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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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ニューリパブリック誌に掲載された政治状況についての論文のご紹介②

民主党は昨年の総選挙で大勝をおさめた。民主党は日本の近代史上日本を大きく変革する政党の立場を得た。しかし、民主党の指導者たちは民主党政権ができることを日本にとっての害悪だと考え、鳩山と閣僚たちを小沢の操り人形だと考える人間たちのことを考慮しなかった。

民主党が選挙で得た国民の意思を拒否し、それを組織的に、厳しく国民の意思を無視しようとする試みが官僚やマスコミによってなされた。こうしたやり方は、アメリカ人からすると、共和党がビル・クリントンやオバマに対して仕掛けたやり方とよく似ているように思われる。しかし、日本のエリートのやり方とアメリカの共和党のやり方には大きな違いがある。クリントンやオバマに敵対したのは、玉石混交のポピュリストたち(訳者註:ここで使われているポピュリストは大衆迎合主義者ではない。ワシントンの政治に怒りを感じた人々の圧倒的な支持を受けて政治に変革をもたらそうとする指導者たち)であった。一方、マスコミ、学会、法曹界などにいるアメリカのエリート層のほとんどは民主党支持者である。彼らは「リベラル・エリート」と呼ばれている。このリベラル・エリートというくくりに入れられる人々は、アメリカ国内で重要な影響を持っている。

しかし、日本では、エリートたちは民主党に敵対している。検察は鳩山氏の政治資金の些細な間違いを突いてきた。鳩山氏は母親からなにがしかの援助を受けていながら、それを報告し忘れていた。また、検察は小沢の秘書二人を逮捕した。日本の大新聞である朝日新聞は、連日鳩山と小沢の政治資金に関する疑惑を書き立てていた。その凄まじさはアメリカで言うと、フォックス・ニュース(訳者註:右翼的な言論を流すアメリカのテレビ放送局)やラッシュ・リンボウ(訳者註:ラジオの人気
パーソナリティー。右翼的な辛口コメントで人気)に匹敵するほどだった。日本の状況をアメリカになぞらえてみる。オバマが大統領となったアメリカで、ロジャー・アイレス(フォックス・ニュース社長)がニューヨーク・タイムズ紙を経営し、ハーバード大学とブルッキングス研究所がリチャード・メロン・スカイフ(訳者註:保守的な新聞経営者。クリントン元大統領を激しく攻撃した)によってコントロールされているようなものだったのだ。これで異常さが少し伝わるだろう。

オバマに敵対する勢力と日本の民主党の敵との大きな違いは、民主党の敵はある外国に対してシンパシーを感じ、その外国を利用できる立場にある。アメリカ以外で日本の政治秩序にこれほど深くかかわった外国は存在しない。1955年に自民党が結成されるときに、CIAが資金援助をした。それ以来、自民党のブローカーとしての役割の一つは、巨大なアメリカ軍が日本に存在することを政治的な面で隠すということであった。自民党の政治家たちは大蔵省が必要だと認めた政策の実行に協力して
もらうために、あらゆる形の利益誘導を行った。そのために地方では大規模建設プロジェクトを実施し、日本がアメリカの軍事作戦などに協力することに反対する左翼グループには、水面下で資金を与え、運動が過激にならないようにしてきた。

自民党の日本のエリート層はこれまで自分たちがしてきたことを踏まえて、アメリカ政府に対し、「民主党は日米安全保障に関わる取り決めや構造に対して、致命的な危険を与える存在だ」と主張することができた。そして、長年にわたるパートナーからの訴えは説得力があり、アメリカ政府にとって無視できないものであった。ヘーゲルは、「奴隷は必然的に主人を持つ存在である」と書いている。日本のエリート層はアメリカと深い結びつきを持ち、歴史や状況の偶然で力を持つにいたった。彼ら、自民党の政治家たち、官僚、財界、金融界、マスコミ、学会のエリートたちは、1950年代以降、アメリカの世論の動向に敏感に反応でき、必要な場合にはアメリカの世論に影響を与えることができる社会構造を日本国内で作り上げてきた。30年にわたる日米貿易交渉の動向を見ればそのことが良く分かる。

昔、論争を巻き起こした本のタイトルから借りると、こうしたエリートたちは、「影響力の代理人たち」(訳者註:パット・チョートの著書の題名。米国政治において日本の代理人として活動している人々を描いた)は、昨年の8月までは日本政府の目的を達成するために活動していたが、今は日本政府の邪魔をするために活動している。アメリカ政府の対日本政策に影響を与えると思われるアメリカ人のほとんどすべてが「鳩山は弱くて優柔不断だ」、「民主党の政治家たちは‘アマチュア・ド素人’ばかりだ」、「小沢は反米だ」などと予想はされたが酷い言葉を並べ立てた(訳者註:ジェラルド・カーティスやマイケル・グリーンなどのジャパンハンドラーズの言説のこと)。

知日派アメリカ人たちの非難の言葉は、鳩山と小沢に対する攻撃のほんの一端に過ぎない。しかし、これが十分な効果を持ったのだ。アメリカ人たちの非難の言葉が有効な攻撃となった、それは沖縄の置かれていた状況が鳩山政権にのしかかったからである。

(つづく)

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ニューリパブリック誌に掲載された政治状況についての論文のご紹介②_c0196137_14252359.jpg

by Hfurumura | 2010-06-10 14:25 | 日本政治
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