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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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ブレジンスキーからオバマ大統領に与える書:フォーリン・ポリシー誌から

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



オバマの輝くとき:大統領はどのようにして外交政策のイニシアチブをその手に取り戻すか(Obama's Moment: How the president can seize back the initiative on foreign policy.)

ブレジンスキーからオバマ大統領に与える書:フォーリン・ポリシー誌から_c0196137_12453967.jpg


ズビグニュー・ブレジンスキー(Zbigniew Brzenzinski)筆
フォーリン・ポリシー誌(Foreign Policy)
2012年12月3日
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/12/03/obamas_moment

 外交分野には多くの問題がある。その中で、バラク・オバマ大統領が現在直面しているのは、ここ数年のアメリカの国家安全保障政策を作るうえで、失った基盤(ground)をどのように取り戻すかというものだ。歴史的に、また政治的に見て、アメリカの権力分立システムの中で、大統領は、外交問題において決定的な役割を演じるための大きな行動の自由を持っている。大統領は、不安定さを増していく世界においてアメリカの安全を確保するための責任を負っているとアメリカ国民は考えている。大統領は、アメリカが追い求めるべき目標の最終的な決定者だとも考えられている。アメリカは目的の達成のために、外交、経済力、そして必要であれば軍事力による強制も使用する。そして、世界は、良きにつけ悪しきにつけ、アメリカ大統領をアメリカを真に代表し、その主張を伝える人だと考えている。

 確かに、アメリカ大統領は独裁者ではない。アメリカ議会もまた重要な役割と主張を行う機能を持っている。もちろん、一般国民も主張を行える。また、既得権益を持つ個人や組織、そして外交政策に関するロビー団体も主張を行える。アメリカ議会は他国に宣戦布告をするという役割を持っており、これは大変重要だ。連邦上院が宣戦布告を行う役割を果たすことは、アメリカが攻撃の被害者になった時に重要なのではなく、アメリカが海外での戦争を計画している時に重要なのだ。なぜならアメリカは民主政治体制の国であり、大統領の外交政策決定に対する国民からの支持は必要不可欠なものだからだ。しかし、政府の内外で、大統領がアメリカのために話し、決定的な行動を取る際の、大統領の持つ権威に適う力を持つ人物など存在しない。

 これは、大統領に対する強力な反対勢力がいても、そうなのだ。いくつかのロビー団体が、ある外国の顧客のために議会内で支持を拡大させることに成功したとする。このロビー団体の求めることは、大統領の考えに反するとする。それでも大統領が「国益(national interest)」のために行動しているのが明白な時、議会の多くの決定や承認は、議会は大統領を支持する用意があるという決意と共にホワイトハウスに送られる。(訳者註:議会を通過した法案や決定は、大統領が署名することで最終的に成立する)大統領が国益のために行動することを一般国民に示すことで、連邦議会の議員には政治技術に長けた人や大統領の同盟者のような人たちがいる。彼らは、一般国民から支持を得ている大統領と対立することは政治的に賢い選択ではないということで、大統領への信頼を醸成することになる。一般国民が議員たちにある種の恐怖感を与えることになる。こうしたことをオバマ大統領は今すぐにやるべきなのだ。

ブレジンスキーからオバマ大統領に与える書:フォーリン・ポリシー誌から_c0196137_12463542.jpg


 ある行動が大統領の立場を強化することにつながる。それは、超党派の支持を得られる国務長官を指名することだ。現在のアメリカの政治状況は党派対立が激しい。そうした状況下、オバマ大統領は、外交政策について穏健な考えを持っている共和党員を国務長官に指名することで、大きな影響力を獲得できる。もちろん、オバマ大統領は民主党員から国務長官を選ぶこともできる。その時には、議会の民主、共和両党の議員たちからの尊敬を得られる人物を選ぶことが重要だ。

 オバマ大統領は新しいチームを結成しようとする前に、オバマ政権二期目の政策課題(agenda)について慎重に、深く考慮する必要がある。一期目について考え、何を二期目で新しくしたいかをまず考えるべきだ。その際、何をしないかということは、何をするかということと同じくらいに重要だ。大統領が世界の指導者として認識されたいと熱望するなら、一つの外交政策の目標にばかりこだわらず、その目標達成に全身全霊を傾けるのではなく、激しい反対を生み出すような状況を作り出すようなことをしてはならない。

 オバマ大統領は、敵対するウラジミール・プーチン、劇的に勃興している中国の自信たっぷりのリーダーシップ、巧みな言い逃れを続けているイラン、イスラエル・パレスチナ間の「和平プロセス」といった諸問題を抱えている。こうした問題に対処するにあたり重要なことは、オバマ大統領の成功は、外交問題に深く、そして真剣に関与していると人々に思わせる度合いにかかっている。参画することと信頼は両方が揃って、お互いを高めていくものだ。

 イスラエル・パレスチナ問題について考えてみる。過去3名のアメリカ大統領がこの問題に取り組んだが、アメリカの政策は真剣さと熱意にかけ、ただ単に皮相的であった。先日、国連では、パレスチナが国家(オブザーバー資格が与えられるか)として認められるかどうかの投票が行われた。アメリカはこの投票では反対の立場を取っていて、その主張を通そうとして投票まで努力を続けたが、反対票は、188の有効投票数のわずか8票でしかなかった。これは、アメリカに対する世界各国の尊敬がどん底の状態になっていることを示している。世界各国は、アメリカには、道徳的な点で問題になっているものを処理する能力に欠けていると考えるようになっている。

 そして長期的に見れば、アメリカ自身が世界の問題となるとも考えているのだ。世界各国のアメリカに対する考えは、アメリカ国内で外交問題については超党派で対処するという伝統が失われつつあり、また各ロビー組織の影響力が大きくなっていることが投影されている。従って、外交政策と国家安全保障に関しては、アメリカ大統領の積極的なリーダーシップが必要になっているのだ。

 解決が困難な外交政策の諸問題に対処する際、大統領は2回の大きな機会に恵まれることになる。最初の機会は、政権発足1年目に訪れる。それは、政権担当期間は4年間であるが、できるだけ早い成功は、大きな政治的コストに直面しないうちにそれを達成することができるのだ。。大統領が再選された場合、二回目の機会は、二期目の1年目に訪れる。それは、大統領は次の選挙はないので(訳者註:アメリカ大統領は3期目に立候補できない)、有権者を気にせず、歴史に評価を気にすることになるからだ。オバマ大統領は、アメリカが国際社会において直面している問題について、よく把握している。彼は頭の良い大統領である。そして、この問題をどう対処するかで後世の歴史家たちはオバマ大統領がどのような大統領だったか判断するだろう。二期目の1年目こそ、オバマ大統領にとってより良い機会となる。

※ズビグニュー・ブレジンスキー:ジミー・カーター大統領国家安全保障担当補佐官。最新作に『戦略ビジョン:アメリカと世界の大国の危機(Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power)』がある。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


by Hfurumura | 2012-12-05 12:47 | アメリカ政治
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