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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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ミャンマーの「民主化」:ビル・リチャードソン元国連大使の民主化論。慇懃無礼とはこのことだ

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



 古村治彦です。昨日、同僚の中田安彦研究員との対談で、国務長官人事の予想をしました。その時に、名前が挙がった一人に、このビル・リチャードソン元国連大使がいます。本日、ニューヨーク・タイムズ紙の論説ページに、最近ミャンマーを訪問したリチャードソンの文章が掲載されました。これは、オバマ大統領のミャンマー訪問に先駆けての、露払いの役割の訪問だったと思われます。

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ビル・リチャードソンとヒラリー・クリントン

 私の『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年5月刊)を読んでいただいた方なら気づいていただけると思いますが、この文章は、アメリカがミャンマーの民主化に「介入する(intervention、インターヴェンション)」ということを述べたものです。リチャードソンは、クリントン政権で重要な地位を占めた人物であり、ヒラリーにも近い人物です。このような人物がミャンマーに行って、オバマ大統領の露払いを行ったという事実は重要です。そして、民主化、アメリカの関与(engagement、エンゲイジメント)をやるべきだと書いているのです。

 この文章を読み、どうもこのビル・リチャードソンも、ヒラリー外交路線の継承、「院政」には都合の良い人物ではないか、と私は思うようになりました。ヒラリーの路線を継承することが確実な、スーザン・ライスも上院から承認を受けることが難しいと言われていましたが、ここにきて、逆に上院を責める論調も出てきています。そういったことを頭に入れて読むと、大変興味深い内容になっています。

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論説ページ
●「ミャンマーとアメリカにとってのまたとない時(A Rare Moment for Myanmar — and America)」

ビル・リチャードソン(Bill Richardson)、ミッキー・バーグマン(Mickey Bergman)筆
ニューヨーク・タイムズ紙(New York Times)
2012年11月14日
http://www.nytimes.com/2012/11/15/opinion/a-rare-moment-for-myanmar-and-america.html?smid=tw-share

 ヤンゴンにあるトレイダーズ・ホテルのロビーは夜の早い時間帯であったが混雑している。中国、日本、ヨーロッパ、アメリカからやって来た人々が数多くたむろしている。この光景は驚くべきものだ。それはまるでミャンマーで経済発展が始まるのを今や遅しと待っているように見えた。
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 ミャンマー政府は政治的、経済的改革を実行している。これに応えて、アメリカ政府はミャンマーに対する経済制裁を一時停止している。しかし、経済制裁を解除した訳ではない。野党勢力のリーダー、ダウ・アウンサン・スー・チー(Daw Aung San Suu Kyi)は先ごろ、アメリカを訪問した。それはまるで凱旋のようなものだった。また、軍部出身であるが改革を行っていることで信頼を得ているテイン・セイン(Thein Sein)大統領もまた、アメリカ訪問をし、歓迎された。

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アウンサン・スー・チー
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テイン・セイン

 アウンサン・スー・チーは1989年から自宅軟禁状態に置かれてきた。途中で自由を手にしたこともあったがそれも長続きしなかった。アウンサン・スー・チーを南アフリカの政治指導者ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)と比べる人がいるがそれは正しいだろう。しかし、マンデラの場合は、その当時の南アフリカの政治指導者F・W・デクラーク大統領の存在が必要だった。デクラークは内部からの漸進的な改革を行った。勇敢で、意識の高い人々は世界中で不正義と戦っている。しかし、そうした人々の熱望と敵対していた政権が重なるなどということは歴史上稀なことだった。

 私たちはミャンマーを訪問し、多くの指導者と会談した。こうした会談を通じて、私たちは、テイン・セイン大統領が民主政体への意向を着実に進めているという確信を得た。しかし、彼の改革の努力が実を結ぶかどうかははっきりしない。ミャンマーで起こっていることは、ここ2年の間に中東で起きた革命ではない。ミャンマーで起きていることは、良く計算され、抑制のきいたプロセスである。国内からの改革運動なのである。
ビルマ政府の統治能力が確立されるまで改革をゆっくりと慎重に進める必要がある。そして、変化を邪魔しようとする人々にそういう活動をさせないことも重要だ。また、ミャンマーの支配階級が政治をコントロールし、豊富な天然資源を好きなように処分するようなこともさせてはならない。一方で、改革の成果を人々が少しでも早く実感できるように、改革のスピードを上げる必要もある。ミャンマーの改革の成功は、外国の関与と投資にかかっている。

 もしミャンマーの人々が民主政体と改革の成果を実感できなければ、改革は失敗に終わるだろう。

 アウンサン・スー・チー自身が率直に認めているように、改革のプロセスは後戻りできないが、そのプロセスには多くの困難が存在する。

 第一に、ミャンマー国民の大多数が貧困に喘いでいる。彼らの生活を改善することは、ミャンマーの全てのセクターの関心事である。現政府、直接選挙を通じて選ばれることになる将来の政府、アウンサン・スー・チー率いる国民民主連盟(National League for Democracy)を含む野党勢力、ミャンマー市場の成長を期待している財界などにとって、貧困に喘ぐ人々の生活水準の向上は重要である。しかし、雇用創出と経済成長は、ビルマ社会の全てのセクターと国際社会による努力が不可欠となる。

 アウンサン・スー・チーが述べているように、小規模農業や労働集約型産業のような人々の生活に直接かかわる分野への投資が最優先になる。ミャンマーは井戸や発電といった基本的なインフラへの投資を必要としている。更に言えば、国境地帯での紛争をへいわてきに解決することも不可欠である。ミャンマー国内の少数民族が自分たちが仲間外れにされていると感じた時、改革は不成功に終わるだろう。

 第二に、現在のミャンマー政府は適切な統治をいかに行うかについて基本的な能力と知識を持っていない。最近まで数十年間にわたり、独裁政治が行われ、行政、立法、司法の各部門は国民に対して適切なサービスを提供する能力が低い。素晴らしいニュースを皆さんにお伝えできるのだが、こうした部門の人々は良い統治のための基準と手続きを学ぶ意欲にあふれている。こうした基準や手続きには、法案や予算案の作成、国民との接触、政党間をうまく調整すること、財界とうまく付き合うことなどが含まれる。機能的な政府に必要な要素は現在のところ、残念ながら欠けている。例えば、国会議員には誰ひとりスタッフがついていない状況だ。

 民主政体樹立を専門にしているアメリカの諸組織は、これまではミャンマーにおける民主化の可能性についての研究ばかりしていたが、これからは実際の事業を行う時期となる。ミャンマーの立法、行政、司法の各部門、そして政党の人々の訓練は急務となっている。

 第三に、アメリカはミャンマーを戦略上の重要だと考えていない。その結果、ミャンマーの改革の成功に必要な道具を緊急的に使用すると言うところまで至っていない。経済制裁は公式的に停止された。しかし、実際には多くの面でその効果は持続している。国務省は、エンタープライズ・ファンドという組織を発足させ、エジプトやチュニジアと言った国々への資金提供を行っている。ミャンマーのその資金提供を受けることができるはずだ。この資金提供を受けることができれば、ビルマはアメリカのビジネス基準を採用することができ、アメリカの民間部門のミャンマーへの投資を促進することが可能だ。

 アメリカが手をこまねいていれば、中国が出し抜くことになる。そうなれば、経済的なチャンスと、自由化と民主政体の樹立に向けた進歩に影響を与える機会を失ってしまう。

 現在はミャンマーにとってとても特異な時期である。ミャンマーとアメリカは長年相いれない関係であった。しかし、現在、自由化と民主化のプロセスを進めたいという点で考えが一致している。投獄をされてしまった人々が彼らを投獄した人々を、平和、安定、進歩のために、信頼し、協力することを望んでいる。私たちは彼らの声を聴き、彼らの努力をすぐに認める必要がある。

 現在、北朝鮮のような国々はアメリカの経済制裁を受けている。アメリカは、こうした国々に対して、改革と協力からどれほどの利益を受けるかを示すべきである。私たちにとって、ミャンマーはその格好の具体例となるようにしなければならない。

※ビル・リチャードソン:元国連大使、元エネルギー省長官、元ニューメキシコ州知事。
※ミッキー・バーグマン:リチャードソン・センター・フォー・グローバル・エンゲイジメント上級顧問。アスペン研究所グローバルアライアンスプログラム上級部長。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


by Hfurumura | 2012-11-15 23:09 | アメリカ政治
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