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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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手嶋龍一氏の報道ステーションでの発言から考える

昨日、2011年3月7日、テレビ朝日で午後9時54分から放送された「報道ステーション」(古館伊知郎氏が司会)のトップニュースは当然のように前原誠司外務大臣の辞任でした。解説者として、手嶋龍一氏が出てきました。元NHKワシントン総局長で、2001年にアメリカで起きた同時多発テロ事件の時にアメリカからニュースを伝え続けました。手嶋氏は国内問題よりも国際問題に大変強い印象があります。アメリカだけでなく、世界で起きた事件の解説者として出てきます。

ここから分かることは、前原外相の辞任は国内問題(在日外国人からの献金を受けていたこと)というだけではなく、国際的な側面を持つ事件だということです。

手嶋龍一氏は、「前原氏はクリントン国務長官から全く評価されていなかった。外交の相手としては見られていなかった」と発言しました。

それに対して、司会の古館氏は「ですが、クリントンさんは前原氏を高く評価するという発言をしていましたよね」と質問しました。

それに対して手嶋氏は、「それは文字通りに“外交辞令”です。外交においては相手が利用できるとなれば最大限の賛辞を送るものです。しかし、クリントン国務長官が前原さんを評価していた証拠はどこにもありません」と答えました。

紹介した手嶋氏の発言は、それまでのマスコミの論調とは全く逆のことでした。2010年9月7日、尖閣諸島沖で中国の漁船と日本の海上保安庁の巡視船2隻が衝突するという事件が起きました。この際、前原氏は、中国側に対して強硬な態度に出るとともに、アメリカ側に、「尖閣諸島は日米安保条約適用対象である」ということを確認させたということで、大変な評価を受けました。「いざとなったら、アメリカが守ってくれるのだ」ということを確認した、ということで単純に喜んで良いとは私は思いませんが、「前原氏は大変な戦果を挙げた」ということになりました。以下に貼り付けた新聞記事をお読みください。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

・「「尖閣は日米安保適用対象」クリントン長官、明言 日米外相会談で」

2010年9月24日付 MSN産経ニュース

 【ニューヨーク=酒井充】前原誠司外相は23日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークでクリントン米国務長官と外相就任後初めて会談した。クリントン氏は沖縄・尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突した事件に関連して、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であるとの見解を強調した。今月7日の事件発生以来、米側がこうした見解を直接、日本側に明言したのは初めて。海洋権益を拡大する中国に対し、日米両国が足並みをそろえて牽(けん)制(せい)した格好だ。

 前原氏は約50分間に及んだ会談で、衝突事件について「東シナ海に領土問題はない。日本の国内法にのっとって粛々と対応する」と述べ、日本政府の対応を説明した。その上で、尖閣諸島を日米安保条約の適用対象としている米側の従来の立場に謝意を示し、日中間で問題解決に取り組む決意を示した。

 これに対し、クリントン氏は尖閣諸島について「明らかに日米安保条約が適用される」と語った。日米安保条約第5条は「日本国の施政の下にある領域」で「いずれか一方に対する武力攻撃」があった場合に、「共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。

 ただ、クローリー米国務次官補(広報担当)は、尖閣諸島の領有権が日中両国のどちらにあるかについて、米国は立場を明確にしないとした上で、外相会談でクリントン長官が、日中両国の対話強化による衝突事件の早期解決を求めたことを明らかにした。

 このほか、会談では日米同盟がアジア太平洋地域の平和と安定に欠かせないとの認識のもと、同盟深化を図ることで一致。米軍普天間飛行場(沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)移設問題では、前原氏が同県名護市辺野古を移設先とする5月の日米共同声明の実現に向けて「しっかり対応していく」と述べ、米側の理解を求めた。

 これに対し、会談に同席したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は「移設問題も重要だが、もっとグローバルなテーマも日米の戦略対話でしっかりやっていこう」と語った。北朝鮮の核開発問題に対し日米が連携して解決に努力することや核開発を続けるイランへの制裁で協調することでも一致した。日本側が削減を求め、米側が難色を示す在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の問題は話題に上らなかった。

(新聞記事転載貼り付け終わり)

上の新聞記事にもあるように、クリントン国務長官は尖閣諸島は日米安保条約の適用対象であると認めています。しかし、クリントン氏の部下であるクローリー国務次官補は、「尖閣諸島の領有については日中どちらかに権利があるのかをアメリカははっきりさせない」としています。これは、衝突もあるだろうが、外交できちんと解決することを求めるアメリカ政府からのシグナルです。外交は硬軟の使い分けができなくてはならず、激しく非難している相手ともクールに交渉することが重要です。アメリカ側は期待したものと言えます。それでは次の新聞記事をお読みください。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

・「横浜のAPEC閣僚会議を欠席 クリントン米国務長官」

2010年10月22日付 MSN産経ニュース

 クリントン米国務長官が、11月に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚会議を日程上の都合から欠席することが21日、分かった。複数の日米関係筋が明らかにした。

 クリントン長官は横浜で前原誠司外相と日米外相会談を行う予定だったが、不可能になったため、かわりに27日にハワイで会談することが決まった。

 米国が来年から東アジアサミットに正式参加するため、クリントン長官は今月30日にハノイで開かれる同サミットに特別ゲストとして出席する。その後、カンボジアやマレーシアなどを歴訪し、オーストラリアで外務、防衛担当閣僚による安全保障対話(2プラス2)にも参加する予定で、APECに出席できなくなった。(共同)

・「前原・クリントン会談、日米同盟強調し中国をけん制」

2010年10月29日付 AFPBBNews

 【10月29日 AFP】前原誠司(Seiji Maehara)外相とヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は27日夜、ハワイ(Hawaii)で会談し、日米同盟関係を再確認するとともに、中国からの輸出が滞っているレアアース(希土類)の供給源多角化を目指す方向で一致、外交問題における中国の最近の強硬的態度に連係して対処する姿勢を示した。

 会談後の共同会見でクリントン長官は、「(日米)同盟は、アジア太平洋地域における米国の戦略的関与の基軸」と言明。数十年間にわたって域内の平和を支え、両国の繁栄をうながしてきたとの考えを示した。一方の前原外相は、日本の防衛において2国間協力を確認するためさらに協議を深化させたいと述べた。

 両外相はまた、さまざまな「周辺事態」に対処していく必要性に触れた。

 中国が領有権を主張している沖縄県尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)についてクリントン長官は、日本人記者の質問に答え、日本の領土への攻撃に対する米国の防衛義務を定めた「日米安保条約第5条の範囲に尖閣諸島が入ることを、再度明確にしておきたい」と明言。「日米同盟は、米国が世界各地で結んでいる同盟関係の中でも最も重要なものの1つだ。日本国民を守るわが国の義務を重視している」と続けた。

 ハイテク製品などの製造に不可欠なレアアース(希土類)の供給源については、中国が輸出をほぼ独占している状況から脱却し、中国に代わる供給源を開拓する重要性をともに強調した。(c)AFP

(新聞記事転載貼り付け終わり)

横浜でのAPEC外相会議は前原氏が議長で、外交の晴れ舞台ですが、大変残念なことにクリントン国務長官は横浜まで来ることができませんでした。アジア諸国を歴訪していたにも関わらず、です。それは、緊急に話し合うこともなく、何が重大な決定がなされる訳ではない会議に出る必要はないし、日本には中国との関係を良くするという課題を与えているので、APECではそれをやるようにということだったのでしょう。それでもクリントン国務長官は、前原氏と話すために時間を作っています。そこで途中経過などを話したものと思われます。そして、中国に対して強硬な姿勢を強調して、前原氏を援護しています。しかし、そうした動きも少しずつ変化していきます。次の新聞記事をお読みください。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

・「日米外相、共通戦略目標の見直し合意 中国台頭など念頭」

2011年1月7日付 朝日新聞電子版
2011年1月7日11時54分

 【ワシントン=鶴岡正寛、伊藤宏】前原誠司外相とクリントン米国務長官は6日午後(日本時間7日未明)、米国務省で会談した。中国の海洋進出や北朝鮮情勢など安全保障環境の変化を受け、次回の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、2005年策定の「共通戦略目標」を見直すことで合意した。菅直人首相が今春訪米し、オバマ大統領と発表する共同声明に盛り込みたい考えだ。

 日本側の説明によると、最近の東アジア地域の安全保障環境を踏まえて「共通戦略目標の見直し、再確認の作業を進めていく」ことで一致した。事務レベルの意見交換では、中国の南シナ海や東シナ海への進出を受けて「海洋航行の自由」などを盛り込むことを検討している。

 現行の共通戦略目標は、日米が05年2月に発表。台湾海峡問題の平和的解決や北朝鮮に関連する諸懸案の平和的解決などの目標を明記。安全保障環境に応じた見直し条項も盛り込んでいた。

 クリントン氏は会談後の共同記者会見で「この数カ月のうちに2プラス2が開催されることを期待する。今春の後半に、菅首相を招待するのを楽しみにしている」と表明した。ただ日米は、次回の2プラス2で米軍普天間飛行場の沖縄県名護市への移設案の詳細を固めることでも合意している。県内移設に地元の合意を得られる見込みはなく、首相訪米前に2プラス2を開けない可能性もある。

 前原外相は会見で「沖縄の基地負担軽減と抑止力の維持を両立させる努力をしていく」。クリントン氏は「米国は同盟の基盤となる重要な問題について努力し続けていく。普天間問題もその一部だ」と話した。

 また両外相は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について協議を進める方針を確認した。前原氏は会談に先立ち、米戦略国際問題研究所(CSIS)での講演後の質疑で「より自由な貿易体制を目指し、それを日本再生の起爆剤にしていくことが必要だ」と積極姿勢を示した。

 北朝鮮については前原氏が共同会見で「北朝鮮が具体的な行動をとれば、中国が提案している6者の会合を拒む理由はない」と、まず北朝鮮が非核化を進めるべきだとの考えを表明。クリントン氏も「我々は北朝鮮の挑発的な行為を終わらせ、朝鮮半島の非核化に取り組むことを確認した」と語った。


・「フロリダ高速鉄道計画の中止確定」

2011年3月5日付 MSN産経ニュース
2011.3.5 12:03


 【ワシントン=柿内公輔】ラフード米運輸長官は4日、フロリダ州の高速鉄道計画にあてる連邦予算を他の州に振り向けると発表した。共和党系のスコット州知事が連邦政府の補助金の受け入れを拒否しているためで、日本が新幹線の採用を売り込んでいた同計画の中止がほぼ確定した。

 米メディアなどによると、ラフード長官は同日、スコット知事と電話で会談し、約24億ドル(約1980億円)の補助金を受け入れるよう再度促したが、州のコスト負担増を懸念する知事は拒否。長官は「補助金は、(高速鉄道計画を抱える)他の州に振り向けられるだろう」と述べた。

 また、同州の州上院議員がスコット知事に補助金受け入れを命じるよう求めていた訴訟で、同州最高裁は4日、訴えを退けた。

 これにより、オバマ政権が全米で整備する高速鉄道網で最も進行していたフロリダ州の計画が頓挫した。

 新幹線を擁する日本は、JR東海など11社の企業連合を組み、前原誠司外相が訪米して知事にトップセールスをかけるなど官民挙げて受注を目指していた。藤崎一郎駐米大使は4日、「連邦政府の決定を見守りたい」と述べた。

(新聞記事転載貼り付け終わり)

2010年9月以降、日中関係に大きな進展はありませんでした。日本は中国との間で何もしてこなかったと言えます。問題が生じたら、それに向けて解決をするための努力をしなければなりませんが、全くそれがないまま、半年が過ぎました。中国の指導部は交替に向けて、課題を少しでも解決していこうという姿勢を見せているのですから、その流れに乗って日中関係も改善させられることもできたはずです。しかし、アメリカから見れば、こうした日本の無策は、だんだん負担になっていきます。アメリカは中国との相互依存関係にあり、敵対ばかりしていられません。しかし、日本側と会うたびに、中国に対する非難や批判をしなければならないのは大きな負担であり、アメリカの国益を損なうことになりかねません。中国もアメリカの苦しさは分かっているでしょうから、表だっては批判
しつつも、「大変だね」ということになります。そして、お互いにとって負担(と言うよりは負債)となっているのは、「あの日本の外相だ」ということになったのでしょう。

「日本の外相を交替させてしまえば良いや」が米中の共通の利益となりました。その象徴として前原外相がトップセールスで売り込んだ高速鉄道です。「日本から作らせて下さいと言ってきた。まぁ一応良いものらしいし、前原は大事な政治家のようだから考えてやるか」だったのでしょうが、「前原はダメだということが分かったから、気を使う必要もないな」ということになったのでしょう。
by Hfurumura | 2011-03-08 12:25
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