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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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安倍政権の「価値観外交」とオバマ政権のPivot to Asia

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社



 安倍晋三首相が国会で総理大臣に指名され、安倍内閣が発足しました。安倍政権は、来年(2013年)7月の参議院議員選挙までは、経済に力を入れていくという観測が流れています。しかし、外交で何もしないということはありません。早速、外交についての基本的な方針が示され、行動が起こされています。まずは以下に貼り付けた新聞記事をご覧ください。

安倍政権の「価値観外交」とオバマ政権のPivot to Asia_c0196137_23495283.png


(貼り付けはじめ)

●「首相、日米軸に「価値観外交」…アジア連携重視」
読売新聞電子版 2012年12月29日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20121229-OYT1T00441.htm

 安倍首相が読売新聞との単独インタビューで語った外交方針は、第1次安倍内閣(2006年9月~07年9月)当時に掲げた「価値観外交」を、厳しさを増す安全保障環境に応じてさらに発展させるものだ。

 首相は国益重視の立場から、民主党政権で揺らいだ外交を早急に立て直す考えだ。

 「自由、民主主義、基本的人権。こうした価値観を共有する国との関係を深め、価値を広げていく。この理念に変わりはない」

 首相は28日のインタビューでこう語り、インドや豪州など価値観を共有する国と連携を強化する価値観外交の推進を強調した。

 さらに「アジア情勢が緊迫している。北朝鮮のミサイル、中国の海洋での振る舞いがある」とし、北朝鮮の問題に加え、沖縄県の尖閣諸島を巡る問題など中国の挑発的行動に懸念を表明。「2国間関係だけをみるのではなく、地球儀全体を俯瞰ふかんしながら戦略を考えるべきだ」と指摘した。

安倍政権の「価値観外交」とオバマ政権のPivot to Asia_c0196137_23453667.png


 首相は言葉通り、28日には豪印露、インドネシア、ベトナムなどの首脳と相次いで電話で会談。首相周辺は「これらの地域の大国を結ぶと、中国をすっぽりと取り囲む形になる」と解説する。「中国包囲網」を連想させることで、中国に外交的な圧力をかける狙いもあったようだ。

 第1次安倍内閣では、東南アジアや中央アジアなどの民主主義国を支援する「自由と繁栄の弧」構想をもとに価値観外交を推進し、アフガニスタンなどの地域の安定化や、日本としての資源の確保を目指した。首相側近は当時と比較して、「軍事力を増す中国が南シナ海や東シナ海で挑発行為を繰り返して地域の不安定要因となっている点が大きく違う。沖縄県の尖閣諸島を巡る問題で日中も緊張関係にある」と指摘。この間、民主党の鳩山政権が「東アジア共同体」構想を唱え、日米同盟やアジア外交を迷走させたこともあり、対中戦略を重視した外交の立て直しが急務だとしている。

安倍政権の「価値観外交」とオバマ政権のPivot to Asia_c0196137_23461666.png


 首相は価値観外交で日本の外交基盤を強めたうえで、中国との間で互いに共存共栄を図る「戦略的互恵関係」を追求し、日中関係の改善を図りたい意向だ。

 さらに、ロシアやインド、ベトナムなどとの関係強化は、経済的な利益につながる可能性が高い。資源の確保や高い技術を持つ日本のインフラなどの輸出先として期待できる点も重視しているとみられる。(2012年12月29日16時02分 読売新聞)


●「麻生氏、年明けにミャンマー訪問 大統領と会談」
共同通信 2012年12月29日
http://www.47news.jp/CN/201212/CN2012122801001995.html

 麻生太郎副総理兼財務相が1月2日からミャンマーを訪問することが28日、分かった。3日にテイン・セイン大統領と首都ネピドーで会談する。経済発展が著しいミャンマーとの関係を強化、日本企業の進出を後押しする。安倍新政権の外交が本格的にスタートする。

 麻生氏はウィン・シェイン財務・歳入相との会談も調整している。4日に最大都市ヤンゴン近郊の「ティラワ経済特区」を視察し、地元企業や日系企業と意見交換する。第2次世界大戦の戦没者が埋葬されている日本人墓地も訪問する予定。5日に帰国する。

2012/12/29 00:18 【共同通信】

(貼り付け終わり)

 安倍政権の外交は、「価値観外交」を基本にするということです。この価値観外交とは、「自由、民主主義、基本的人権」を重要な原理としている各国と外交的な連携を深め、これらの価値を原理としない国々、具体的には、中国と北朝鮮と対峙する、これらを封じ込める(containment)というものです。読売新聞の地図に引かれた線が中国を封じ込める線ということになります。また、こうした封じ込めのラインを作るために、安倍総理は、「豪印露、インドネシア、ベトナムなどの首脳と相次いで電話で会談」し、麻生副総理は、新年早々、ミャンマーを訪問し、テイン・セイン大統領と会談をすることになっています。安倍政権は、アジア諸国と連携して、勃興する中国に対応するという道を選ぶ、そのために、アジア諸国と中国を封じ込めるための線を構築するということを外交の基本とするということになりそうです。

 これは、2011年9月にヒラリー・クリントン国務長官が外交誌『フォーリン・ポリシー誌』に掲載した、「アメリカの太平洋の世紀(America’s Pacific Century)」というタイトルの論文で示された「Pivot to Asia」というアメリカ外交の戦略に合致するものです。(ヒラリー・クリントン国務長官の論文の内容については以下のアドレスのウェブサイトを参考になさってください→http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/ronbun.html)

 ヒラリー・クリントン国務長官の論文は、アメリカがアジアに回帰するということの宣言文です。論文の中で、クリントン国務長官は「これからの10年、私たちは、限られた時間とエネルギーを、賢く、体系的に使う必要がある。これからの10年、私たちアメリカは、指導的地位を確保、維持し、国益を確保し、私たちの持つ価値観を世界に拡散するために最も有利なポジションを取らねばならない。より具体的に言うと、次の10年のアメリカの国政にとって最も重要な目標の一つは、アジア・太平洋地域に対して、外交、経済、戦略などの面で投資を確実に増やす、ということになる」と書いています。

安倍政権の「価値観外交」とオバマ政権のPivot to Asia_c0196137_2347638.jpg


 そして、ヒラリー・クリントン国務長官は、アメリカは中国との関係を深化させながら、同時に人権問題や安全保障問題で中国と対決していくということも明らかにしています。米中関係は、難しいものとなっています。経済的に言えば、両国の依存関係はどんどん大きくなっています。しかし、同時に中国の勃興に対してアメリカは警戒感を持っています。

 米中関係は大変に複雑です。単純に「仲が良い」「仲が悪い」と割り切ることはできません。それが国際政治と言えばそうなのですが、分かりにくいことになります。アメリカとソ連はイデオロギーという分かりやすい点で対立し、世界はそのどちらかに就くかを選ぶだけで済みました。しかし、米中関係はそう簡単に割り切れるものではありません。米中は対立しているようでもありながら、世界第一、第二の経済大国として協力しているようでもあります。

 米中関係がどうなるのかは、「価値観外交」を掲げる安倍政権率いる日本にとっても重要です。日本もまた中国への輸出でご飯を食べている現状です。ですから、中国と対立することはまだしも、決定的に関係を悪くして、経済関係に悪影響を及ぼすことは避けねばなりません。「武士は食わねど高楊枝」は精神としては素晴らしいですが、現実としては不可能な話です。人間ですからご飯を食べなければなりません。

 安倍政権は中国を取り囲む周辺近隣諸国との関係を深め、その外交関係を持って、「中国を封じ込める力を持ち」ながら、中国との関係を改善したいと言っています。しかし、そのような敵対的な態度で、中国との関係を改善することはできるのでしょうか。「お前をやっつける力があるからお前と仲良くしてやる」と言っているようなものです。また、註号を封じ込めるための基礎となるアジア諸国との関係ですが、これらの国々は都合が良い時にはどちらにもつくものであり(それが国益というものです)、「価値観が同じだから日本と協力して中国と対峙しよう」と常に考えてくれるわけではありません。

 それなのに、どうして「価値観外交」なのでしょうか。それは、日本がアメリカの「下請け」をやらされているからです。アメリカと中国との関係は複雑だと先ほど書きました。しかし、アメリカは中国との関係を悪化させ、特に重要な経済面での協力関係を悪化させることはできません。しかし、中国の勃興は何とかしたいというジレンマに陥っています。

安倍政権の「価値観外交」とオバマ政権のPivot to Asia_c0196137_2348625.jpg


 そこで登場してくるのが日本です。アメリカは、経済的な果実は手にしながら、中国の勃興の阻止、もしくは嫌がらせは日本にやってもらおうとしているのです。最近、日米関係に関する論稿で、日本側の「負担の分担(burden sharing)」を期待する、という文言をよく目にします。そのために、日本政府が(日本国憲法の第9条を基にして)政府見解として認めていない集団的自衛権を認めさせて、自衛隊を米軍の「下請け」にして、日本の領空、領海以外でも活動ができるよう、アメリカは求めています。最悪の場合、アメリカの代理で、中国と戦火を交えるということがかなり現実的になってきています。

 他国は、そのような状況になった時、「価値観外交」で日本と外交関係が深まったからと言って、一緒になって戦ってくれるとは限りません。日本だけで戦い、日中両国だけが疲弊すればいいや、そしたらまたアメリカに頼ればいいやということで、何もしてくれないことは十分にあり得ます。
 
 また、アメリカは、中国との経済関係を維持しつつ、中国の勃興を遅らせることができたら良い訳ですから、「適度な」「軽い(米軍が出動しなくても良い程度の)」日中の軍事衝突は受け入れることができます。

 安倍政権の「価値観外交」がこのようなシナリオも含んでいることを考えながら、これから、2013年の日本外交の行方を見ていくことも重要なのだろうと私は考えます。

(終わり)

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所


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