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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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ウォルト教授の尖閣諸島論

最新版:中国が尖閣諸島を買い取るというのはどうだろうか?(Why doesn't China just buy the Senkaku islands? (updated))

スティーヴン・ウォルト筆
2012年9月21日
フォーリン・ポリシー誌
http://walt.foreignpolicy.com/posts/2012/09/21/sell_the_senkakus

東シナ海では、注意を向けるべき、そして懸念すべき対立が起きている。その中心には、尖閣諸島(中国名:魚釣島)と呼ばれる無人島の島々がある。尖閣諸島を巡り、当事者たちが争っている。

これまでの歴史的経緯を簡単に書く。日本は尖閣諸島の支配権を、日清戦争後の1895年に獲得した。その後、アメリカが1945年から1970年代初めにかけて支配した。1972年、日本が支配権を回復した。その際、尖閣諸島の所有権は、一般の、ある家族が回復した。現在、尖閣諸島に人は住んでいない。

今年初め、右翼的な東京都知事が、「尖閣諸島を日本の手にとどめておくために、東京都庁が尖閣諸島を買い取るつもりだ」 と発言した。東京都が尖閣諸島を購入していたら、尖閣諸島は、世界史上、最も遠くにある大都市の「近郊」ということになっただろう。この動きを阻止するために、日本政府は、尖閣諸島を所有者から買い取った。この動きは、中国国内での醜悪なデモを引き起こしている。そして、軍事衝突の可能性を高めた。

この問題は、アメリカ政府にとっては、扱いにくい問題である。それは、私たちは、日中間の緊張がエスカレートした場合、同盟国である日本を支援、支持することを期待されるだろうからだ。しかし、この問題に関するアメリカの立場は明確なものではない。また、状況をさらに複雑にしているのは、台湾が中国の主張に同意しているという事実である。台湾もまた、尖閣諸島を自国の領土だと認識している。尖閣諸島の最大の島でもたかただ4平方キロの広さしかなく、もぐら、鳥、羊のすみかとなっているに過ぎない。

こうした状況を踏まえて私は考えてみた。歴史を振り返って見ると、世界各国は自国の利益にかなう場合には、お互いに領土を売却しあっていた。多くの場合、ある国が現金を必要としていた場合、領土を売却していた。アメリカによるルイジアナ購入を思い出してもらいたい。また、アメリカはロシアからアラスカを購入した。日本政府は尖閣諸島の所有者から20億ドル(訳者註:これは20億円の間違いであろう)で尖閣諸島を購入した。中国は、それと同じ金額(もしくは市場で適正だと思われる金額)で尖閣諸島を買い取れば良かったのではないか?中国は購入資金をいくらでも用意できるだろうし、日本政府もさらにお金を積むことができるだろう。しかし、20億ドル(訳者註:20億円の間違いだろう)を更に支払うことは無理だが。どうして尖閣諸島問題をただのビジネス上の問題とする、というこの考えはどうだろう?

このような解決策に立ちはだかる障害は、ナショナリズムである。中国は尖閣諸島を中国の領土だと考えている。従って、中国の領土である島々を手に入れるためにどうして日本にお金を支払わねばならないのか、ということになる。 日本側でも尖閣諸島の売却は、国家としてのプライドを傷つけるものだと考える人々も日本国内にいる。日本国民が誰も住みたいとも思わない、ただの小さな島々であっても、日本側からすれば、売却することはプライドが許さない。

それでも、日本政府が自分たちが支払った金額で尖閣諸島の買い取りを中国側に提案することは賢い動きだと私は考える。このように考えてもらいたい。あなたがお金持ちの隣人と土地の境界線のことで争っていると仮定する。市役所の記録を調べてみても、その境界線がはっきりしないとする。この場合、争っている当事者たちは、お互いに、相手はフェアではないと考える。しかし、もし隣のお金持ちがあなたが満足する条件を提示してきたら、あなたはそれを喜んで受け入れるはずだ。お金持ちは自分が既に所有していると考えている土地を進んで買い取るだろう。それは、そのお金持ちが訴訟は避けたい、もしくはあなたとこれからもずっと争い続ける関係を終わらせたいと願うからだ。そして、ここでお金を払う方が結果的に安くつく。お金持ちにとっては、あなたの主張に対してお金を支払うことが賢い対処法となるのだ。その結果、あなたはお金を手にし、お金持ちを自宅に招いてビールでも飲みながら、問題解決を祝えば良い。

日本政府が売却を提案すべき理由はもう一つある。もし中国が提案を拒否したら、それは、中国政府が日本と戦争をしたいと望んでおり、問題を理性的な方法で解決する意思はないということを示すことになる。これができれば日本の勝利である。なぜなら、日本が紛争における理性的な当事者であると世界各国と見なすことが国益になるからだ。それはなぜか?中国がこれからも勃興し続ける場合、東アジアの外交における重要な要素は、地域内外の様々なプレイヤーたちが、それぞれいろいろな意図を持って外交を行うが、その意図をいかにして把握するかということになる。中国は、アメリカとアジア地域における同盟諸国を、対立と不安定をもたらす要素だと描き出したいと望んでいる。なぜなら、そうすることで、他国が中国と均衡を保つために、アメリカの陣営に参加する可能性を低下させることができるからだ。 一方、中国政府が好戦的で、野心的で、威張り散らしたいという態度だと他国が認識すれば、アメリカにとっては、アジア諸国との同盟関係を維持することが容易となる。また、東アジア、東南アジアの国々が、中国との緊密な経済関係や、相互の争いを乗り越えて、お互いに協力関係を築き上げ、中国に対峙するように説得することもまた容易にできるようになる。日本と中国との間の、尖閣諸島をめぐるいさかいは、日中両国にとっては、自分たちがいかに理性的であるかを示すチャンスである。そして、自分が理性的だと見せることができれば、相手は強情で、強欲だと他国に思わせることができる。

しかし、こうしたことは実際には起こらないだろうと私は確信している。日本は中国側に対して、尖閣諸島の購入を提案することはないだろうし、もし提案することがあっても、中国は購入を拒否するだろう。このような解決法が採れないために、東アジアにおける安全保障上の競争はこれからも激しさを増していくと私は確信している。

最新版:昨日、この問題に詳しいコメンテーターから電話をもらった。その人は、私に、「あなたは今回の衝突における重要な要素の一つを見逃している」と言った。その要素とは、中国は尖閣諸島自体はどうでも良いと思っているということだ。中国は、尖閣諸島に付随する天然資源に関心を持っているのだ。石油、天然ガス、海産物などに関心を持っているのだ、とその人は教えてくれた。そして、尖閣諸島を手に入れることで、「排他的経済水域」を拡大したいのだとも教えてくれた。コメンテーターの指摘は良い点をついている。しかし、その人が述べたことが、衝突を経済的に解決するための障害にはならない。もし尖閣諸島に天然資源が存在し、中国がそれを欲するなら、日本は購入代金の値上げをすればよい。もしくは、天然資源の分を前払い、もしくは将来得られたはずの利益分(例えば50年分など)を上乗せして売却すればよい。言い換えるならば、原理的に言えば、交渉とお金の上乗せをすれば問題を解決できないと考えるだけの理由は存在しない。しかし、これまで述べてきたように、私は、交渉と購入によって問題が解決できるとは考えていない。

(終わり)
by Hfurumura | 2012-09-25 16:55 | 国際政治
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