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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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金の取引禁止という話がネット上で広まっている

日本再占領 ―「消えた統治能力」と「第三の敗戦」―

中田 安彦 / 成甲書房



ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方

カンナ,P. /



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「2011年7月15日をもって、金の取引ができなくなる」という話がネット上で広まっています。ある条件をクリアしている人たちは今までどおりに取引できるという話もあります。しかし、こんな大事な話が日本のメディアでも報道されず、アメリカでも報道されていない状態です。

この話の真偽に興味を持った人たちは自分たちで本当かどうか調べるしかありません。日本語で調べてみても、大手メディアには出ていませんし、個人のブログのレベルです。何とか見つけ出してきたのが、以下のロイター通信の記事です。ロイター通信といえば、世界的な通信社ですから、信憑性のない話は掲載しないでしょう。また、この話のもとになったであろう出来事をうまくまとめた記事も見つけました。それらを翻訳して以下に掲載します。

まず、個人の投資家の金と銀の取引が完全に禁止されるという話は今のところないようです。これからは分かりません。あくまで、今のところ、です。今回の出来事について私なりにまとめたいと思います。

まず、アメリカでドッド=フランク法という二人の議員の名前を冠した法律が成立したところから話が始まります。この法律は、ウォール街の金融業界の改革と消費者・投資家の保護を目的とした法律です。あまり大きなレバレッジをかけたり、利率は高いけど危険な金融商品を作ることを禁止するといった内容なのですが、政府の機関である米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)から承認を受けた業者以外の、実物商品の店頭・相対取引を禁止するという内容も入っています。

この条項に対して、Forex.comというインターネット上で展開している業者が反応し、顧客に対して「米国市民は7月15日になったら、貴金属の先物の小口取引ができなくなる」というメールを出しました。これでネット上で、「アメリカで金や銀の取引ができなくなる」という話が一気に広がりました。

ドッド=フランク法では、承認を得ない業者による先物取引が禁止されるのであって、普通の投資家が先物ではない、普通の金の売買を行うのは問題ないというのが一般的な反応のようです。

しかし、「そうか、それなら安心だな」というのは早計です。法律は政府、官僚にとっては武器であり、それを如何に使いこなし、条文をたとえ捻じ曲げてもわからないようにするのが彼らの仕事です。Forex.comが早とちりだなと単純に笑えません。

アメリカで現在最大の問題と言えば債務上限引き上げ問題です。これがホワイトハウスと議会側が妥協して解決できたら大きなことにはなりませんが、もしデフォルトということになれば世界経済に及ぼす影響、アメリカ経済に及ぼす影響は計り知れません。デフォルトとなれば米国債の価値の下落、金利の上昇でアメリカ経済は大きな打撃を受けます。そして、米国債を買っている個人(家計)やファンドは損切をして、ほかの安定した投資商品を探すことになります。世界で最も安定しているのは金です。米国債が下落すると金が上昇します。金に資金が流れます。しかし、その金に資金が流れないようにせき止められたらどうでしょう。そして、金も価値を下げてしまったらどうでしょう。金利は上がっているのですから、米国債にお金が流れることも考えられます。金利が上がれば米国内でインフレになり、ドル安傾向が進みます。そうすれば、現在オバマ政権が行っているドル安による輸出振興ということも自然な流れとなって出てきます。

ネット上のおとぎ話のような、金の取引禁止も決して笑っておしまいということにはならないかもしれません。人それぞれ考えがありますし、そんな馬鹿なと笑ってしまえればそれでよいのですが。考えることは自由ですが、現実は考えを超えてしまうことがたびたびあります。早とちりに陰謀論、あとで笑えるような状況になることを願っています。しかし、消費者保護の最も手っ取り早い方法は、売らせない、買わせないことであるということは書いておきます。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「金融業者たちの中に貴金属の小口取引が禁止されると予想している人々がいる(Some dealers to suspend retail precious metals
trading)」

2011年6月21日 ロイター通信
フランク・タン記、デイヴィッド・グレゴリオ編集

ニューヨーク発、2011年6月21日(ロイター通信)

米商品先物取引委員会のドッド=フランク・ウォールストリート改革法を基にした新しいルール作りが遅れている事を受けて、金融業者たちは、貴金属の小口、店頭・相対取引が禁止されるのではないかと考えている。

オンライン(インターネット上)の業者であるForex.com社は、顧客に対して2011年7月15日以降、米国市民は金属取引が継続できなくなり、全ての公開の金属取引(open metal positions)は同日に閉鎖されることになると伝えた。Forex.com社の親会社はゲイン・キャピタル・ホールディングス社である。

Forex.com社の広報担当者はドッド=フランク法のある条文を引用し、「米商品先物取引委員会は、小口の個人投資家たちとの店頭・相対での実物商品の取引を監視することになる」としている。

ドッド=フランク法の当該条文は、適格ではない契約参加者である業者が小口の投資家と取引を行った際に適用されるものである。

銀行やブローカーなどの金融機関と商品ファンドは、米商品先物取引委員会から認可を受けている適格契約参加者であるので、ドッド=フランク法の影響を受けないと考えられる。

先週、米商品先物取引委員会は、スワップ取引に関するルールのうちのいくつかの実施を遅らせることを決めた。実施は2011年7月16日の予定だった。この遅延は、数十億ドル規模のデリバティブ取引の妥当性が危ぶまれ、取引が行われないなど、市場に悪影響を及ぼすことを防ぐ目的で行われた。

最終的に確定したルールがない状況であるため、店頭・相対でのデリバティブ取引の法的規制がないという危険な状況を生み出すことになった。店頭・相対取引は、企業やトレーダーが金利変化や商品価格変動に伴って生まれるリスクを相殺するために行っている。確定したルールが存在しないということは、店頭・相対取引を行うことが困難になり、また取引を行っても無効になってしまうのではないかという恐怖心を業者たちの間に広めることとなった。

米商品先物取引委員会は、店頭・相対取引に対する新しい規制の枠組みを作ろうと急いでいる。その中には、2007年から2009年にかけて金融危機を悪化させたになったクレジット・デフォルト・スワップも入っており、規制の対象になる。

http://www.reuters.com/article/2011/06/21/precious-metals-regulation-idUSN2160031820110621

マーケットウォッチブログ(MarketWatch Blogs):市場関連ニュースと分析のブログ 

The Tell

2011年6月20日
トム・ビーミス(Tom Bemis)筆

●「ドッド=フランク法によって小口の金・銀取引は違法となるのか?(Dodd-Frank rules outlaw retail gold, silver trading?)」

一部報道によれば、Forex.comが顧客に対して、来月のドッド=フランク法の施行によって、金と銀をはじめとする貴金属の店頭、相対取引(over-the-counter)ができなくなるという警告を発したということだ。

Forex.comが顧客に送ったEメールを週末にゼロヘッジ社が公表し、LeapRate.comによって拡散された。

「アメリカ議会を通過したドッド=フランク法の施行により、アメリカ市民による金や銀をはじめとする貴金属の店頭、相対取引が禁止となる新しい規制が行われることになります。この規制は2011年7月15日に発効する予定です」というメッセージをForex.comは顧客に送った。

LeapRate.comは次のように書いている。

「Forex.comが顧客に貴金属の取引が禁止になるというメッセージを送ったのは、Forex.comがドッド=フランク法の以下の条文を自分たちなりに解釈したことが基になっている。その条文は以下のとおりである。『適格契約参加者(eligible contract participant)、商業活動の実態がある適格者(eligible commercial entity)以外による、実物商品のレバレッジをかけた取引とマージンを前提とする取引を全て禁止とする』( prohibit “…a transaction in any commodity with a person that is not an eligible contract participant or an eligible commercial entity, on a leveraged or margined basis.”)」

市場関係者の中には、ドッド=フランク法や米商品先物取引委員会が施行を検討している新しいルールが実施されても、小口の投資家たちが金や銀を購入することが禁止されることはないと主張している人たちがいる。

テキサス州ダラスに本社を置くディリオン・ゲージ・メタルズ社の会長テリー・ハンロンは、「Forex.comが少し大げさに反応してしまったようだ」と語った。ディリオン・ゲージ・メタルズは金属専門のブローカー企業である。

マイダス・ファンズ社(MIDSX)の会長兼ポートフォリオ・マネージャーのトム・ウィンミルは、「ドッド=フランク法では、金と銀の小口取引が28日以内に行われるものは違法ではない、法律の適用外とすることになる」と指摘している。

「ドッド=フランク法では、米商品先物取引委員会に先物取引に対するより厳しい規制をかけるための権威を与えようとしている。先物取引に見えない取引、つまり、28日以内に完了する取引であれば、米商品先物取引委員会はそうした取引をやめさせることはない」とウィンミルは述べている。

ディリオン社のハンロン会長は、「ドッド=フランク法は、レバレッジをかけた金と銀の取引とファンドマネージャーがよく行っているデリバティブ取引に新しく規制をかけようというのが狙いだ」と語っている。

「金を購入したいと考えている投資家たちには何の影響もない」とハンロンは述べている。

米商品先物取引委員会からは何の返答も得られなかった。

(編集記:この記事はForex.comの動きを受けて修正がくわえられている。ロン・オロールが修正を加えた)


http://blogs.marketwatch.com/thetell/2011/06/20/dodd-frank-rules-outlaw-retail-gold-silver-trading/

(新聞記事転載貼り付け終わり)
by Hfurumura | 2011-07-20 00:26 | 国際政治
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