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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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バーナード・マドフ事件に進展がありました

古村治彦です。このブログを長く更新せず、大変失礼しました。最近、仕事が立て込み、ブログを書くことを疎かにしてしまいました。反省し、これからは定期的にブログを書くように致します。

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今年4月、アダム・レボー著『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』(副島隆彦監訳、古村治彦訳、成甲書房、2010年)が出版されました。この本では、被害総額650億ドル(約6兆円)という史上最大規模の金融詐欺事件を起こした、バーナード・マドフの人生と事件の内容が描かれています。本では逮捕までのことが、詳細に、かつ大河ドラマのように描かれており、大変読みごたえがある本です。年末年始のお休みに是非お読みいただければ幸いです。

※成甲書房のウェブサイトでもお求めになれます。サイトにはこちらからどうぞ。

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バーナード・マドフ事件について簡単に説明します。マドフはナスダックを創設した人物で、伝説的な投資ファンドのマネージャーでした。彼は常に年10パーセントのリターンを出す人物として、投資家たちの間で有名でした。そして、多くの金持ちたちが彼に資金を預けようと殺到しました。また、マドフに資金を流すためにファンド(これをフィーダーファンドと言います)を経営している人々もいました。しかし、2008年のリーマンショックで現金が必要になった人々から資金の引き上げ要求が相次ぎ、マドフはついに、「自分が詐欺を行っていた」と二人の息子に告白しました。息子たちは司法当局に通報し、2008年12月10、バーナード・マドフは逮捕されました。彼の金融詐欺による被害額は650億ドル(約6兆円)で、被害者の多くがユダヤ系の金持ちたちで、被害者にはスティーヴン・スピルバーグやラリー・キング、エリ・ヴィーゼルといった有名人たちも含まれています。また、日本の金融機関も被害に遭っています。マドフは裁判で懲役150年の判決を受け、服役しています。

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この年末、バーナード・マドフ事件に関連し、2つの大きな動きがありました。下に転載しました新聞記事にもありますが、1つ目は、マドフの事業清算管財人アーヴィング・ピカード氏が、大手の金融機関に対して支払いを求める民事訴訟を連邦破産裁判所に起こしたことです。2つ目は、バーナード・マドフの長男で、マドフ証券で働いていた、マーク・マドフが2010年12月11日に自宅で自殺をしたことです。

『バーナード・マドフ事件』で取り上げられているファンドや大手金融機関は被害者の振りをして、「いくらいくら損失を被りました」ということを事件の発覚直後に発表しています。その一覧表は、『バーナード・マドフ事件』に収められています。しかし、下の新聞記事を読むと、実情はそんなに単純なものではないようです。これまでは、次のように考えられてきました。大手金融機関は、少しでも良い投資先を探すものだ。また、顧客からもリターンの大きい金融商品を売るように求められる。ここに、年率10パーセントは堅いファンドがある。それならそれに投資をする商品を作ろう。それなら顧客も満足する。それでマドフの詐欺行為に巻き込まれたのだ、と。しかし、彼らは、マドフが詐欺講をしていることを知っていたが、それを隠して金融商品を売っていた、と破産管財人は主張しています。さらに、マドフの下に集められた資金がこうした大手金融機関に投資されていたが、それらがうやむやになっているようです。簡単に言うと、「彼らがマドフに対して損をさせた」ということになります。

マドフは現在、懲役150年の判決を受け、ノースカロライナ州にある矯正施設に服役中です。彼が生きて刑務所を出ることはできないでしょう。彼は希代の悪人のように言われており、家族も大変な目に遭っています。マドフの奥さんのルースも生活費として2億円だけ手元に残すことを許されましたが、それ以外の資産は全て没収されました。息子たちはマドフが詐欺行為をしていることを知らなかったということで逮捕は免れましたが、彼らに対しての非難も大変なものでした。彼らもまたマドフによる詐欺の被害者で、貰えるはずの利益を貰えなかった点では他の被害者と何ら変わりません。それなのに、長男マークは自殺をしてしまいました。彼は大変に優しい性格であり、小さい時から人気者だったそうですから、「良心の呵責に耐えられずに」自殺したのだという解釈がなされるでしょう。しかし、彼の自殺の原因はまた別のところにあったと思う方が自然ではないかと思います。同時期に破産管財人による大手金融機関に対するお金の返還訴訟が起こされている、この点が大変に重要だと思います。

破産管財人が言うように、大手金融機関は決してただの被害者ではないと思われます。彼らもまた詐欺行為に加担したのだということなのでしょう。ですから、建前で言うと、彼らもお金を返還し、本当の被害者たちに渡るようにすべきなのです。しかし、下の記事にあるように、破産管財人による返還請求の額は大変なものです。アメリカ政府がこうした大手金融機関が潰れないように税金を投入したのに、お金を返還するとまた経営が悪化してしまいます。ですから、事件をうやむやにする必要があります。それもあって、今回、マーク・マドフに対して、逮捕するとか、訴訟を起こすといった圧力をかけて自殺にまで導いた勢力があると考えられます。ウォールストリートジャーナル紙がマーク・マドフについての記事を書き、その内容は彼の責任を追及するものだったという話、そして、マーク・マドフはそれを大変に気に病んでいたという話もあります。

日本もアメリカもマスコミを含めて全てががんじがらめに絡め取られていると私は考えます。ですから、マスコミではマドフは極悪人と言われ、地獄の火で焼かれろとまで言われていましたが、本当の悪は別にいるのではないかと思われるのです。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「モルガンに5千億円請求 米国の巨額詐欺事件で」

MSN産経ニュース 2010年12月3日

 米国の巨額詐欺事件で服役中のナスダック・ストック・マーケット元会長バーナード・マドフ受刑者の事業清算手続きをしている管財人は2日、同受刑者による犯罪を助けたとして米金融大手JPモルガン・チェースに64億ドル(約5400億円)の支払いを求める訴えをニューヨークの連邦破産裁判所に起こしたと発表した。

 発表によると、JPモルガンは20年以上にわたって同受刑者の運営していた投資会社のメーンバンクの立場だったが、同受刑者の詐欺行為などを故意に無視していたと主張している。

 同管財人は詐欺被害者の損害回復に向け、スイスの金融大手UBSに対しても先月、20億ドル以上の補償を求めている。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101203/fnc1012031031009-n1.htm


●「巨額詐欺主役の長男自殺か NYのマンションで首つり」

MSN産経ニュース 2010年12月12日

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、巨額詐欺事件で服役中のナスダック・ストック・マーケット元会長バーナード・マドフ受刑者の長男マーク氏(46)が11日朝(日本時間同日夜)、ニューヨーク市内の自宅マンションで首をつった状態で死亡しているのが見つかった。

 同紙によると、マーク氏の弁護士は声明で自殺であると発表した。AP通信によると、捜査当局も自殺と見ている。

 APによると、この日はマドフ受刑者の逮捕からちょうど2年。マーク氏と弟は父親の詐欺事件に関し捜査の対象とはなったが、刑事訴追は受けていないという。知人によると、同氏は最近、ふさぎ込みがちだったという。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/world/america/101212/amr1012120159004-n1.htm


●「野村の英法人などを訴え 米巨額詐欺事件で」

47ニュース 2010年12月10日

 【ニューヨーク共同】米国の巨額詐欺事件で服役中のナスダック・ストック・マーケット元会長バーナード・マドフ14件受刑者の事業清算手続きをしている管財人は9日までに、証券最大手の野村ホールディングスの英国法人など7社に対して総額10億ドル(約840億円)超の支払いを求める訴えをニューヨークの連邦破産裁判所に起こしたと発表した。

 訴えられたのは野村の英投資銀行ノムラ・バンク・インターナショナルや米金融大手シティバンク、米金融大手バンク・オブ・アメリカ傘下の証券大手メリルリンチなど。

 発表によると、7社はマドフ受刑者の詐欺行為を認識していたか、認識していたとみられる時期に、受刑者の運営していた投資会社から資金を受け取っていた。これらの金融機関が投資商品の開発や提供も行っていたと指摘している。

 同管財人はこれまでに、スイスの金融大手UBSや米金融大手JPモルガン・チェースにも支払いを求めている。

http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010121001000060.html


●「野村証券に510万ドル請求 米巨額詐欺関連で海運会社」

47ニュース 2010年6月1日

 米国史上2番目の巨額詐欺事件で禁固150年とされたナスダック・ストック・マーケットのバーナード・マドフ元会長関与の金融商品に出資し損失が出たとして、東京の海運会社「乾汽船」が野村証券に約510万ドルの損害賠償を求め東京地裁に提訴していたことが1日、分かった。

 提訴した3月時点のレートでは約4億7千万円。野村ホールディングス・グループ広報部は「訴状は受け取っているが、訴訟対応などの詳細はコメントを控える」としている。

 訴状によると、乾汽船は2007年11月、野村証券が販売し、運用先にマドフ元会長の会社が関与していた金融商品に500万ドルを出資。マドフ元会長が08年12月に米連邦捜査局(FBI)に逮捕された後、野村証券は乾汽船に対し、この金融商品の運用先の一部が取引停止となったと通告、全額が損失となった。

 乾汽船側は出資の際に運用先にマドフ元会長の会社が含まれているとの説明は受けなかったと主張。野村証券は出資者に不合理な損害が出ないように配慮して商品の調査を行う注意義務を怠ったとしている。

 5月27日に第1回口頭弁論が開かれた。

http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010060101000335.html

(新聞記事転載貼り付け終わり)
by Hfurumura | 2010-12-13 00:54
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