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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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ヘリテージ財団の日本政治論:シナリオはできていた?①

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



アメリカは日本の政治の変化を利用して同盟を深化させるべきだ(U.S. Should Use Japanese Political Change to Advance the Alliance)

ブルース・クリングナー(Bruce Klingner)筆
ヘリテージ財団(Heritage Foundation)ウェブサイト
2012年11月14日
http://www.heritage.org/research/reports/2012/11/us-should-use-japanese-political-change-to-advance-the-alliance

要約:2012年12月16日、日本国民は、日本の政治状況を再び変えるための機会を持つ。多くの有権者にとってこのような変革は3年前にも見たものである。この時は、民主党が選挙に大勝し、政権を獲得した。選挙公約を実現できず、改革を現実のものとすることができなかった。その結果、日本国民の政治の変革を求める熱望は満足させられないままの状態にある。核世論調査の結果を見てみると、保守の自民党が再び衆議院で過半数を占め、安倍晋三元首相が次の日本の首相になると予想される。安倍氏の保守的な外交政策に対する考えと日本国民の間で中国に対する懸念が増大していることは、アメリカ政府にとって素晴らしい機会を提供することになる。アメリカ政府は、この機会を利用して、日米同盟の健全性にとって重要な政策目的を達成することができる。

●重要なポイント(Key Points)
1.2009年の総選挙は、日本政治におけるリーダーシップの在り方を変えてきた。しかし、民主党は選挙公約を実行できず、改革を現実のものとすることができなかった。その結果、日本の一般国民の政治を変革したいという熱意は存在しているものの、どの政党にも信頼を置いていない。

2.日本の次のリーダーたちは、いくつかの厳しい挑戦に直面することになる。それらは、停滞する経済、増大していく公債、高齢化していく人口、中国と北朝鮮からの安全保障上の脅威、国際社会における影響力の低下である。

3.中国は日本に地政学上の攻勢をかけている。この結果、日本全土でナショナリズムが高揚している。そして、日本の政治状況と来たる選挙の結果を変えることになる。

4.各種世論調査の結果から、次の総選挙では、保守の自民党が衆議院で再び過半数を占め、安倍晋三元首相が日本の次期総理になることが予想される。

5.安倍氏の保守的な外交政策に対する考えと日本国民の間で中国に対する懸念が増大していることは、アメリカ政府にとって素晴らしい機会を提供することになる。アメリカ政府は、この機会を利用して、日米同盟の健全性にとって重要な政策目的を達成することができる。

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 3年前、民主党は総選挙に大勝し、政権を獲得した。民主党の大勝は、自由民主党による50年に及ぶ支配によって作り出された政治の停滞に対して人々の怒りがうねりになったことによるものだった。しかし、高揚感はすぐに消え去った。財政の現実に直面し、民主党は、非現実的な経済に関する公約を破棄することになった。そして、中国と北朝鮮からの脅威に対応することで、民主党は現実離れした外交政策を転換せざるを得なくなった。アマチュアリズムが蔓延し、多くのスキャンダルに見舞われ、民主党は政治的に自民党同様、機能不全に陥り、短期間で首相を次々と変えるようになってしまった。民主党政権初の首相、鳩山由紀夫は1年も持たずに辞任し、二人目の菅直人もわずか15か月、首相の地位に留まっただけだった。有権者たちは民主党支持から態度を変え、参議院では、それ以前の選挙では信頼しなかった自民党が参議院をコントロールできるだけの議席を与えた。

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 公約を実現できなかった結果、民主党は次の選挙で衆議院の過半数を失い、政権を手放すことになるのはほぼ確実だ。選挙の正確な日時ははっきりしていないが、遅くとも2013年の8月の終わりまでには実施される。野田佳彦首相は、選挙の日時を設定することをできるだけ避けようとするだろう。それは瀕死の状態にある今の民主党を何とかして立ち直らせようとするからだ。このような引き延ばしに対して、自民党は早期の解散総選挙をさせるために国会審議を停滞させると脅しをかけている。

 各種世論調査の結果によると、次期総選挙では、保守の自民党が過半数を獲得し、自民党総裁で元首相の安倍晋三が日本の次の首相に選ばれる可能性が高い。安倍氏は、外交政策について保守的な考えを持っている。そして、日本国民は中国への懸念を早大させている。こうしたことは、アメリカにとって絶好の機会となる。アメリカは、こうした状況を利用して、日米同盟の健全性にとって重要な政策目標を達成することができる。

 アメリカ政府は、これまで長い間、日本に対して、自国の防衛でより大きな役割を果たすこと、そして防衛力と経済力に見合った海外での安全保障の責任を引き受けるように強く求めてきた。日本が防衛予算を増大させ、集団的自衛権を行使し、海外での非岩維持活動における武器使用についての厳格なルールを緩め、沖縄の普天間基地移設問題で辺野古に代替施設を建設することは、アメリカにとって利益となる。

●日本の有権者は今でも政治指導者を追い求めている(Japanese Electorate Still Longing for Leadership)

 2009年の総選挙は日本の政治状況を変化させたが、民主党は公約を実行して、改革を実現することができなかった。その結果、日本国民の政治の転換に対する熱望は残ったままになり、政党に対する不信感が残った。世論調査などを行っても、「支持政党なし」「支持する候補者なし」という答えが多くなっている。このような政治不信は、日本政治に空白を生み出し、そこに大阪市長の橋下徹が登場し、日本維新の会(Japan Restoration Party、JRP)を結成した。

 民主党について。漫画のキャラクターであるワイリー・コヨーテのように、中空に浮かんでいるような状況である。そして今にも真っ逆さまに落ちてしまいまそうになっている。そうした中、野田佳彦首相は、これから苦境に向かうであろう党を率いている。民主党はある程度の勢力を維持するだろうが、ワイリー・コヨーテのように、大きな間違いであったことが証明された基本プランに縛られてフラフラすることだろう。

 2010年に尖閣諸島を巡り中国と対峙して、民主党は選挙期間中に訴えていた、外交政策、安全保障政策に関する公約を放棄した。例えば、民主党は、日米同盟を批判しなくなった。また中国との関係を深め、アメリカ抜きの東アジア共同体を構築するという主張も放棄した。また現在普天間にあるアメリカ海兵隊の航空基地を沖縄県外に移設するということも言わなくなった。民主党は事実上、ライバルである自民党の外交政策を踏襲したことになる。

 民主党の経済政策についての公約もまた同じような運命をたどった。例えば、2009年の選挙戦で、民主党は高齢者に対して年金と医療費の増額を約束した。そして、2009年から4年間はいかなる増税も行わないと主張した。しかし、選挙に大勝した後、民主党は公約を放棄した。2011年、野田首相は、消費税を現行の5%から10%に倍増させるということを提案した。野田首相はまた、税収の増加分は全てトラブルが頻発している社会保障システムの安定のために使い、政府の規模を大きくしないということも約束した。

 しかし、人々の人気が低い消費税増税を強行したことで、野田首相は、政治的に見て、民主党の墓堀人になったと言える。民主党所属の川内博史代議士は次のように語っている。「自民党政権下での年金と健康保険に対する一般国民の不信と、私たちが国民とした約束によって、私たちは政権を取ることができました。しかし、現在の民主党は昔の自民党と同じになっているのです」

 有権者からの支持が減り続けていることに加え、民主党は政治家の離党が相次いでいることにも苦しんでいる。これまでに70名以上の政治家たちが民主党を離れていった。彼らは、消費税増税や大飯原発の再稼働についての野田総理の決定と自分たちの考えが異なるとして離党していった。

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 野田佳彦首相について。驚くほど大胆で有能な政治家である。野田首相のじり貧の支持率は皮肉なものである。野田首相の支持率が下落したのは、彼が日本政治において異例な存在であることを示して以降である。野田首相は、勇気を持って実際に日本をリードしている政治指導者である。野田首相は、自民党と民主党から出た前任者5名に比べてかなり有能である。

 野田首相の業績は、彼が2011年3月に起きた地震、津波、原発事故の三重苦のすぐ後だったことを考えると、大変に印象的である。日本国民は更なる原発事故への恐怖から、日本の全原発の稼働をストップした。原発は日本の電力の30%を供給してきた。

 野田首相は、期待されていたよりも、かなり政治的に熟練していた。例えば、2012年初め、日本のメディアは、野田首相はすぐに政治的に無力化してしまうと予想していた。しかし、野田首相は、野党や民主党内部の反対者の裏をかき、議論が紛糾していた法律案を成立させた。更には、民主党内部や議事進行を妨害してまでする野党の反対がありながら、野田首相は消費税増税の承認を勝ち取った。野田首相は、日本が長い間堅持してきた武器輸出三原則を緩和し、アメリカ政府を説得し、二国間防衛に関する同意を変更した。その際、アメリカは海兵隊普天間基地の代替施設建設が。沖縄にある5つの米軍基地の返還の条件であると主張していたが、この2つを切り離すことができた。

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 小沢一郎について。小沢は人気のないポピュリストである。日本政治の未来についての議論がある時、その名前が出なくなってしまったのが(これは驚きである)、民主党元代表で、キングメイカーとして知られる小沢一郎である。小沢氏は、「壊し屋」としても知られている。小沢氏はこれまで長い間、いくつもの政党や政策を投げ棄て、選挙での勝利の可能性を高めるということを繰り返してきた。実際、小沢氏の首尾一貫して持つイデオロギーは、その時その時の有権者に最も受けが良い考えを強く信じるということだけである。

 しかし、選挙に影響を与えることができるという能力を持つことで小沢氏は人気を保ってきた。しかし、小沢氏の人気も徐々に落ちている。現在、彼の政党には49名の国会議員が所属しているが、その多くが一回生の軽量級の議員である。そして、次の総選挙では落選すると予想されている。小沢氏はお金と影響力を確保しようとして東奔西走している。小沢が新しく立ち上げた「国民の生活が第一」は、次の選挙で恐らく10議席程度しか確保できないであろう。

(つづく)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


by Hfurumura | 2012-11-28 12:36 | 日本政治
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