヒに住みながら、そこから30分もかからない湖畔で静寂を楽しむことができることです。ジュネーブに住めば、そこから1時間もかからないでシャモニーに行くことができます。スイスに住めば、1日で都市での生活と田舎での生活を楽しむことができますね。 インタビュアー:スイスに来る人々は、チューリッヒに飛行機で行き、近未来のような地下鉄で中心部に向かうことができます。一方で、カウベルとヨーデルを楽しむこともできます。最先端の技術とスイスの伝統との間には、伝統と現代性との間の矛盾があると言えるのではないでしょうか?そして、この2つは相争っていると言えませんか? カンナ:牛、チーズ、チョコレート、スキー、銀行の顧客の秘密保持、これらは全て、スイスの素晴らしい点ですね。伝統と近代性との間の矛盾と仰いましたが、都市の中に田舎が存在するという矛盾は、人々が進んで作り出しているものなのですよ。ロンドン市長のボリス・ジョンソンは、都市の中に村のイメージを保つことに成功しています。私はロンドンに住んでいますが、ジョンソン市長が言いたいことをよく分かっています。彼は、「ロンドンは多くの村落の集合体だ。大都市ではあるが、村落のような暮らしやすい場所にしたい」と言っているのです。私は自分の娘を小学校まで送るのですが、学校の校庭には羊と鶏がいます。私が住んでいるのはロンドンの中心部です。これは大変素晴らしいことだと思います。現在は都市化が進み、人々は近所の人たちの名前も知らない時代いなりました。人々は自分の住む場所に愛着が持てなくなっています。その中で、都市の中に田舎を作り出すのは素晴らしいことです。 インタビュアー:ビジネスや学術の世界で才能を発揮する人々は世界規模で活躍しています。今日はある場所にいるが、明日には別の場所に行っている、そんな感じです。スイスがそのような才能ある人々を惹きつけ、長く居住してもらうにはどうしたらよいと思われますか。 カンナ:才能を持つ人々は移動することを嫌いません。フットワークが軽いのです。しかし、スイスという場所は、ここに長くとどまりたいと思わせてくれる場所の一つです。イデオロギー的には中庸、国連の機関があり、チューリッヒとジュネーブという金融センターもあります。地理的にはヨーロッパの中心部にあるというのも利点になります。スイスは、シンガポールのように、専門能力を持つ人々が集まって長期にわたって腰を据える場所になります。その際に重要なのは、居住条件の形式がどうなっているかということですね。現在、スイスに帰化するのは大変難しいです。それでも居住許可Cを持っている人はより少ない手間で帰化できます。スイス国内でこれから労働力がますます必要となる際には、現在はそうではないようですが、現在の居住条件を緩和しなくてはいけませんね。もしスイスが望むのならば、より多くのアジアの大企業がスイスを経済活動のハブとして利用したいと考えるでしょう。もちろん、そのためにはスイス国内で議論をして、アジアの大企業を受け入れるかどうか決めねばなりませんが。中国の大企業がヨーロッパ地域担当オフィスをフランクフルト、パリ、ロンドンに設置しているのは好例と言えるでしょう。 インタビュアー:あなたは常々、21世紀の世界を動かすのは中国でも、インドでも、ブラジルでもなく、もちろんアメリカでもなく、都市群だと主張されていますね。このような主張をするに至った経緯を教えてください。 カンナ:重要な点は、21世紀の世界は、覇権国が一極支配する世界にはならないということです。中国、アメリカ、ブラジル、インド、どの国も一極支配することはできないでしょう。同時に、いくつかの大国が世界規模で調和を保つという時代でもないでしょう。21世紀は分極化されたシステムの時代でしょう。こうした世界では、中世のように、都市が支配的な役割を果たすでしょう。 インタビュアー:いろいろなことを考えると、誰も中世時代には戻りたくないと思うでしょうね。 カンナ:確かにそうかもしれません。しかし、私はハンザ同盟のようなネットワークのモデルからインスピレーションを得たのです。中世の都市同盟から多くのことを学ぶことができるのですよ。その当時も現在と同じで、新しい技術とビジネスチャンスに機敏に反応するネットワークが多くの人々に利益を与えるのです。私たちがある国が隆盛してきたという話をする際に、どうしても忘れてしまうことがあります。それは、ある国の隆盛がその国の大都市の経済活動の拡大によってもたらされるということです。ある国の力の基となるのは何でしょうか。都市です。それではある国の成長と技術革新をもたらすのは何でしょうか。都市間のネットワークです。 インタビュアー:中国の「大きさこそが力の源泉だ」という考えとスイスの「小さいことは素晴らしい」という考えとの間に根本的に相いれない部分があるとお考えですか? カンナ:私は初めての著作『「三つの帝国」の時代』で帝国について書きました。その中で「巨大な存在が復活している」ということを主張しています。しかし、小さいことと大きなこととの間に矛盾はないのです。ある部分では小さい存在が活躍します。別の部分では大きい存在が活躍します。アジアには、インドと中国という世界で最大、そして第二位の人口を抱える国々があります。同時に小さいながらかなりの成功を収めている国もあります。それはシンガポールです。異なったモデルが同じ地域で共存しているのです。従って、大きいことと小さいことの間に矛盾は存在しないと私は考えるのです。スイスは、労力の移動、環境保全、財政政策、その他の分野で、巨大な国家に対して教訓を与えることができます。 インタビュアー:例えば、ヨーロッパ各国で債務上限を定める動きが続いています。債務上限という考えは、スイスの各州で生まれ、それがスイス国に拡大し、それがドイツに伝えられ、全ヨーロッパに広まりました。 カンナ:その通りです。ヨーロッパの優れているところは、多様性と分極化した多くの中心部があることで、国境を越えて学ぶことができるところにあるのです。ここ数年、西ヨーロッパは、スカンジナビア諸国やバルト海沿岸諸国のダイナミズムから何を学ぶことができるかについて様々な議論がなされてきました。 インタビュアー:そして、金融危機がそれをさらに促しています。スイスは金融危機後の世界でどのように動けばよいのでしょうか。 カンナ:金融危機によってスイス国内の金融センターも大きなプレッシャーを受けています。スイスは伝統的に中立を守ってきました。ですから、どこかの国や組織と同盟や協力体制を結ぶ際にはそれらは曖昧な形にされてきました。しかし、スイスは、特定の分野においては、必要に応じて戦略的パートナーシップを結ぶべきだと思います。多くの人々は現在、富裕層向けの銀行ビジネスは地理的に分散すべきだと考えています。スイスはこの分散化から利益を得ることができます。具体的に言えば、これは一つの例とお考えいただきたいのですが、スイスはシンガポールと直接的なパートナーシップを結ぶと良いと考えます。ヨーロッパとアジアには富裕な人々が多数います。そこで、スイスとシンガポールがお互いに張り合って利益を失うべきではありません。張り合う代わりに、スイスが、ヨーロッパとアジアの間のお金の動きを促進するようにすれば良いのです。西洋世界は、内向きで、保護主義的な方向に進んでいます。スイスはEUとインドとの間で自由貿易協定(FTA)が締結されるまで待っている必要はないのです。そうではなくて、EUの動きとは関係なく、アジアとヨーロッパとの間のお金の動きを促進するように動けばよいのです。 パラグ・カンナ:ニューアメリカ財団上級研究員。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)にて博士号(国際関係論)取得。著書に『「三つの帝国」の時代』『ネクスト・ルネサンス』(共に講談社)がある。 (終わり)
古村治彦です。
本日は、『イスラエル・ロビー』の著者である、ジョン・ミアシャイマーとスティーヴン・ウォルトの最近の言説をご紹介します。ミアシャイマーとウォルトは、最近、取りざたされるようになった、イスラエルによるイランへの空爆、アメリカによるイランへの攻撃について、「アメリカは、イスラエルとは違う戦略を取るべきだ」という言説を展開しています。彼らは学者であり、現実の政治には何の力も持ちえませんが、アメリカ国民の一部の考えを代表していると思います。 ========== ●「オバマ大統領は、イラン問題に関して、イスラエルとは反対の立場をとるべきだ(Mr Obama must take a stand against Israel over Iran)」 フィナンシャル・タイムズ紙(Financial Times) 2012年3月4日付 http://www.ft.com/intl/cms/s/0/38c9382a-65f8-11e1-979e-00144feabdc0.html#axzz1onV9LIlX ジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)・スティーヴン・ウォルト(Stephen Walt)筆 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、本日、ホワイトハウスに、最も好かれていない外国の指導者を迎える。イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)は、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)の年次大会に出席するために渡米し、ホワイトハウスも訪問することになっている。オバマ、ネタニヤフ両首脳は、アメリカ国内の最も熱心なイスラエル支持者たちの前で、アピールする機会を得ることになる。私たちは、これから、アメリカ、イスラエル両国の「共通の利益」「揺るぎない絆」「共通の価値観」といった言葉をいやと言うほど聞くことになるだろう。 これらの言い回しは良くて人々の誤解を招くだけのことであり、単純に間違っている。全く共通する利益を持つ国々は存在しない。そして、イスラエルとアメリカは、二つの重要な問題を抱えている。その二つとはイランと、イスラエル・パレスチナ紛争である。オバマ大統領に対して、イスラエルは、イラン攻撃を行うように圧力をかけている。オバマ大統領は拒絶している。一方で、ネタニヤフ首相がパレスチナ国家の承認を拒否し、イスラエルを危険にさらしているということを思い出させている。 イランについて、ネタニヤフ首相は、「彼らは核兵器を持ちたがっている。そして、彼らの目的はイスラエルの存在自体に脅威を与えることである」と述べている。ネタニヤフ首相は、外交交渉でイランの核開発を阻止できるとは考えておらず、アメリカがイランの核開発関連施設を破壊してくれることを望んでいる。もしオバマ大統領がイランへの攻撃を拒否したら、ネタニヤフ首相は、イスラエル国防軍に対してイラン攻撃のゴーサインを出すだろう。 オバマ大統領と彼の補佐官や側近たち(この中には軍事関係者も含まれている)は、事態を全く別の視点で見ている。彼らは、イランが核兵器の保有を望んでおらず、イランが核兵器を保有しても、イスラエルの存在を脅かすようなことはないと見ている。イスラエルは多くの核兵器を保有しており、イランから攻撃を受けたら、それらを使って、イランをかんぷなきまでに叩くことが可能である。アメリカの情報当局は、イラン政府が核兵器を実際に製造するかどうかまだ決定していないという確かな情報を得ている。アメリカ政府首脳は、イスラエルによるイラン攻撃によって、イランが核抑止力(nuclear deterrent)の必要性を認識してしまうことを憂慮している。アメリカ政府首脳の考えは間違っていない。 軍事力だけでは意味のある勝利を得ることは不可能であるという事実も重要である。イスラエルの空軍力では、イラン国内にある全ての核関連施設を破壊することは不可能だ。アメリカ軍による攻撃が成功しても、核開発計画の基礎になっている知識そのものを破壊することはできない。イランは、攻撃を受けにくい場所に核関連施設を再建するだろう。1981年にイスラエルがイラクのオシラク原発を空爆したが、その後、イラクは核関連施設を再建した。 まとめると、イスラエルのタカ派がアメリカにイランを攻撃してもらいたがるのは理解できることではあるが、アメリカにとってイラン攻撃は何の利益ももたらさない。オバマ大統領はこのことをイスラエルのネタニヤフ首相に明確に伝えるべきなのだ。 アメリカとイスラエルとの間の隔たりは、イラン問題と同様、パレスチナ問題でも大きい。ネタニヤフ首相は、1993年のオスロ合意(イスラエル・パレスチナ紛争を解決し、パレスチナの自治を確立することを決めた)に反対した。ネタニヤフ首相が認める「パレスチナ国家」は、分断され、武力を持たず、実質的にイスラエルにコントロールされる存在のことを指す。ネタニヤフ首相は2009年の選挙で首相に選ばれたのだが、公約にパレスチナ国家の否定を盛り込んでいた。彼が組織した内閣の閣員の多くは、ヨルダン川西岸地区を永久に支配下に置くことを望んでいる。ネタニヤフ政権は、エルサレムとヨルダン川西岸地区からパレスチナ人たちを排除し続けている。そして入植地を科拡大し続けている。 一方で、オバマ大統領は、パレスチナ国家がイスラエルと平和的に共存できるような形で独立ができるように援助している。2009年6月にカイロで演説した時、オバマ大統領は次のように述べている。「イスラエルとパレスチナ国家が共存するのは、イスラエルの利益となり、パレスチナの利益となり、アメリカの利益となり、世界の利益となる」と。オバマ大統領は、アメリカによるイスラエルへの援助と、イスラエル国内でのパレスチナ人に対する不当な扱いがある限り、アラブ世界とイスラム社会の反米感情は激化していく一方だと認識している。そして、世界規模でのテロ問題も深刻化させることも分かっている。 事実、パレスチナ問題は、イスラエルの存在自体に関わる脅威となっている。現在、50万人以上のユダヤ人が、イスラエルが占領した地域に入植しているヨルダン川から地中海にかけて一つの国家を作り出そうかという勢いである。人口動態統計の数字から考えると、「大イスラエル(Greater Israel)」は、多くのパレスチナ人を含んでおり、ユダヤ人国家とは言えない。また、パレスチナ系の国民の参政権を制限しているので、きちんとした民主政体の国とも言えない。大イスラエルは、人種差別国家となり、イスラエルの正統性とこれからの存続に大いなる脅威を与えることになる。2007年に当時のエフード・オルメルト首相は次のように語っている。「イスラエルとパレスチナが共存することができなければ、イスラエルは、昔の南アフリカが苦しんだように、パレスチナ人にユダヤ人と平等な参政権を与えるかどうかで苦しむようになる。そうなれば、イスラエルは国家として存続しえないのである」と。 ネタニヤフ首相とオバマ大統領は、パレスチナ問題に関して、何度も衝突してきた。そして、いつでもオバマ大統領が折れてきた。オバマ大統領は、今年11月に行われる米大統領選挙まで、パレスチナ問題を巡るネタニヤフ首相との軋轢を公にしたくないはずだ。だから、オバマ大統領は、アメリカとイスラエルが緊密な同盟関係にあることを強調するように行動するだろう。それが真実であるかのように行動するだろう。 しかし、実際には、アメリカとイスラエルの「特別な関係」が持つ機能不全を、オバマ大統領とネタニヤフ首相との間の軋轢は明らかにしている。アメリカとイスラエルが通常の関係であるなら、オバマ大統領は、ネタニヤフ首相の計画にはっきりノーと言える。そして、イスラエルに対して説教じみた説得を行い、アメリカの影響力を使って、イスラエルに計画の再考を促すことができる。しかし、イスラエル・ロビー(Israel Lobby)を形成するアメリカ・イスラエル広報委員会(AIPAC)やその他の団体は、政治家たちに圧力をかけ、イスラエルの望むこととアメリカのできることを区別させないようにしている。つまり、アメリカの政治家たちに圧力をかけ、イスラエルの希望通りにアメリカが動くようにしている。オバマ大統領は、イスラエルだけを特別扱いすることで、アメリカの他の重要な同盟諸国がアメリカから離反してしまうことも可能性としてあることは理解している。しかし、民主党への大口献金をしてくれる人々(ユダヤ人が多い)やマスコミ内のイスラエル支持者たちの意向に沿わねば、オバマ大統領の再選が危なくなってしまうのだ。 戦争は常に大きなコストとリスクを内包するものである。そして、決して長期的な利益をもたらすものではない。従って、オバマ大統領には軍事行動を促す圧力を巧みに避け続けて欲しい。オバマ大統領が公の場でどんなに激しい言葉遣いをしても、軍事行動だけはしてはいけない。一方で、イスラエルは、パレスチナ地域の占領を続けることで、自国の存在を脅威にさらし続けることになるだろう。 ※ジョン・ミアシャイマー:シカゴ大学教授、スティーヴン・ウォルト:ハーバード大学ケネディ記念行政学・政治学大学院教授 (終わり) 古村治彦です。
昨日、2012年3月24日、副島隆彦を囲む会第26回定例会において、1時間の時間をいただき、講演をいたしました。当日、雨にもかかわらず、講演会にご出席いただいた皆様に厚く御礼を申し上げます。 拙い話しぶりと時間を10分も超過してしまうという失態で、ご出席いただいた皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。 2012年5月に、PHP研究所から『アメリカ政治の秘密』という本を出版していただくことになりました。この本は、私の初めての単著となります。お話をいただいてから約2年、そのうちの1年10か月は何を書いてよいのか分からず、大げさな表現ですが、無明の闇をさまよっているようなものでした。 昨年12月に、苦し紛れの原稿を副島先生に見ていただいて、叱責を受け、それからひと月、2012年1月11日に、本の全体骨格が出来上がり、それからひと月ほどで原稿を書き上げることができました。 このブログも不定期な更新ですっかり、荒れ果てた田畑のような状況になっておりますが、本の準備、講演会の準備が終わりましたので、また一から開墾する心で、定期的な更新に努めてまいりたいと思います。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 古村治彦です。 今回は、エジプトの民主化革命に関して興味深い記事を見つけましたので、以下にご紹介いたします。エジプトでは、現在、軍部が実権を握っています。これに対して、アメリカはこれまで毎年行ってきた軍事援助を停止しようとしています。それに対して、エジプトの裁判所が、エジプト国内で活動している民主化グループのリーダーたちを訴追するという決定を行いました。容疑は、外国から不正な資金を受け取ったというものです。具体的には、「アメリカからお金をもらって、人々を煽動した」というものです。 この中に出てくる、国際共和研究所(IRI)、全米民主研究所(NDI)、フリーダム・ハウスというアメリカの組織が曲者なのです。 それでは、拙訳をお読みください。 ========== ●「エジプトの裁判所が民主化グループのアメリカ人たちを訴追(Egyptian judges want Americans at democracy groups held for trial)」 ロサンゼルス・タイムズ 2012年2月5日 http://latimesblogs.latimes.com/world_now/2012/02/egypt-americans-face-trial.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter カイロ発―エジプト国内の民主化グループで活動しているアメリカ人たちに対して不正な資金授受があったとして訴追が行われた。この訴追は、アメリカ政府と現在エジプトを支配している軍部との間の関係をますます悪化させることになる。 アメリカ政府がエジプトの軍部に対して行ってきた年間13億ドル(約1000億円)を停止するという脅しを行った報復として、エジプトの裁判所は恐るべき決定を行った。エジプトの裁判所の決定は、アメリカとアメリカの同盟国であるエジプトとの間の関係を悪化させることになる。北アフリカと中東で起きている政治的激変が収束していない中で、アメリカは、地域の中でも特に密接な関係にある同盟国との関係を悪化させることになる。 AP通信によれば、エジプトの判事たちは、43名(そのうち19名はアメリカ人)を訴追するという決定を下した。訴追の容疑は、エジプト国内で活動している非政府機関に対する資金提供に関する法律違反である。訴追される43名には、ワシントンに本部を置く国際共和研究所(International Republican Institute, IRI)のエジプト支部長をしているサム・ラフード(Sam LaHood)氏が含まれている。サム・ラフード氏は米運輸長官のレイ・ラフード(Ray LaHood)氏の子息である。 ![]() 左がサム・ラフード、右が父親のレイ・ラフード米運輸長官 IRIで活動しているサム・ラフード氏やその他のアメリカ人たちは、先月、駐カイロ・アメリカ大使館に保護を求めた。彼らにはエジプト政府から出国禁止令が出され、逮捕される可能性が高まっていた。フリーダム・ハウス(Freedom House)と全米民主研究所(National Democratic Institute, NDI)の二つの組織で活動している人々も、また現在エジプト当局から捜査を受けている。 ヒラリー・ロドハム・クリントン(Hillary Rodham Clinton)米国務長官は、IRIなどに対する捜査や人員の逮捕といったことが行われれば重大な結果をもたらすという警告を発した。その翌日にエジプトの裁判所はアメリカ人たちの訴追を決めた。 クリントン国務長官は、ミュンヘンの国際会議に参加中で、報道陣に対して次のように語った。「現在、アメリカとエジプトとの間の関係に深刻な影響を及ぼしかねない状況にあり、二国間にはいくつかの問題が存在する。我々としては、二国間関係を悪化させることは望まない」また、クリントン国務長官は、ミュンヘンでエジプトのモハメド・カメル・アマー外相と会談した。 クリントン国務長官はつ続けて次のように語っている。「昨年、私たちアメリカ政府は、エジプトでの経済改革と政治改革に対して経済的援助やその他様々な援助を可能な限り行ってきた。私たちは、昨年の騒乱状態の中で、果たしてアメリカ政府の資金がエジプトの民主化グループに供給されたのかどうか、適切な時期が来れば詳しく調査しなくてはならない」 エジプトの軍部の指導者たちは、ホスニー・ムバラク(Hosni Mubarak)前大統領と同じく、国内で活動している民主化グループに対して猜疑心を持っている。それは昨年の革命と議会選挙を経ても変化がない。結果、エジプトは現在も警察国家のままである。軍部は、非政府組織の多くは「外国の手先」であるとし、こうした組織が反政府運動や政治動乱を煽動したと見ている。 民主化グループに対するこうした敵意に満ちた見方は、エジプト国内で高まっている外国からの介入に対する懸念を反映しているものだと専門家たちや活動家たちは述べている。また、軍最高評議会(Supreme Council of the Armed Forces)は、エジプトが抱える経済的、社会的問題から人々の目をそらすために、民主化グループを攻撃しているという見方もある。 IRIや民主化グループで活動しているアメリカ人たちは、「私たちはエジプトで自由選挙が行われ、エジプトが透明性のある民主制に移行するための手助けをしている」と述べている。「四月六日運動」をはじめとするエジプトの民主化グループは、ムバラク政権を打倒した革命の1年前からアメリカのいくつかの組織と接触を持ってきた。 IRIのウェブサイトには、「IRIはエジプトの政党や市民団体に資金的、物質的な支援を行ったことはない。IRIがエジプトの市民グループと共同で行っている事業は、党派とは一切関係のない有権者教育と民主的な政治参加を強化するための事業であって、選挙の結果に介入したり、影響を与えたりするものではない」という文言が掲載されている。 2011年2月4日、エジプト外相のアンマーは次のように発言している。「私たちはアメリカとの関係が悪化しないように問題の拡大を抑えようと努力を続けている。しかし、裁判官によって訴追が決定し、捜査が行われている今の段階では、それに何らかの影響力を行使することはできない」 (終わり)
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