翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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覇権国を巡る国際関係論の学説を基にして考える。

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



今回は、覇権国(hegemonic state、ヘゲモニック・ステイト)について考えてみたい。副島隆彦先生の本を読まれている皆さんには「世界覇権国」という言葉はお馴染みだ。これは現在で言えばアメリカのことを指す。歴史的に見ればスペイン(17世紀)、オランダ(18世紀)、イギリス(19世紀)、アメリカ(20世紀)の各国がそれぞれ歴史の一時期に覇権国として君臨してきた。日本は第二次世界大戦でドイツと共に新旧の覇権国であるアメリカとイギリスに挑戦して敗れ、戦後、アメリカの従属国(tributary state、トリビュータリーステイト)になったというのが世界的な認識である。

覇権国と覇権(hegemony、ヘゲモニー)というのは政治学(Political Science)、特に国際関係論(International Relations)で使われる概念だ。簡単に言うと、「他からの挑戦を退けるほどの、もしくは挑戦しようという気を起こさせないほどの圧倒的な力を持つこと」が覇権である。国際関係論で言えば、圧倒的な外交力と軍事力と経済力を持ち、他国を従わせることのできる国のことを覇権国と呼ぶ。現在の覇権国は言うまでもなくアメリカである。歴史上、覇権国は交代してきたが、アメリカの次は中国が覇権国なるという見方も出てきている。これまでの歴史を考えると覇権国の地位はある程度の期間で交代しており、アメリカが永久に覇権国であるとは言えない。

 現在のアメリカは景気が低迷し、巨大な軍事力を持つ負担に耐えられなくなっている。アメリカは巨額の国債を発行し、中国や日本、サウジアラビアが買い支えている。他国のお金で巨大な軍事力を維持しているのはおかしな話だ。「アメリカの軍事力があるから世界の平和は保たれているのだ。だからその分のお金を払っていると思えば良いのだ」という主張もある。しかし、他国のお金頼みというのは不安定なものだ。国債を買ってもらえなくなればお金が入ってこなくなる。そんなことになれば世界経済は一気に崩壊するから、あり得ないことだという意見もあるが、不安定な状況であることは間違いない。

 現在、アメリカの政府機関は閉鎖状態にある。これは、アメリカ連邦議会が2013―2014年度の連邦予算を可決していないためである。現在、アメリカ連邦上院は、民主党(Democrats)が過半数を占め、一方、連邦下院は共和党(Republicans)が過半数を占めている。日本風に言えば、「ねじれ国会」の状態にある。民主党側と共和党の一部は予算を通したいのだが、共和党の中にいるティーパーティー系の議員たちがオバマ大統領の推進した健康保険政策(オバマケア)の廃止を目論んで、民主党と対立している。また、上院と下院の間でも対立が起きている。これに加えて、アメリカ国債の上限問題も再燃し、2013年10月17日までに予算の執行と国債の上限が引き上げられないと、アメリカは国債の償還に応じられない、デフォルトに陥ってしまう。こうなると、アメリカ発の世界規模での景気後退が発生してしまう懸念もある。このように、アメリカの覇権国としての地位も危ういものであることが今回露呈された。

ここからは、国際関係論の分野に存在する覇権に関する理論のいくつかを紹介する。これまで国際関係論という学問の世界で覇権についてどういうことが語られてきたのかを簡単に紹介する。私の考えでは、国際関係論で扱われる覇権に関する理論は現実追認の、「アメリカはやってきていることは正しい」と言うためのものでしかない。それでもどういうことを言っているかを知って、それに対して突っ込みを入れることは現実の世界を考える際に一つの手助けになると私は考える。

まずは覇権安定論(Hegemonic Stability Theory)という有名な理論がある。これは、覇権国が存在すると、国際システムが安定するという理論である。覇権国は外交、強制力、説得などを通じてリーダーシップを行使する。このとき覇権国は他国に対して「パワーの優位性」を行使しているのである。そして、自分に都合の良い国際システムを構築し、ルールを制定する。このようにして覇権国が構築した国際システムやルールに他国は従わざるを得ない。従わない国々は覇権国によって矯正を加えられるか、国際関係から疎外されて生存自体が困難になる。その結果、安定的な国際システムは安定する。

ロバート・コヘイン(Robert Keohane)という学者がいる。コヘインはネオリベラリズム(Neoliberalism)という国際関係論の学派の大物の一人である。ネオリベラリズムとは、国際関係においては国家以上の上位機関が存在しないので、無秩序に陥り、各国家は国益追求を図るという前提で、各国家は協調(cooperation)が国益追求に最適であることを認識し、国際機関などを通じて国際協調に進むという考え方をする学派である。

コヘインが活躍した1970年代、アメリカの衰退(U.S. Decline)が真剣に議論されていた。そして、コヘインは、覇権国アメリカ自体が衰退しても、アメリカが作り上げた国際システムは、その有用性のために、つまり他の国々にとって便利であるために存続すると主張している。コヘインは、一種の多頭指導制が出現し、そこでは、二極間の抑止や一極による覇権ではなく、先進多極間の機能的な協調(cooperation)が決定的な役割を果たすだろうと書いている(機能主義)。

ロバート・ギルピン(Robert Gilpin)は、1981年にWar and Change in World Politics(『世界政治における戦争と変化』、未邦訳)という著作を発表した。リアリズムの立場から、国際政治におけるシステムの変化と軍事及び経済との関係を理論化した名著だ。本書は国際関係論の古典の一つともなっている。ギルピンは、覇権安定論(hegemonic stability theory)の唱道者の一人である。覇権安定論は、ある国家が覇権国として存在するとき、国際システムは安定するという考え方である。しかし、ギルピンは『世界政治における戦争と変化』のなかで、覇権国の交代について考察している。

本書の要旨は次の通りである。歴史上国際システムが次から次へと変わってきたのは、各大国間で経済力、政治力、社会の持つ力の発展のペースが異なり(uneven growth)、その結果、一つの国際システムの中で保たれていた均衡(equilibrium)が崩れることになる。台頭しつつある国が自分に都合がいい国際システムを築き上げるために、現在の国際システムを築き上げた覇権国と覇権をめぐる戦争(hegemonic war)を戦ってきた。台頭しつつある国が勝利した場合、その国が新たに覇権国となり、自分に都合の良い国際システムを構築する。逆に現在の覇権国が勝利した場合、そのままの国際システムが継続する。

現在、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)という各新興大国の経済発展はすさまじい勢いである。先進国である欧米、日本の経済成長はほとんどなきが如しであり、日本のGDPは中国に既に抜かれた。現在世界最大のGDPを誇るアメリカも10年から20年以内に中国に抜かれてしまうという予測もある。ギルピンの理論は、世界各国の不均衡な発展は覇権戦争を導くとしている。理論通りになると、アメリカが既存の覇権国で挑戦を受ける側、中国が新興大国で覇権国に挑戦する側になって戦争が起きるということが予測される。このギルピンの理論は歴史研究から生み出された理論である。スペインが打ち立てた覇権をオランダが奪い、オランダに移った覇権をイギリスが奪取するが、やがてアメリカに奪われるという歴史を踏まえての理論である。

それでは、未来のある時点でアメリカと中国が覇権をめぐって戦争するかと問われると、「ここ数年以内という直近の間では戦争はない」と私は考える。こう考えるにはいくつかの理由がある。第二次世界大戦での日本とドイツ、冷戦でのソ連とアメリカの覇権に挑戦して失敗した国々を見ていれば、「戦争をして覇権を奪取する」と言うのは危険を伴うということは分かる。だから中国の立場からすると戦争をするのは慎重にならざるを得ない。米中それぞれの軍人たちはスポーツ選手が試合をしたくてうずうずしているように「戦争をしてみたい、手合わせをしてみたい」と思っているだろう。しかし、政治指導者たちはそんな危険な賭けをすることはない。

また中国は、アメリカの覇権下で急激な経済成長をしてきたのだから、今のままの環境が維持されるほうが良い。アメリカとの貿易がこれからもどんどん続けられ、輸出ができればそれで良い。アメリカが不況で輸入が鈍化すると中国も困る。だから輸出先を多く確保しておくことは重要だが、アメリカがこのまま世界一の超大国であることは現在の中国にとっても利益となることである。ギルピンの理論では自国にとって不利なルールが嫌になって新興大国は、戦争をすることの利益と損失を計算したうえで、戦争を仕掛けるということになっている。現在の中国にとっては、現状維持、アメリカが超大国であることが重要だから、自ら戦争を仕掛けるということはない。アメリカが覇権国としての地位を失い、経済力を失うことを一番恐れているのは、チャレンジャーと目される中国だと私は考える。

また、イギリスからアメリカに覇権が移った過程を考えると、「覇権国が勝手に没落するのをただ見ているだけ」「覇権国の没落をこちらが損をしないように手伝う」という戦略が中国にとって最も合理的な選択ではないかと私は考える。イギリスは「沈まない帝国」として世界に君臨し、一時は世界の工業生産の過半を占め「世界の工場」と呼ばれるほどの経済大国となり、その工業力を背景に軍事大国となった。イギリスはアメリカの前の覇権国であった。
しかし、ヨーロッパ全体が戦場となった第一次、第二次世界大戦によって覇権国の地位はイギリスからアメリカに移動した。第二次世界大戦においてはアメリカの軍事的、経済的支援がなければ戦争を続けられないほどだった。アメリカは農業生産から工業生産、やがて金融へと力を伸ばし、超大国となっていった。そして、自国が大きく傷つくことなく、イギリスから覇権国の地位を奪取した。イギリスとアメリカの間に覇権戦争は起きなかった。外から見ていると、アメリカに覇権国の地位が転がり込んだように見える。中国も気長に待っていれば、アメリカから覇権が移ってくるということでどっしり構えているように見える。

現在の中国はアメリカにとって最大の債務国である。中国はアメリカの国債を買い続けている。中国にとってアメリカが緩慢なスピードで没落することがいちばん望ましい。「急死」されることがいちばん困る。覇権国が「急死」すると世界は無秩序になってしまい、経済活動が鈍化する。中国としては自国が力をためながら、アメリカの延命に手を貸し、十分に逆転したところで覇権国となるのがいちばん労力を必要とせず、合理的な選択なのである。

「覇権をめぐる米中の激突、その時日本はどうするか」というテーマの本や記事が多く発表されている。日本でも「日本はアメリカと協力して中国を叩くのだ」という勇ましいことを言う人たちも多い。しかし、その勇ましい話の中身も「日本一国ではできないがアメリカの子分格であれば、中国をやっつけられるのだ」というなんとも情けないものである。

米中が衝突することでその悪影響は日本にも及ぶ。日本は中国や韓国といった現在の「世界の工場」に基幹部品を輸出してお金を稼いでいる。米中が戦争をすることは日本にとって利益にならない。だからと言って、日本が戦争を望まなくても何かの拍子で米中間の戦争が起きるという可能性が完全にゼロではない。このとき、日本がお先棒を担がされて戦争や挑発に加担しないで済むようにする、これが日本の選ぶべき道であろうと私は考える。そして、大事なことは。「日本は国際関係において最重要のアクターなどではない、ある程度の影響力は持つだろうが、それはかなり限定される。そして、アメリカに嵌められないように慎重に行動する」という考えを持つことである。そう考えることで、より現実的な対処ができると思う。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2013-10-17 15:09 | 国際政治

オバマ大統領二期目の大統領就任式の記事から考える

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



 今月21日(日本では22日)に、バラク・オバマ大統領の就任式がワシントンで行われます。二期目ということで、そこまで大きな期待感や変化を感じることはありませんが、今日ワシントン・ポスト紙に掲載された大統領就任式についての記事が目に留まりましたので、ご紹介します。

 記事によると、21日に行われる就任式で、神に祈りを捧げる人物に、市民権運動に参加し、殺害されたメドガー・エヴァース(Medgar Evers)の未亡人のマイリー・エヴァース=ウィリアム(Myrlie Evers-Williams)という女性が決まったという内容です。マイリー自身もアメリカの黒人団体であるNAACPのトップを務めた活動家です。記事によると、祈りを捧げる役目を女性で、しかも聖職者ではない人物が行うのは初めてのことだそうです。

 就任式では、大統領が登場して、聖書に手を置いて、聖職者が宣誓の文言を先導し、大統領が宣誓するのがハイライトです。私たちもテレビなどでよくその光景を目にします。オバマ大統領の一期目は、最高裁判事のジョン・ポール・スティーヴンス(John Paul Stevens)が先導しました。宣誓式で使う聖書は大統領が選ぶことができ、オバマ大統領の一期目の宣誓式では、エイブラハム・リンカーンが宣誓式で使った聖書が使われました。

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一期目の宣誓の様子

 宣誓式ではプロテスタントの聖職者たちが神に祈りを捧げてきたのは、「アメリカはプロテスタントのキリスト教徒(Christianity)が作った国である」という大前提があったからです。

宣誓式にはいくつかの段階があり、祈りを捧げるという段階もあり、マイリーが祈りを捧げることになった、女性でしかも非聖職者の人物が初めてというのが記事の内容です。

 宗教と政治の関係、政教分離(Separation of State and Religion)は長年、アメリカ政治の世界で議論され続けたテーマです。政治という公の場で宗教について語ること、道徳的なことは避けるべきだという考えがあります。一方で、道徳や宗教(特にキリスト教)について政治の場でも表現すべきだという考えがあります。リベラル派(政党で言うと民主党)は、政治の場で宗教について表現すべきではないと考え、保守派(政党で言うと共和党)はその逆の考えを取ります。リベラル派は、マイノリティの人々を重視するという立場から、宗教や道徳を表現することは、マジョリティの人々の考えをマイノリティに「強制する」「押し付ける」ことにつながると考えます。保守派の人々は、社会の基盤となる道徳や宗教について語るのは当然ではないかと主張します。

 1960年代から70年代にかけて、リベラル傾向が強まったアメリカでは、公の場では宗教や道徳について語るべきではないという考えが強まりました。しかし、1980年代以降、人々の孤立化、社会の混乱などから、宗教的な規範や道徳を人々が望むようになりました。レーガン、ブッシュ(父)、そしてブッシュ(息子)の歴代共和党政権では、そのような傾向が強まりました。

 民主党はリベラル派ですから、道徳や宗教について語ることを躊躇っていました。しかし、オバマ大統領は、選挙戦や一期目の就任式で宗教的、道徳的な言葉づかいを多用することで人々を惹きつけた、とハーバード大学教授マイケル・サンデルは著書『これからの「正義」の話をしよう』のなかで述べています。サンデルは、オバマの次の発言を引用しています。「わが国の法律は、その定義からして、道徳を法典化したものであり、道徳の大部分はユダヤ教とキリスト教の伝統に基づいている」

 オバマ大統領は、ミドルネームが「フセイン」であり、正式の名前は、「バラク・フセイン・オバマ(Barack Hussein Obama)」です。フセインと言えば、誰でも思い出すのが、イラクの故フセイン大統領です。この点から、オバマ大統領がアメリカの大統領にふさわしくない、などという批判をする人々もいました。また、オバマ大統領に不安を持つ人々も結構いました。この点を払しょくするために、オバマ大統領は、上記のような発言をしたものと考えられます。ユダヤ・キリスト的な道徳に従うと述べることで不安を一掃しようとしたものと考えられます。

 二期目の今回、就任式のテーマ(正式にはテーマというものはありません)が、伝統や道徳、宗教といったものから、アメリカ人全体の「普遍的な価値である人権」に移ったということが言えるのではないかと思います。そして、シカゴの貧困地域での活動から政治的な活動を始めたオバマ大統領にとって、「普遍的な価値である人権」は「初心忘れるべからず」の「初心」なのでしょう。

 更に言えば、「普遍的な価値である人権」を基礎にして国内、国外の諸問題に取り組んでいくという意思表明なのだろうと私は考えます。これは大きく言えば、非民主的で、人権を抑圧している(と言われている)ロシアや中国に対するけん制という意味もあるのだろうと思います。


(新聞記事貼り付けはじめ)

Widow of Medgar Evers to deliver invocation at Obama inauguration

By Michelle Boorstein,
Washington Post
Published: January 8
http://www.washingtonpost.com/national/inauguration/medgar-evers-widow-to-deliver-invocation-at-obama-inauguration/2013/01/07/293904e2-592e-11e2-88d0-c4cf65c3ad15_story.html
http://www.washingtonpost.com/national/inauguration/medgar-evers-widow-to-deliver-invocation-at-obama-inauguration/2013/01/07/293904e2-592e-11e2-88d0-c4cf65c3ad15_story_1.html

President Obama has picked Myrlie Evers-Williams, widow of slain civil rights icon Medgar Evers, to deliver the invocation at his public swearing-in later this month. It is believed to be the first time a woman, and a layperson rather than a clergy member, has been chosen to deliver what may be America’s most prominent public prayer.

The inaugural committee Tuesday plans to announce that the benediction will be given by conservative evangelical pastor Louie Giglio, founder of the student-focused Passion Conferences, which draw tens of thousands of people to events around the world.

The contrasting choice of speakers are typical of a president who has walked a sometimes complicated path when it comes to religion — working to be inclusive to the point that critics at times have questioned his faith.

In a statement released by the inaugural committee, the president said the careers of Evers-Williams and Giglio “reflect the ideals that the Vice President and I continue to pursue for all Americans - justice, equality and opportunity.”

Obama will privately take the oath of office for his second term on the constitutionally mandated date of Jan. 20, a Sunday. But the public ceremony will be the next day, coinciding with the Martin Luther King Jr. holiday. In a statement issued by the Presidential Inaugural Committee, Evers-Williams said “it is indeed an exhilarating experience to have the distinct honor of representing” the civil rights era at the Jan. 21 event.

This year is the 50th anniversary of the murder of Evers, who was the NAACP’s Mississippi field secretary at the time of his death. Myrlie Evers-Williams spent decades fighting to win a conviction of her late husband’s shooter, and served as chairman of the NAACP in the 1990s.

“I would imagine that even people who are made somewhat uncomfortable by the allusions to religion in such public moments will find an invocation by the widow of a martyr to be moving and poignant,” said author Jon Meacham, who has written on religion in American history. “This is as unifying a gesture as a president could make, it seems to me.”

The invocation comes at the start of the inaugural ceremony, and the benediction comes at the end. An inaugural official said Giglio was picked for the benediction in part because of his work raising awareness about modern-day slavery and human trafficking. Those were core issues at his most recent conference, Passion 2013, attended by more than 60,000 mostly young evangelicals in Atlanta.

“During these days it is essential for our nation to stand together as one,” Giglio said in a statement. “And, as always, it is the right time to humble ourselves before our Maker.”

Decades ago, few Americans paid attention to the clergy (always mainline Protestants) who stood on the podium with the incoming president, or the scripture upon which the president put his hand as he swore the oath of office. But as the country has become more politically polarized and religiously diverse, faith and politics have become far more explosive, and such official moments are now scrutinized.

Obama made news four years ago when he selected conservative megachurch pastor Rick Warren to deliver the invocation. The choice angered progressives who opposed Warren’s work to prevent same-sex marriage, but was seen by many experts as a sign of Obama’s willingness to work with religious conservatives after a bruising campaign.

With the country arguably even more polarized in 2013, historians of religion and politics said Monday that inaugural prayers can be a unifying balm in a nation that overwhelmingly describes itself as Christian. They said they expect Obama to include strong theological references in his address.

Shaun Casey, a Wesley Theogical Seminary professor who has written about faith and the U.S. presidency (and advised the Obama campaign on faith in 2008), said the president is like Franklin D. Roosevelt and Abraham Lincoln in that “he’s trying to unite the nation in the face of deep division and conflict. They are trying to coax more people into the national discussion . . . and this is the last time the entire nation will pay attention to what this guy says in one sitting.”

Some details of the inaugural ceremony have changed over time, including the move to the west side of the Capitol from the east side. But historians say the role of an unspecific deity has been a prominent constant. Lincoln’s address at his second inauguration is the most explicitly religious in history, Casey said.

It was only in the 1970s and 1980s, historians said, with the rise of the religious right and the culture wars that Americans started caring more about who was praying over the president on the podium and how.

“It became a way of making political statements,” said Randall Balmer, professor of American religious history at Dartmouth College.

Progressive evangelical leader Jim Wallis said he has been asked for guidance by some of the clergy who have been involved in previous inaugurations and also some involved this year. He said he warns them against “the temptation or danger” of being only a chaplain offering a blessing.

“When people ask my advice, I always say: ‘Use the occasion to remind our political leaders of their responsibility to the common good. Our involvement in these events should be prophetic in the biblical sense.’ ”

The inaugural committee would not release details about the scripture to be used for the swearing in. Presidents typically rest their hands on the Bible.

An interfaith National Prayer Service is scheduled Tuesday at Washington National Cathedral.

(新聞記事貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2013-01-09 16:11 | アメリカ政治

ジョン・ケリー国務長官就任

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



アメリカの次のトップ外交官(America's Next Top Diplomat)

ウィキリークスが暴露するジョン・ケリー(What the WikiLeaks cables reveal about John Kerry)

J・ダナ・スタスター(J. Dana Stuster)筆
フォーリン・ポリシー誌(Foreign Policy)
2012年12月21日
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/12/21/americas_next_top_diplomat
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/12/21/americas_next_top_diplomat?page=0,1

 ジョン・ケリーが次の国務長官に選ばれるのが当然だと読者の皆さんが考えるなら、それは、ジョン・ケリーだからだ。ジョン・ケリーは27年にわたり、上院の外交関係委員会に参加し、2009年からは委員長を務めている。ジョン・ケリーはジョー・バイデンの後任で委員長となった。上院外交関係委員会委員長として、ジョン・ケリーは世界各国を飛び回り、様々な問題に取り組んできた。ジョン・ケリーは世界各国の指導者たちと会談し、歴代政権の使者として重要な、そして機密扱いのメッセージを世界各国に届けてきた。しかし、多くの会談や交渉が非公開で行われているので、ケリーの実際の外交スタイルを知ることは難しい。

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 ウィキリークスが暴露した海外電報の中にいくつかヒントがある。ウィキリークスによって暴露された米国務省の公電(2005年から2010年初めにかけてのもの)では、ケリーの海外訪問について言及されている。同時期、ケリーは、プレトリア、イスラマバード、北京、ダマスカスを訪問した。国務省の公電には、訪問の内容を要約した内容が書かれており、ケリー以外の人物の発言も掲載されている。これらの内容は「ケリー上院議員の発言に対応して」「ケリー上院議員がこの問題についてこう質問し、こうこうと返答した」などという形式で書かれている。国務省の公電を読むと、「飛行機で飛び回る忙しい外交官」というイメージが浮かび上がる。

 ケリーが長年取り組んできた問題を見ると、彼の外交スタイルの一端が分かる。ケリーは常に難しい問題に取り組んできた。若手の上院議員の頃は、ベトナムでアメリカ軍将兵の捕虜が行方不明になった問題に取り組んだ。最近では、頻繁に中東諸国を訪問した(シャトル・ディプロマシーと呼ばれている)。ケリーは不愉快な人物たちと仕事をすることを避けることはない。例えば、カンボジアのフンセン首相は、カンボジア国内でポルポト派が裁判を受けることに同意するに当たり、ケリーが約10年間、交渉の成功に努力してきたことを賞賛した。ある公電では、フンセン首相の発言を紹介している。その発言は次のようなものだ。「ケリー上院議員は、カンボジア国内でのポルポト派の裁判が成功するように努力してきた」

 ケリーは問題から逃げない。自ら関与しようとしてきた。それは、アラブ世界の諸問題への対処を見ても明らかだ。ケリーは頻繁にアラブ世界の各国を訪問してきた。2006年、ケリーは、レバノンのベイルートで当時の連立政権の指導者たちと会談した。そして、ラフィーク・ハリーリー元レバノン首相の暗殺の捜査に対する助言を行った。また、レバノンの野党勢力とも会談した。その後、シリアのダマスカスで、レバノンの野党勢力を支援しているシリアのバッシャール・アル=アサド大統領とも会見した。

 気候変動は解決の難しい重要な問題であり、ケリーが関心を寄せている問題である。2007年にバリで開催された気候変動に会する国際会議にケリーは出席した。彼は、少なくとも10カ国(パートナー国のフランスから中国まで)からの代表団と会見した。また、25のNGOの代表者たちとも会見した。ケリーは、気候変動問題で重要な存在である中国に特に注意を払っている。彼は、2009年のコペンハーゲンでの国際会議の開催前に、北京を訪問した。その時ホワイトハウスからのメッセージを携えていた。ホワイトハウスのメッセージは次のようなものだった。それは、「世界はエネルギー基盤の変化を必要としている。そして、持続可能な経済成長の方向に進むことを求めている」というものだった。ケリーは、中国の政府高官たちを動かして、温室効果ガスの排出の測定に関し、従来とは異なる基準を受け入れてもらおうと努力した。ケリーと中国政府高官との会話は最初から好感触だった。ある公電には次のようにある。「ケリーと中国の副首相との会話が始まると、雰囲気は楽観主義に包まれた。ケリー上院議員と中国の副首相との間で、率直な意見交換が行われ、双方の国益についても率直に語られた。この会談で、中国側は、アメリカのオバマ新政権が気候変動を米中二国間に存在する問題で最優先のものだと考えていることを理解したであろう」しかし、ケリーの訪問から7か月後、コペンハーゲンで国際会議が開催された。会議では、ケリーが北京で議論した諸問題の議論だけに終始し、何も進展がないままに終わった。

 しかし、ウィキリークスで暴露された公電では、ケリーが騙されやすい人物であるとは描かれていない。中国政府高官たちと気候変動について話している時、ケリー上院議員は、他国には、気候変動について、中国やアメリカが参加しなくても解決できるように動くよう圧力をかけていた。2008年初めに気候変動について国際的な議論が始まった時、議論の結果が自分の選挙に不利な要素となることをケリーは恐れた。「国際的議論が進み、ある程度の合意が達成されれば、アメリカは議論の結果を尊重し、その合意に基づいて国内法を整備する」とケリーは述べた。しかし、この発言はあまりに楽観的、非現実的すぎる。

 アラブとイスラエルとの間では微妙な和平交渉が行われている。この交渉に対するケリーの関わりは賛否両論を引き起こすことになった。これはウィキリークスが国務省の公電を暴露したことで明らかになった。2009年、ケリーは、レバノンの大統領に対して、「アメリカは和平交渉が長引きすぎ、一刻の猶予もないと感じている」と語った。レバノンの首相との会見で、ケリーは、「ジョージ・ミッチェルが特使に任命されたのは、アメリカが和平達成のために積極的に関与するサインである」と述べた。ケリーはアラブの指導者たちに対して非現実的な約束をした。シリアの副大統領に対して、アメリカの政策は、イスラエルの新たな入植地の拡大に反対する内容だと語った。また、締結されるだろう和平合意の枠組みの概要を話した。そこで、パレスチナの首都は東エルサレムになるだろうと語った。国務省の公電が暴露されたとき、ケリーはカタールの首長との会見の内容が明らかにされ、批判を受けることになった。

 ケリーが収めた成功の中で知られていないのが南アジアに関することである。ケリーは、インドのマンモハン・シン首相、首相の安全保障担当補佐官M・K・ナラヤナンと会見した。この会見で、ケリーは、アメリカとインドとの間で民生用の核技術に関する対話を行うように提案した。そして、米印間の対話の結果が米印原子力協力協定となった。こうした議論の中で、ケリーは慎重な姿勢を崩さなかった。米印原子力協力協定は、インドとアメリカ上院の支持だけでなく、国際機関やインドの一般国民の支持を得た。2008年にムンバイでテロ攻撃が起きた時、ケリーは、インドとパキスタンとの間で緊張が高まらないように調停者として努力した。2009年、ケリーは、アフガニスタンのハミッド・カルザイ大統領を説得し、大統領選挙の決選投票を行うことに成功した。この時のアフガニスタンの大統領選挙は、1回の投票では結果が決まらなかった。そして、カルザイ大統領が決選投票で勝利をしたと時、ケリーは対抗馬の候補に電話をし、潔く敗北を受け入れるように説得した。

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 ケリーはパキスタンに関しては運に見放された。ケリーは、ケリー・ルーガー援助法のようなイニシアチブを通じて、アースィフ・アリー・ザルダーリー大統領の権力の確立と文民政府の樹立を支援することに奮闘した。しかし、パキスタンの強力な軍部の抵抗にあり、ほとんど前進はなかった。オサマ・ビン・ラディンがパキスタンのアボッターバードの隠れ家で発見された時、ケリーが行ってきたパキスタンの文民政府の力の確立に向けての努力は行き詰ってしまった。

 ケリーは、アメリカの国内と国外で気候変動に対処するイニシアチブを創設した。また、レバノン国内に特別法廷を設置することに努力を傾けた。これは政治的な難問となった。そして、これがハリリ政権の崩壊につながった。そして、それから8年過ぎても、ラフィーク・ハリーリー元レバノン首相の暗殺に関して、解明が全く進んでいない。中東の和平合意に向けて、ケリーはアラブ諸国の指導者たちからの助言を受け入れた。彼らは、イスラエル・パレスチナ間の紛争を終息させるには、イスラエルとシリアとの間の主張の相違をまず解決することだとケリーに助言した。ケリーは、この助言を受けて、シリアのアサド大統領と何回もダマスカスで会談を行った。

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 アサド大統領との会見で、ケリーは厳格さを崩さないが、優しさを出していた。2006年12月、ケリーはアサド大統領に対して、和平プロセスに関して積極的な方向に向かっていること、イラク国内に流入する民兵の流れを止めていることを評価していると述べた。また、アサド大統領は既に明確な方向転換を行ったのにブッシュ政権がそれを評価しないという懸念を持っていたが、ケリーはこの懸念を払しょくしようとした。ケリーは、会談(meeting)の締めくくりで、アサド大統領に対して警告(warning)を発した。ケリーは、「イランが優勢になっていると考えている人たちは間違いを犯している」と述べた。また、暴露された公電から紹介する。「ケリーはアサド大統領に対して、中東地域で起きている事件を見て、自分の政権が安泰だという過剰な自信で状況を見誤らないようにすべきだと警告した。現在の状況から見て、アサド政権の将来は悲観的なものであるとも述べた」

 2010年2月、ケリーはカタールの首長と会談した。その中で、ケリーはアサド政権について口にしている。ある公電によると、ケリーは、「ダマスカスを訪問し、アサド大統領が変化を望んでいることは分かった」と述べた。これは、シリアの緊密な同盟国であるカタールに対して、アサドにより圧力をかけるように求めたことになる。より率直な会話の中で、ケリーは、「アメリカはシリアが大きく変化することは期待していないが、会話を始めることは有効だと考えている」と述べた。

 ジョン・ケリーが上院で承認を受けたら、ケリー国務長官の仕事は会話を始めることだ。ケリーは全ての相手(良い相手ともそして悪い相手とも)と交渉を始めている。ケリーの努力が全て実を結んできたということはない。そして、ケリーは、国務長官に就任したら成功確実という訳ではない。しかし、彼のこれまでの業績を見ると、私たちは、彼が成功のための努力をするだろうということだけは分かる。

※J・ダナ・スタスター:フォーリン・ポリシー誌研究員。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2012-12-24 00:31 | アメリカ政治

pivot to Asia関連記事①

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



●「アメリカは政策を転換し、アジア・太平洋地域に集中する(US shifts policy focus to Asia-Pacific)」

ジョフ・ダイヤ―(Geoff Dyer)、リチャード・マグレガー(Richard McGregor、両者ワシントンDC)、デイヴィッド・ピリング(David Pilling、ホノルル)
フィナンシャル・タイムズ紙(Financial Times)
2012年11月15日
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/a930e392-0fa9-11e1-a468-00144feabdc0.html#axzz280nM0gcX


バラク・オバマ大統領は、16日からのアジア・太平洋地域歴訪の間、中国に立ち寄らないことになっている。しかし、中国の急速な経済成長と軍事力増強は、アジア・太平洋地域歴訪の間、オバマ大統領が行うことの背景(backdrop)となるものだ。

 オバマ大統領は、オーストラリアへ訪問し、インドネシアでの東アジアサミットに出席する。この機会を通じて、オバマ大統領は、アジア地域における安全保障分野の拡大を行うことを目指している。オバマ大統領は、彼の政権が「戦略的大転換(strategic pivot)」と呼ぶ、外交政策の転換を行おうとしている。具体的には、アメリカは、イラクとアフガニスタンでの対ゲリラ戦争から、経済発展著しいアジア地域での諸問題に集中するというものだ。

オバマ大統領は、今週木曜日(2011年11月17日)にオーストラリア北部のダーウィン市を訪問する予定だ。同市では、アメリカ海兵隊員たちの宿舎として立て直される施設を訪問する。米海兵隊のダーウィン市駐留は、米豪の協力を拡大するという合意の一部である。そして、これは、中国をバックミラーに捉えたようなものなのである。

ダーウィン訪問後、オバマ大統領は東アジアサミットに初めて出席する。東アジアサミットは、地域の各国が一堂に会するものであるが、地域外の中国とインドも参加する。そして、オバマ大統領は、この席上、南シナ海(South China Sea)への開かれたアクセスを求めることになる。南シナ海に関しては、領有権を争っている水域をめぐり中国政府がより攻撃的な姿勢を取るのではないかという懸念が広がっている。

オーストラリアは天然資源に恵まれた国であり、経済的に中国と近い関係にある。しかし、オーストラリア政府はアメリカ政府との間ですでに結ばれている安全保障や情報に関する関係を深めようとしている。60周年を迎える米豪同盟関係を更に強固なものにしようとしている。

米豪両政府は、アメリカがオーストラリア領内に新たな米軍基地を建設するのではないということを表明するのに骨を折った。しかし、既存の施設を改築、増強することで、実質は新たな米軍基地建設と同じことになる。

アメリカ海兵隊は、地域内をローテーションして移動する。オーストラリアでは、ダーウィン市近郊のロバートソン・バラックスと呼ばれる兵舎を拡張して駐留する。この兵舎に近接する港もアメリカの艦船に合わせて拡張される。オーストラリアのスティーヴン・スミス国防相が述べたように、「より多くの将兵が入ってきて、出ていき、より多くの航空機が入ってきて、出ていき、より多くの艦船が入ってきて、出ていき」という状態になる。アメリカ軍は、オーストラリアに不測の紛争に備えて物資などを貯蔵しておくことができるようになる。オーストラリアは、日本や韓国に比べて、中国軍のミサイルから遠く離れた場所にある。

 オバマ大統領は、東アジアサミットに出席するために、バリ島を訪問する。東アジアサミットは発足して6年目で、災害救助のような議題について話し合うものだ。中国政府は反対しているが、アメリカやその他の参加国は、この席上、南シナ海の安全保障について議論をすることを求めている。

一方、米国防総省は、ひそかにエアシーバトル概念という新しい戦略の作成を行っている。この概念は、中国が計画している、中国を取り巻く海洋にアメリカ軍を近づけないという戦略に対抗することを目的にしている。

アメリカの国防予算は既に大幅に削減されることが決まっている。その額は、ここ10年で少なくとも4500億ドル(約35兆円)と見積もられている。オバマ大統領の今回の歴訪の目的は、アジア・太平洋地域の同盟諸国に対して、アメリカは地域から撤退することはなく、中国が少しずつでもリードする立場に就くことを許容しないということを説いて回ることである。

 オバマ大統領のオーストラリア訪問は、国防予算を削りつつあるアメリカがどのようにして低いコストで大きな成果を得ようとしているかを示すいくつかのヒントを私たちに示している。オーストラリアを防衛同盟により巻き込むことで、将来の負担の分担(burden-sharing)を行おうとしている。アメリカは同じことを日本と韓国にも求めようとするだろう。

太平洋軍司令長官のロバート・ウィラード提督は、今週末、オーストラリアとの新たな協定は、オーストラリア政府からの「これまでにないほどの」熱心な提案があったので成立した、と述べている。

ダーウィンに米海兵隊が駐留することは、沖縄の米軍基地問題に対する解決策の一つとなる可能性もある。沖縄には多くの米軍基地があり、それらに対して激しい反対がある。

 より大きな疑問が生じている。それは、オバマ大統領のアジアへの再関与のための試みは中国政府を怒らせ、同盟諸国を仲たがいさせることで、中国に対して強硬的すぎるリスクがあるのではないかというものだ。ワシントンにある国際平和のためのカーネギー財団のダグラス・パアルは次のように語っている。「アメリカがアジアへの再関与を深めれば、中国に対して、アメリカが戦線をアジア地域に引いているという印象を与えてしまう」

エアーシーバトル(AirSea Battle)という新たな概念について、中国からすでに非難の声が上がっている。人民解放軍上級大佐のFan Gaoyueは今年の初め、「これは戦場を中東と中央アジアから西太平洋に移すだけに過ぎない」と書いている。

 しかし、アメリカのアジアへの再関与の試みが反発を招いているという兆候はほとんどない。シンガポール首相のリー・シェンロン(Lee Hsien Loong)は今週末、次のように述べた。「アメリカはこの地域ではいつでも歓迎される。そして、アメリカはアジアに留まるべきだ。なぜなら、アジアにはアメリカの友好国が数多くあるからだ。また、アメリカは影響力を持ち、アジアにとって良いことをしてくれる能力を持つ」

インドネシア大統領のスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)は、次のように述べている。「アメリカとオーストラリアの合意は地域の安全保障を脅かすものではない。しかし、中国は大国へと成長しつつある。私が希望するのは、中国がアメリカと協力して、アジア・太平洋地域が世界の成長の柱となるように支援することだ。」

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2012-10-05 15:19 | pivot to Asia

10月はサプライズの月:米大統領選に関しニューヨーク・タイムズ紙の面白い記事をご紹介します

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



●「サプライズの月に入ったアメリカ政治」(Now Entering the Month of Surprise)

マイケル・D・シェアー(MICHAEL D. SHEAR)
2012年9月30日
ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)
http://thecaucus.blogs.nytimes.com/2012/09/30/now-entering-the-month-of-surprise/?ref=politics

 サプライズ!

 10月がやって来た。10月と共に、「オクトーバー・サプライズ(October Surprise)」の亡霊もやって来た。オクトーバー・サプライズは、米大統領選挙の行方を最後の最後で変えてしまうほどの威力を持つ。

 1972年、ニクソン政権のヘンリー・キッシンジャー国務長官は、投票日の数日前に、ベトナム戦争において「平和を手にした(アメリカ軍のベトナムからの撤退)」と発表した。これによってニクソン大統領は、当選することができた。1992年、レーガン政権時代の国防長官だったキャスパー・ワインバーガー(Caspar Weinberger)は、イラン・コントラ事件に関係していたことが投票日数日前になって明らかになった。レーガン政権下で副大統領を務めたジョージ・H・W・ブッシュ(George H. W. Bush)には大きな痛手となり、選挙戦でビル・クリントンに敗れた。2004年、オサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)は、10月29日にビデオメッセージを発表した。

 このようなサプライズが再び起きるだろうか?1980年、10月の選挙直前に、イラン人質事件で人質となった人たちの開放があるのではないかと、アメリカ全体が期待を込めて待っていた。しかし、実際に解放されたのは、ロナルド・レーガンの大統領宣誓式の数時間後だった。だから、この10月に何も重大なことが起きることなく、この月がただ過ぎ去ってしまう可能性はある。

 しかし、10月が来るに当たり、オクトーバー・サプライズが起きる5つの可能性がある分野が存在する。それをこれから述べていく。

①「討論の機会(A DEBATE MOMENT)」 オバマ大統領とミット・ロムニーは、10月の間に3回、直接討論を行う。この3回の討論の機会は、2012年の大統領選挙の行方を変えるかもしれない、オクトーバー・サプライズが起きる機会となることが考えられる。

 この場合、サプライズは、一方の失言や失態の形で出現する。それをもう一方が捉えて、質問をして追い詰めることになる。または、議論の状況を変えるために、一か八か(Hail Mary pass 訳者註:アメフトで逆転にかけてロングパスを投げること)、人々を驚かせるような政策提案を行うこともサプライズになるだろう。もしくは、議論の間、スタイリッシュに行動し、2人の候補者を観察している有権者たちの考えを変えることもサプライズになる。

②「外交政策(FOREIGN POLICY)」 先月、リビアのベンガジでアメリカの大使が殺害されるという事件が起きた。アメリカの政治ニュースは、海外で事件が起きるとそれがすぐに中心となってしまう。それは正しいことである。しかし、私は海外の事件が政治ニュースの中心になることをリビアの事件で痛感した。リビアの状況はそれ自体が重要である。しかし、同時にオバマ、ロムニー両氏がどう対応するかは選挙の行方にとって重要である。

 10月に世界で何が起きるだろうか?駐リビア米国大使を殺害したテロ攻撃に関して何か進展があるか?イランの核開発で何か進展があるのか?既に弱体化し、動揺しているヨーロッパ各国の経済が劇的に崩壊するのか?全く予期しなかった何かが起きるか?

③「経済統計(ECONOMIC STATISTICS)」 国内においては、政府が失業率やその他の経済統計を発表する機会がいくつかある。今週金曜日、10月5日に政府は経済統計を発表する。失業率は上昇しているか?横ばいか?下降しているか?上昇しているにしても、下降しているにしても、その変化の幅が小さければ、選挙に大きな影響を与えることはないだろう。しかし、変化の幅が大きければ、これがオクトーバー・サプライズとなるだろう。

 11月2日にも就業者数についてのレポートが発表される。しかし、この10月を通じて、経済は、有権者にとって最重要の関心事となる。これは、株価の大幅な上昇や下落が大統領選挙に影響を与えることを意味する。金融関係の大きなニュースが、アメリカ最大の機関である大統領の決定に影響を与えることになる。

④「個人情報の調査によって明らかになるニュース(INVESTIGATIVE NEWS)」 ジャーナリストたちは、ロムニー、オバマ両氏の個人情報やバックグラウンドについて数年にわたり、調査してきた。この調査は現在も続けられている。しかし、まだ大きなニュース(スキャンダル)は出てきていない。選挙に影響を与える新たな発見がなされる余地は大いにある。

 2000年の大統領選の投票日直前、ジョージ・W・ブッシュは、自分が過去において飲酒運転で有罪判決を受けていたことを認めざるを得なくなった。このような、選挙に不利になる個人情報は、現在のところ、オバマ、ロムニー両方とも出てきていない。しかし、この時期にこのような情報が出てしまうと、どちらに投票するかまだ決めていない少数の有権者たちの投票行動に影響を与えることになるだろう。

 オバマ、ロムニー両陣営とも、対抗候補に関する調査部門を設けている。両陣営の調査部門にとって、10月は相手候補にダメージを与える情報を流す最後の機会となる。

⑤「無関係な事件」 最後に言うと、10月には何かが起きる可能性は常にある。それが選挙に特別な影響を与えることはないにしても、人々の注目がそちらに移ることはある。7月にコロラド州オーロラで起こった銃乱射事件や昨年、日本で起きた大地震のようなことが起きれば、人々の関心はそれらに向かおう。

 オバマ、ロムニー両陣営とも、この10月を有権者たちへの最後のアピールの月としている。もし選挙と関係のない事件が起きて、マスコミやアメリカ国民の関心がそちらに向かってしまうと、両陣営とも最後の訴えで事態を好転させることは難しくなるだろう。そのことを両陣営は認識するだろう。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2012-10-04 14:06 | アメリカ政治

人類学内部の対立について

今回は、いつもと毛色を変えて、人類学についての文章をご紹介したいと思います。

副島隆彦の“予言者”金融セミナー第2回『大災害から復活する日本』発刊記念講演DVD

副島 隆彦 / 成甲書房



ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方

カンナ,P. /



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昨年の話で古くなってしまいましたが、アメリカの人類学会がある公式な宣言文の中から「科学(science)」という単語を削除しました。その代わりに「一般の人々の理解を深める」という文言が入れられました。

人類学会には大きく分けて2つのグループ、派閥があります。科学として研究を追求する派と研究対象の部族や人々の生活の問題に取り組むべきとする派です。

これら2つの派閥の争いが人類学会に分裂を招いているのは確かなようです。

==========

●「人類学は科学だろうか?ある宣言が争いを激化させている(Anthropology a Science? Statement Deepens a Rift)」 

ニコラス・ウエイド(Nicolas Wade)
2010年12月9日付 ニューヨークタイムズ紙

http://www.nytimes.com/2010/12/10/science/10anthropology.html

人類学者たちは、自分たちが所属し研究している人類学の性質と未来について混乱状況に陥っている。混乱のきっかけは全米人類学学会(American Anthropological Association)の2010年年次総会において、「長期計画に関する宣言」の中から「科学」という言葉を削除したことだ。

この決定は長年にわたりくすぶっていた、2つのグループの間の争いを再燃させた。人類学の世界には、科学を基盤とした人類学の諸分野である考古学、形質人類学、文化人類学の派閥と、人種、民族、ジェンダーを研究する学者たちの派閥がある。後者の派閥の人々は自分たちを原住民の抱える問題や人権問題を解決するための主導者、活動家であると考えている。

ここ10年、人類学の世界では2つの派閥が激しく争ってきた。そのきっかけは政治的な活動を志向する派閥が、ヴェネズエラからブラジルにかけて住んでいるヤノマノ族に関する研究を攻撃したことである。この研究は、科学志向の人類学者ナポレオン・チャグノンと遺伝学者のジェイムス・ニール(2000年に死去)によって行われた。この争いが残した傷はいまだに癒えず、科学志向の人類学者たちの多くは、先月、人類学会が長期計画の宣言文を変更し、人類学を科学として発展させるのではなく、「一般の人々の理解」を深めることを選択したことを知り、狼狽した。

現在に至るまで、全米人類学学会の長期計画は、「人類学は、人類をすべての面で研究する科学」だとしてきた。先月、全米人類学学会の執行部はこの長期計画を見直し、「全米人類学協会の目的は人類に関する一般の人々の理解を促進することだ」と修正した。この長期計画には人類学に含まれる学問分野のリストが掲載され、その中には政治調査研究も含まれている。

「科学」という言葉は、「長期計画に関する宣言」から後2か所削除されている。

全米人類学学会会長のヴァージニア・ドミンゲス(イリノイ大学)は、私たちの取材に対するEメールでの返事の中で次のように書いている。「科学という言葉を外したのは理事会で、自分たちの仕事を科学の範囲内に位置づけない人類学者たちも含めて宣言文を出そうと決めたからです。もちろん科学の範囲内に位置づける人々を宣言文では含んでいます。宣言文は、理事会に素晴らしい提案があれば修正されるものです」

ドミンゲス博士は、「新しい長期計画宣言は、全米人類学学会の『目標に関する宣言』とは異なります。この「目標に関する宣言」について変更はありません」と語っている。「目標に関する宣言」では、人類学を科学であるとしている。

全米人類学学会の傘下の人類学関連諸科学協会会長(Society for Anthropological Sciences)のピーター・ペレグリンは、会員たちに送ったEメールの中で次のように書いている。「全米人類学学会内で提案されて実現した変化はアメリカの人類学を傷つけるものである。私たちの考えを明確にし、全米人類学協会の会員たちに知らせなければならない」

ウィスコンシン州のローレンス大学で教鞭を執るペレグリン博士は、私たちとのインタビューで次のように語った。「科学という言葉を削除したことで2つの派閥の間での緊張感が高まってしまい、2つの派閥の間の関係は修復不可能になってしまいました。理事会が文言を元に戻しても、もう元には戻りません。今回起きたことは、籠の中に閉じ込めていた猫を外に出したら、部屋中を走り回って家具という家具に傷をつけたようなものなのです」

ペレグリンは人類学協会で起きた変化を科学に対する攻撃だと考えている。そして、人類学において大きな影響を与えている2つの流れがあるとしている。1つの流れは、批判人類学を信奉する人類学者たち(critical anthropologists)である。彼らは、人類学を植民地主義の武器として捉え、人類学の植民地主義的な要素を取り除くことを目指している。もう1つの流れは、ポストモダンを信奉し、科学の権威を批判している(postmodernist critique of the authority of science)人類学者たちである。ペレグリンは、「こうした動きは、合理的な主張や思考を否定することを基盤としている創造説(creationism)のようなものだ」と書いている。

ドミンゲス博士は批判人類学とポストモダンを信奉している人類学者たちの考えが新しい宣言文に影響を与えたことを否定している。ドミンゲス博士は私たちの取材にEメールで回答を寄せた。その中で、科学志向の人類学者たちは、長年、科学志向ではない同僚たちの存在を憂慮し、否定的であったと語っている。ドミンゲス博士は、「ある人々を少数派に追いやったり対立したりするのは楽しくて何度でも経験したいという類のものではない」と述べている。

(終わり)

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読者からの投稿コーナー(The Opinion Pages)

●投書:「科学の定義(The Definition of Science)」(2010年12月13日掲載)

http://www.nytimes.com/2010/12/14/opinion/l14anthro.html?scp=3&sq=anthropology%20a%20science?&st=cse

編集部へ

「人類学は科学だろうか?ある宣言が争いを激化させている」(2010年12月10日付の記事)への反論

全米人類学学会の旗艦誌である『アメリカン・アンソロポロジスト』誌の編集責任者として、私は、今回の「科学」という言葉の、長期計画宣言からの削除は、人類学の世界の争いを激化させることはないし、誤解を深めることはないと考えている。

私は全米人類学学会が「科学」という言葉を削除したことを再考してくれる、と希望を持っている。それは人類学が科学の定義を拡大することに貢献してきたからだ。科学は何も実験室だけで行われるものではなく、フィールドでも行われるものだ。何回も同じ手順で行われる実験(experiments)だけではなく、同じことを繰り返すことは不可能な観察(observation)も科学研究の手法に含まれる。人類学だけが科学と言うこともなく、動物学や天文学といった幅広い学問分野も科学なのである。

双眼鏡(訳注:科学的方法の象徴)の調整は正しい知識を得るために大変重要である。それと同じくらい重要なのは、コロニアリズムの科学(人類学だけではなく)に対するインパクトを理解することによって、概念の範囲を測定することだ。そして権威に対する様々な要求によって知識は形成されていく。

概念の範囲をしっかり測定することと決めることは、科学をより科学たらしめる。

問題は、「派閥間の争い」ではなく、聞き間違いとそれによる誤解である。私たちは敵対心が渦巻く時代に生きている。その中で、私たち人類学者は、職業を通じて身に着けた「注意深く人の話を聞く」というスキルをお互いに理解のためにより効果的に使わなければならない。そうすることで、人類に関する科学の発展と一般の人々の理解を深めるという二つのことが可能となるのだ。

トム・ボエルストーフ
カリフォルニア州アーヴァイン
2010年12月10日

投稿者はカリフォルニア大学アーヴァイン校の人類学教授である。

(終わり)
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by Hfurumura | 2011-09-09 17:35 | 学問

アメリカの債務上限問題

日本再占領 ―「消えた統治能力」と「第三の敗戦」―

中田 安彦 / 成甲書房



ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方

カンナ,P. /



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2011年8月2日までに、アメリカ政府が債務上限を14.3兆ドルから引き上げないと、米国債というアメリカの国の借金を返すことができなくなり、債務不履行(デフォルト)になるという問題が起きています。

「借金漬けの体質を改善するために上限を上げずにデフォルトを起こしてしまえ」というのが、ミッシェル・バックマンやロン・ポールといったティーパーティー運動の支援を受けている議員たちの主張です。しかし、米国債がデフォルトになると、米国債の投資商品としての価値が下がります。そうなると、買い手がつかなくなることから、利子を上げて買い手を募るということになります。そうなると、アメリカ国内の金利にも影響を与え、住宅ローン、自動車ローン、学資ローンなどの金利が上昇し、アメリカ国内で多くの人々がローン(借金)を返せなくなります。そうなると、こうしたローンの債権を組み込んでいる金融商品の価値が下がり、サブプライムローン危機の時と同じ構図で、アメリカ国内経済に悪影響を及ぼします。

アメリカ国債を保有しているのは、海外の国々や海外金融機関、アメリカの中央銀行である連邦準備制度銀行(Federal Reserve System)、そして個人ということだそうです。中国は1兆1600億ドル(約93兆円)、日本は約9100億円(約73兆円)を保有しています。海外の米国債保有比率は47パーセントですから、半分は海外が買っている(投資している)ということになります。米国債がデフォルトになり、米国債の価値が下がると、こうした海外の国々や金融機関は資産が減ることになります。そこで、米国債への投資を控え、保有量を減らすか、損失を少なくするために売却するという動きになります。そうなると、米国債はますます価値が下がるという悪循環になります。米国債の価値の下落は世界経済にも影響を与えます。

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このようにアメリカの債務上限問題は、アメリカ一国だけの問題ではありません。ニューヨーク・タイムズ紙は、中国の反応についての記事を掲載しています。中国としては保有している米国債などのドル建ての資産の目減りを防ぎたい、米国内経済の悪化による対米貿易の鈍化を防ぎたいという意向を持っていますので、「早く米国内で妥協を成立させて、デフォルトにならないようにしてほしい」という主張になっています。お得意さまの意向をアメリカが完全に無視できることはありませんので、この中国の意向はアメリカの政治家たちに影響を与えるでしょう。それで妥協が成立して、上限を引き上げる代わりに、歳出削減が行われることになるでしょう。

歳出削減には誰も反対していないので、問題はその規模をどうするかということになります。また、歳出削減は、社会的弱者と呼ばれる人々に影響が大きいので、この際、富裕層に対する増税を行うかどうかが焦点になります。共和党は富裕層に対する増税には反対ですから、下院で通りそうな案には増税が盛り込まれませんが、増税の部分を上院とホワイトハウスでどのように決着させるか、ということになると思います。

恐らく、妥協は成立するでしょう。しかし、アメリカは今回のことでかなり痛手を負うことになるでしょう。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「オバマ氏「時間がない」強調 野党との債務上限問題交渉」

2011年7月19日付 朝日新聞電子版

 米国の債務上限引き上げ問題で、オバマ大統領と米与野党が、ぎりぎりの交渉を続けている。政権側は、10年で2兆ドル程度の財政赤字を削減する策での合意を目指しつつ、合意できなければ上限だけを引き上げる緊急対策も視野に入れる。週末の間には、方向性を見いだしたい考えだ。

 米国の財政は、債務の残高が議会が定める上限(14.3兆ドル)に達している。8月2日までに上限が引き上げられないと、米国債(借金)の返済が滞る債務不履行(デフォルト)になりかねない状態だ。オバマ大統領は15日、この週2度目となる記者会見を開き、「時間がなくなりつつある」と強調。「米国民が求めるのは問題解決であり、財政規律の回復だ」として、野党・共和党側に妥協を呼び
かけた。

 大統領は14日の与野党の指導部との交渉で、(1)10年で3兆~4兆ドルの財政赤字削減を念頭に置いた大規模対策、(2)10年で2兆ドル程度の赤字を削減する中規模対策、(3)赤字削減は明示せず債務上限だけを引き上げる――という3案を与野党に提示した。

 15日の会見では「(共和党側の反対で)大規模対策は難しくなっている」と認め、(2)案を目指すことを強く示唆。「犠牲を(社会の各層で)共有する必要がある」とも語り、高齢者や弱者にしわ寄せが大きい歳出削減だけでなく、税制上の措置で富裕層にも負担を求めたい意向を示した。

※関連
2011年3月3日発行 日興コーディアル証券 Market Memo 金融市場調査部長 チーフストラテジスト 末澤 豪謙記
http://www.smbcnikko.co.jp/products/special/china/pdf/110303_1.pdf
・中国の米国債保有1.1兆ドル突破、日本(8,836億ドル)に約3,000億ドル差で首位
・米国債の主要投資家は海外(47.4%)、中央銀行、個人である

●「China’s Treasury Holdings Make U.S. Woes Its Own」

2011年7月18日付 The New York Times
By DAVID BARBOZA

SHANGHAI — However grim Washington’s debt and deficit negotiations may seem to Americans, the impasse is nearly as disturbing for China.

As the United States’ biggest foreign creditor — holding an estimated $1.5 trillion in American government debt — China has been a vocal critic of what it considers Washington’s politicized profligacy.

“We hope that the U.S. government adopts responsible policies and measures to guarantee the interests of investors,” Hong Lei, a foreign ministry spokesman, said at a news conference late last week.

Beijing might prefer to respond by starting to dump some of its American debt. But in this financial version of the cold war, analysts say, both sides fear mutually assured destruction.

One reason the United States would want to avoid defaulting on its debt is that such a move could alienate China, which is a steady purchaser of Treasury bonds. Beijing, meanwhile, already has too much invested in American debt to do much more but continue to buy, hold and grumble.

It is the ultimate “too big to fail” global relationship, said Andy Rothman, an analyst in Shanghai for the investment bank CLSA.

If Beijing even hinted that it might try to sell part of its American debt, “other countries might sell their dollar assets,” Mr. Rothman said, noting that this would drive down the value of China’s holdings. “It would be financial suicide for China.”

China got into this situation, experts say, by indulging its own economic interests. To bolster what has become the world’s largest export economy, China has focused on policies that encourage domestic savings and hold down the value of its currency. The result: huge trade and current-account surpluses. China has accumulated more than $3 trillion in foreign currency reserves, far more than any other nation.

Most of those reserves are held in dollars, and recycled back to the United States through investments in Treasury bonds and other dollar-denominated securities — even stocks. And while some of China’s foreign exchange reserves are plowed into
European and Japanese debt, those bond markets are not big or liquid enough to absorb the bulk of China’s ever-larger foreign holdings.

Beijing has tried to diversify its foreign exchange portfolio by creating a sovereign wealth fund that can invest some of the reserves overseas. The government has also encouraged Chinese companies to expand overseas and to acquire mines and
natural resources to fuel China’s hungry economy. But because China has too much foreign money for any other outlet to absorb, the vast majority of its fast-growing reserves continue to be destined for the United States bond market.

“China has no choice but to keep buying,” said Zhang Ming, an expert at the Chinese Academy of Social Sciences, a Beijing research group. “After all, U.S. Treasury bonds are still the largest and most liquid investment product in the world.”

All of which has helped enable America’s own fiscally dubious habits.

The United States’ huge deficits — not only in government spending, but in trade and savings as well — have weakened its economy and strangled consumption. Many economists say that would poison the long-term prospects for the dollar, if it were
not still the world’s reserve currency and most reliable safe haven.

Helping maintain that role for the dollar are the staggering debt problems that Europe and Japan are struggling with. With global investors like China having few good options besides United States Treasuries, Washington, despite its current
debt-ceiling debacle, can continue to hold down interest rates and wallow in cheap borrowing.

Beijing in recent years has frequently fretted aloud about Washington’s monetary policies. In 2009, shortly after the global financial crisis broke out, China’s prime minister, Wen Jiabao, said his country was “worried” about the safety of its huge cache of United States Treasury holdings. Last year Chinese policy advisers criticized the Federal Reserve for undermining the value of holdings by “printing too much money” with its so-called quantitative easing policies.

But even now, despite Beijing’s scolding about the debt impasse in Washington, China’s options may be limited.

”There’s really nothing different they can do,” said Eswar S. Prasad, a Cornell economics professor and former head of the China division at the International Monetary Fund. “Even if China felt the United States was going off a cliff, there’s
no other place for them to put their money.”

Over the long run, many economists say the structural imbalances on both sides of the Chinese-American debt symbiosis could be disastrous. Already, for example, many say that those dynamics helped create the global financial crisis by artificially
creating the low interest rates that let housing prices reach bubble-bursting levels.

Now, the United States and China are trying in their different ways to adjust. American policy makers are urging more savings and less consumption. Chinese officials take the opposite tack, promising to encourage more consumption and less
saving.

But neither country has made significant headway on these strategies during the last two years. Both sides see these fixes as too costly and detrimental to nearer-term economic goals. America is focused on reviving its economy, while China is
intent on cooling its down. And in both countries, achieving the goals involves changing public behavior, which is never easy.

Many economists say China could curb its dependence on dollar-pegged assets by letting the value of its currency rise faster against other world currencies. That would also make its imports less expensive for domestic consumers. But it would
also make China’s exports more expensive for global customers, which could hurt Chinese factories and lead to widespread layoffs.

For all that, if China worries about holding too many dollar-denominated assets, which could depreciate over time as the value of its own currency rises, why does it not quietly sell some of them — or at least stop buying more?

Recent United States government surveys have suggested that China began doing just that, beginning to slow its purchases of American debt earlier this year. But analysts warn that those official figures may not be accounting for purchases made
through third-party countries on China’s behalf. An intermediary buying American bonds in London at the behest of the Bank of China would not show up in Washington’s tallies.

Many economists, in fact, say they believe China may have actually stepped up its buying of American debt. The evidence is that its trade and current-account surpluses almost certainly mean that it has continued to accumulate huge holdings of
dollars.

How might the Beijing-Washington debt standoff be resolved? Mainly, the Americans hope China will ramp up its domestic consumption and perhaps make even more direct investments in the United States. The Chinese, meantime, hope the United
States will deal with its huge debt problems and maintain the value of the dollar — and with it the value of China’s dollar-based holdings.

For all the stresses in both directions, the fiscal cold war means “China is increasingly integrated with the future of the U.S.,” said Mr. Rothman, the Shanghai analyst. “But that could be a good thing, for both sides.”

●「Both Sides Confident on Debt Talks Despite Impasse」

2011年7月17日付 The New York Times

By ERIC LIPTON

WASHINGTON — Top Republican lawmakers and the Obama administration’s budget director predicted Sunday that an agreement would be reached before the federal government defaults on its debt in early August, but both sides continued to squabble over the details of competing proposals, offering little evidence that a deal was at hand.

“I do not believe that responsible leaders in Washington will force this to default,” Jacob J. Lew, the White House budget office chief said on the ABC News program “This Week.” “All of the leaders of Congress and the president have
acknowledged that we must raise the debt limit. And the question is how.”

Republicans made clear that they intended to vote this week on their “cap, cut and balance” plan, which would cut the deficit, cap federal spending as a share of the economy and amend the Constitution to require a balanced budget. The changes would be made along with a provision that would lift the debt limit.

The proposal is expected to pass the House, but its fate is much less certain in the Senate, as Mr. Obama and Democratic lawmakers have made clear that they oppose the measure. That has not discouraged Republicans, who see the “cap, cut and
balance” proposal as a popular rallying point.

“That to me is the only plan that will work,” Senator Lindsey Graham, Republican of South Carolina, said on the CNN program “State of the Union.”

No formal negotiations are taking place this weekend. But Congressional leaders, appearing on the Sunday morning news shows, floated a variety of plans, a sign of just how far Congress is from any final deal.

Senator Richard J. Durbin, Democrat of Illinois, backed Mr. Obama’s proposal to cut $4 trillion in federal spending in the coming decade, while Senator Tom Coburn, Republican of Oklahoma, sketched out a proposal, which is to be formally released
on Monday, that will include as much as $9 trillion in reductions.

“We have a terrible track record, Republicans and Democrats alike, of promising to get our spending under control and never doing it,” Senator Coburn said on “Face the Nation” on CBS.

Neither Senator Coburn nor Senator Durbin showed any sign of willingness to compromise, even as they agreed a deal must be reached — and soon.

“We know what we need to do,” Senator Durbin said on “Face the Nation.” “The president does not need to spell it out. We need the political will to do it.”

The debate in the coming days is likely to be dominated by the Republicans’ “cap, cut and balance” proposal, even though Mr. Durbin said it had no chance of getting through the Senate.

Asked why Congress, with the nation at the verge of default, would waste its time on a measure that both sides know is unlikely become law, Mr. Durbin said the Democrats had no choice.

“The Republicans are insisting this debate take place before anything happens,” Mr. Durbin said. “We have to check the boxes.”

(新聞記事転載貼り付け終わり)
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by Hfurumura | 2011-07-19 13:49 | アメリカ政治

ニューヨーク・タイムズ紙の社説とその反論をご紹介します

古村治彦です。

本日は、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された社説とそれに対する反論をご紹介します。

ニューヨーク・タイムズ紙は2011年4月2日付の社説で、ロビイストだった人たちで、連邦議員スタッフや議会スタッフに転身する人の数が急増していることを批判しています。ニューヨーク・タイムズ紙はロビイストとして特定の団体の利益のために働いていた人物が何の制限もなくすぐに議会関係に転職して、法案を書く仕事に就けるのはおかしいと批判しています。

一方、この社説に対する読者からの反論が2011年4月5日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。この読者は、以前連邦下院議員をし、現在は弁護士・ロビイストとして活動しているブルース・モリソンという人物です。彼は、ニューヨーク・タイムズ紙は「議員が操り人形に過ぎない」という点を批判したいはずなのにそこをはっきりと批判せず、迂回する形で、「議員や議会がロビイストをしていた人をスタッフとして採用するのはおかしい」という批判の仕方はおかしいと反論しています。モリソン氏は議員や議会をきちんと批判するべきで、ロビイストやロビイストだった人物を安易に批判すべきではないと主張しています。

私はこ2つの文章を興味深く読みました。そして、モリソン氏のロビイストに関する反論も当たっているが、ニューヨーク・タイムズ紙の批判の向いている先はそれだけではないと思います。ニューヨーク・タイムズ紙はティーパーティー運動に対しても批判をしていると私は感じました。ランド・ポール上院議員やロン・ジョンソン上院議員に対する批判によって、「ティーパーティー運動も結局、ワシントンの慣習に取り込まれているではないか」と言いたいのだろうと思います。

ニューヨーク・タイムズはリベラルな編集方針として知られていますが、アメリカのリベラル派はティーパーティー運動が大嫌いです。今回の社説はいみじくもそのことを明らかにしました。

それでは拙訳をお読みください。

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社説
●媒介者を排除する(Cutting Out the Middleman)

2011年4月2日
ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙

過去6年、ダグ・スタッフォードは、「ナショナル・ライト・トゥ・ワーク・コミッティー」という団体のために働くロビイストだった。この団体は、労働組合に反対する団体であり、資金は実業界や保守系の人々から出ている。2010年、スタッフォードは仕事を変えた。しかし、彼の仕事内容はこれまでと一緒だ。彼は、ケンタッキー州選出の連邦上院議員ランド・ポールの首席スタッフとなった。ポール議員は現在、「ナショナル・ライト・トゥ・ワーク(全米勤労権)」法案の提出を準備中である。ポール議員によると、この法案の中身は、労働者に対する強制的な組合への参加を止めさせ、「巨大労働組合が数十億ドルも政治家に献金するためのマシーンになっている現状を打破する」というものである。

ブレット・ローパーのキャリアもスタッフォードのキャリアとよく似ている。ローパーは医療機器販売企業で作る団体、「アドバンスド・メディカル・テクノロジー・アソシエーション」の役員だった。ローパーはオバマ大統領が提案した医療保険改革に対して、反対の立場から激しいロビー活動を展開した。ローパーは、現在、連邦下院議長ジョン・ベイナーの首席政策顧問として働いている。ローパーは健康保険法の撤廃に向けて様々な努力をしている人々を取りまとめる手助けをしている。彼の仕事の中身は変わらないが、変わったことと言えば、彼の給料は納税者の支払う税金から出ているということだ。

連邦議会の議事堂とワシントンのKストリートを往復するシャトルサービスは長い歴史がある。シャトルサービスの回数はどんどん多くなっている。昨年の中間選挙で共和党が勝利した。それ以降、約100名の議員たちがロビイストたちを首席スタッフや法案作成担当として雇っている。このデータは、ワシントン政治を監視している2つの団体、「センター・フォー・レスポンシヴ・ポリティックス」と「リマッピング・ティベイト」から出されたものだ。ロビイストから議員のスタッフに転身した人の数は過去2年間に比べ、2倍以上になっている。

同時期、連邦議会委員会や小委員会に40名のロビイストたちが採用された。連邦議会の委員会や小委員会はいわば、法律が起草されるボイラールーム(最初となる場所)である。この40名という数字もまた過去2年間に比べて多い数字となっている。

ロビイストから議員スタッフに転身した人たちのうち、数名は民主党の議員たちに雇われた。しかし、大部分は共和党の議員たちのために働いている。アイダホ州で初当選したラウル・ラブラドール下院議員(共和党)は全米ライフル協会のロビイストだったジョン・グッドウィンを首席スタッフとして採用した。フレッド・アップトン連邦下院エネルギー・商業委員会委員長は医療保険企業団体のロビイストだったハワード・コーエンを首席アドバイサーとして迎え入れた。

多くの場合、ロビイストだった人物をスタッフに迎え入れたのはティーパーティー運動から支持を受けた候補者たちだ。彼らはワシントンで行われてきた慣習を打破すると訴えてきた人々だ。ワシントン・ポスト紙はウィスコンシン州の連邦上院議員選挙の様子を記事にしている。その中で、現職だったラス・ファインゴールド議員に対して、ティーパーティー運動の支持を受けたロン・ジョンソン候補は、「ファインゴールド氏は特殊利益とロビイストたちの側に立っている」と激しく批判した。ジョンソン氏は今や連邦上院議員である。ジョンソン議員は、カジノ業界、防衛産業、国内安全保障企業のロビー活動をしていた弁護士のドナルド・ケントを首席スタッフとして迎え入れた。

倫理法の規定では、選挙で選ばれる役職に就いている人がロビー活動を行っている法律事務所などに移ることに制限が設けられている。しかし、ロビイストだった人物が議員スタッフや議会スタッフとなることに何の制限もない。今年スタッフとなった人々はロビイストから議会関係への転職を厳しく禁止べきだと主張している。ロビイストとして実業界、労働組合、その他の団体から数百万ドルを受け取った人物がそのまま議会関係のスタッフとなり、特殊利益を持つ人々のためになる法律を書くということは許されるべきではない。


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投書
●議事堂にいるロビイストたち

2011年4月5日
ブルース・A・モリソン筆
ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙

私は民主党所属の連邦下院議員だった。現在は弁護士とロビイストとして活動している。貴紙の社説「媒介者を排除する」(2011年4月3日付)を読んで、次のような疑問が浮かんできた。この記事では一体何を批判しているのか?労働組合に反対している上院議員が、労働組合の活動を制限する法案を書くために、労働組合に反対する活動をしてきたロビイストを採用している。ロビイストを採用することを批判しているのなら、その上院議員が労働組合に反対している弁護士や、労働組合に反対する論文ばかりを書いている大学教授を雇用することは許されるのか?前もって政策の勉強をしていない哲人王や哲人女王が議会に入るべきだろうか?

貴紙が本当に批判したいのは、連邦上院議員や下院議員が、彼らの雇っているスタッフたちの操り人形に過ぎないということだろう。しかし、ランド・ポール上院議員やジョン・ベイナー下院議長はそうした批判には当たらないように見える。

確かに連邦議会は、様々な人々や団体の小さな利益が衝突し、それによってうまく機能していない。ロビイストたちの増加とロビー活動の激化は一時の現象であり、それは連邦議会がうまく機能しないことの原因ではない。ロビイストやロビー活動に対する規制を強化しても、そうしたルールに従う気のない人々を利するだけだ。解決策は議員選挙に出る人たちとその人たちを支える人たちに対する規制であって、彼らに雇われる人たちに対する規制ではない。

ブルース・A・モリソン
モリソン・パブリック・アフェアーズ・グループ会長
メリーランド州ベセスダ
2011年4月3日記

(終わり)
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by Hfurumura | 2011-04-06 12:46 | アメリカ政治

ケビン・メア米国務省日本部長の発言メモから抜粋:憲法9条の「本音」と「建前」

今、日本で一番有名なアメリカ人はケビン・メア米国務省日本部長でしょう。彼の発言は物議を醸しました。彼が昨年12月にワシントンにあるアメリカン大学の学生たちにしたレクチャーの中身がメモとして明らかにされました。メア氏の発言をまとめた英語のメモはインターネット上にあり、それを読むことが可能です。私も読んでみました。そこから私が重要であると思う部分を抜粋し、翻訳してみました。

(抜粋貼り付けはじめ)

※日本語訳は抜粋者が行った。

・「日本にある米軍基地の半分は沖縄にあると言われている。しかし、統計には米軍が単独で使用している基地しか含まれていない。米軍単独の基地と米軍と自衛隊が共同使用している基地を統計に入れると、沖縄にある米軍基地の割合はずっと低くなる」

・「日米安保条約下、日本とアメリカとの間は非対称的で、アメリカを犠牲にして日本は利益を得ている。米軍が攻撃されても日本は米軍を守る義務はないが、アメリカ軍は日本国民と財産を守らなければならない」

・「集団安全保障(訳註:多数の国々が集団で相互に安全を保証すること)は憲法問題ではなく、政策課題である」

・「沖縄の人々の怒りと不満はアメリカというよりも日本に向けられている。民主党政権は沖縄の人々の考えを理解していない。現在の日本政府は沖縄と話すための“パイプ”を持っていない。私は民主党政権に対して沖縄の人々を紹介しようかと言った時、民主党の幹部たちは『是非是非、お願いします!』と答えた」

・「軍隊がなければ世界はもっと平和になるのに」と3分の1の人間は考えている。このようなアホな人々とは話をすることは不可能だ。

・「2009年の総選挙で民主党が政権の座に着いた。これは日本で初めて起きた政権交代である。鳩山は左翼政治家である。民主党と鳩山首相という2つの障害はあったが、アメリカと日本は2010年5月の2+2で問題の決着を図った」

・「米海兵隊が駐屯する場所はどこにもない。民主党は日本本土に代替施設を建設することを提案してきたが、日本本土に米軍が駐屯できる場所などない」

・「日本の政治家たちはいつでも「建前」と「本音」を使い分ける。沖縄の政治家たちは東京で日本政府と交渉し合意を得るだろう。しかし、沖縄に帰ると、合意などしなかったと述べるだろう。アメリカ大使や総領事たちは常に真実を語るために批判に晒される。それは、日本の文化が常に「本音」と「建前」を使い分けることに終始しているからだ」

・「私は日本国憲法第9条を変える必要はないと考えている。おそらく変更はできないだろう。日本国憲法が変えられることはアメリカの利益にならない。なぜなら日本国憲法が変更されると、日本が米軍を必要としなくなるからだ。日本国憲法が変更されてしまえば、米軍が日本の土地を使用することはできなくなり、アメリカの利益を追求することもできなくなる。現在日本政府が支払っている思いやり予算は大変に高額であり、アメリカの利益になっている。私たちは、日本との間でかなり好条件の取り決めをしているのである」

(抜粋貼り付け終わり)

大変興味深いのは、アメリカは、「自分たちの犠牲の上に日本の安全保障が成り立っている」という思いを持っているということです。しかし、重要なのは、最後のポイントです。憲法9条はアメリカにとっても利益になっていて、変更すべきではないとメア氏は述べています。リチャード・アーミテージ氏などは、日本に対して「憲法を変えるかどうかは日本国民の意思だが、海外に自衛隊を出すように」と述べています。現在、憲法9条がありながら、自衛隊を海外に派遣することができるようになっています。しかし、同時に憲法9条によって日本は戦争を放棄しており、武力を使って紛争を解決することはできません。

自衛隊の海外派遣が開始されていら、戦闘に巻き込まれることはなく幸いでしたが、これからどうなるかは分かりません。しかし、自衛隊が既に海外に派遣されているという事実は変わりません。これは憲法9条が事実上、骨抜きにされているのと同じです。憲法9条はアメリカにとって日本がアメリカに依存し、米軍が日本国内に駐屯するための基礎となっています。これは憲法9条の「建前」の部分です。しかし、裏の部分で、実際の運用の部分で、既に骨抜きにされ、自衛隊が米軍の世界戦略の一環として組み込まれています。憲法9条を厳格に解釈したら自衛隊の海外派遣には問題があると思います。しかし、実際には自衛隊が存在し、海外派遣されています。ここでメア氏の言う「本音」と「建前」の使い分けがなされています。

憲法9条、日本の安全保障が既に「本音」と「建前」によって使い分けられていることを今回の騒動は明らかにしてくれました。このような「本音」と「建前」の使い分け、憲法の条項の緩やかな解釈が認められていることは大変危険であると私は考えます。

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by Hfurumura | 2011-03-11 00:24 | 日本政治

移民の潮流について

アメリカの有力紙、「ロサンゼルス・タイムズ」紙にアメリカで行われた国勢調査を基にした、カリフォルニア州の状況についてまとめた記事が掲載されていましたのでご紹介します。これはカリフォルニア州だけの特徴ではないと思いますが、国勢調査の結果を一言で表すならば、「ヒスパニックの人口は増えている」というものです。

以下に記事によりますと、カリフォルニア州の人種別人口構成は、白人が約40パーセント、ヒスパニックが37.6パーセント、アジア系が12.8パーセント、アフリカ系(黒人)が5.8パーセントとなっています。白人と白人ではない人々の比率が4対6で、カリフォルニアの多数派は非白人の人々となっています。

もう一つの記事もアメリカの有力紙、「ニューヨーク・タイムズ」紙に掲載されていた記事です。これは、リビアの騒乱によって、リビアからヨーロッパに脱出する人々がこれから増えていくことが予想され、ヨーロッパ諸国は苦慮しているというものです。ニューヨーク・タイムズ紙の記事の中で特に興味深い部分は次の部分です。

(引用はじめ)

Col. Muammar el Qaddafi, the Libyan leader, appeared to be playing into such fears in comments he made Sunday.
「リビアの指導者であるムアンマル・アル・カダフィ大佐は先週の日曜日、(引用者註:イタリアの小さな島にリビアからの脱出者が殺到することが予想されるがこの島だけでは移民に対処できないという)恐怖感を煽るようなコメントをしている」

He told the French newspaper Journal du Dimanche that if he should fall, “you will have immigration — thousands of people from Libya will
invade Europe. There will be no one to stop them anymore.”
「カダフィ大佐は、フランス紙ジュルナル・デュ・ディマンシュに対して次のように語った。“私が権力の座から引きずり降ろされたら”ヨーロッパに多くのリビア人が移民するようになる。リビア人がヨーロッパに侵入することになる。私が指導者の立場でなくなれば、こうした動きは誰にも止められないだろう」と。

(引用終わり)

ヨーロッパはキリスト教文化であり、アルファベットを使うという共通点があり、単一的なイメージがありました。しかし、現在、各国ともEU域外からの移民の波に苦しんでいます。サッカーの国際試合でもフランスやドイツに黒人選手がいて活躍しています。また、フランスでは、公共の場でスカーフをすることを禁止することで大騒ぎとなりました。上記のカダフィ大佐の発言は、ヨーロッパの現状を理解しての発言で、「ヨーロッパ諸国が私を引きずりおろしたいなら、リビアからの移民の急増というしっぺ返しがあることを忘れるな」という脅しになっています。この脅しに対して、ヨーロッパ諸国が、「独裁者のたわごとだ」と切って捨てることはできない状況です。移民の急増はヨーロッパにとっての悪夢なのです。

現在、世界の支配してきた、西洋が移民という波に晒され、対応に苦慮しています。サミュエル・ハンチントンは、『分裂するアメリカ』の中で、「アメリカは移民の国であるが、建国者たちが西洋のキリスト教徒文化を国の礎にした以上、それ以外の地域の人々も同化すべきだ」という主張を行いました。文化多元主義に、アメリカ建国以来の名家の出身であるハンチントンはノーを言い、アメリカが建国以来のアイデンティティを失うのではないかという恐怖感と焦燥感を表明しました。

西洋は、今、「国家のアイデンティティの危機」に直面しています。しかし、人類の平等、移動の自由、幸福追求の権利といった個人的な人権は元々ヨーロッパで誕生し、欧米世界で大切に守られてきたものです。しかし、いざ自分たちの近くに移民がやって来るということに対して、理屈抜きで恐怖を覚えているというのが現状です。本音と建前は日本の特徴だ、と言われますが、この本音「移民なんかあっちに行け」と建前「人類は平等で移動や居住の自由がある」の対立で、欧米諸国は苦しんでいます。それは自業自得であるが、人類が発展していくために欧米の人々に経験してもらって何か解決を見つけてもらうために必要な過程ではないかとも考えます。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)

・「カリフォルニア州のラティーノの人口が増加。アメリカ国勢調査の結果によると内陸部で急増」
(California's Latino population increases, Inland areas boom, U.S. Census finds)

2011年3月8日付 ロサンゼルス・タイムズ紙電子版

Southern California's inland counties grew at a rapid clip in the last decade, far surpassing the growth rates of the region's coastal counties, according to U.S. census data released Tuesday.

Riverside County saw a whopping 41% increase in population in the decade, recording 2,189,641 residents in 2010. San Bernardino County saw a 19% increase, with a total population of 2,035,210.

Both counties experienced an explosion of suburban growth in the early part of the decade, only to be hit hard as the economy turned sour and many of the homes fell into foreclosure.

Los Angeles County saw only a 3.1% growth rate over the decade, with a population of 9,818,605. San Diego County grow by 10% and Orange County by 5.8%.

Once again, Latinos saw the largest increases in population over the decade, making up 37.6% of the state's total population. As a percentage of the total population, whites dropped to about 40%.

The Asian population was 12.8% and the black population was 5.8%.

http://latimesblogs.latimes.com/lanow/2011/03/californias-latino-population-increases-inland-areas-boom-us-census-finds.html


・「ヨーロッパは予想される移民の増加に備える」
(Europe Braces for a Possible Migrant Influx)

2011年3月7日付 ニューヨーク・タイムズ紙電子版

About 1,000 North African migrants traveling in a dozen boats reached the Italian island of Lampedusa early Monday, with other small craft headed there, testing the tiny island’s capacity to accommodate them even as Italy and the rest of Europe braced for a possibly far larger influx, news reports said.

Some boats made it all the way to the island, which is about halfway between Tunisia and Sicily, while others were intercepted by the coast guard and taken aboard. None appeared to have left from Libya itself, but Italian officials have warned that the crisis in their former colony could generate an overwhelming flow.

“So far we have contained the impact well despite the very high number of migrants,” Cono Galipo, who runs the refugee holding center on Lampedusa, told Reuters. “Fortunately we had only 314 migrants at the center already, and therefore the numbers have stayed beneath what we consider a critical level.” The center was built to accommodate up to 850 people, but in recent years it has at times housed as many as 2,000, some of them forced to sleep outdoors under plastic sheeting.

The estimated 213,000 migrant workers who have found their way out of Libya since the uprising began — most of them by land to Tunisia and Egypt — constitute only 15 percent of the foreign population there, according to Jemini Pandya, a spokeswoman for the International Organization for Migration. Her group is seeking $49 million to help the refugees.

“We know more migrant workers will flee,” she said. “There are still a lot of people stuck inside the country.”

With no end in sight to the Libyan fighting, U.N. officials said Monday that one million foreign workers who remain in Libya or who have fled by land, sea or air might need emergency aid in coming months: They appealed for $160 million from international donors to provide food, health care, water, sanitation and hygiene.

Lampedusa, a small, arid island, has for years drawn large numbers of refugees seeking a better life in Italy or elsewhere in Europe. The flow from Tunisia swelled to more than 6,000 this year amid the turmoil there. Now the Libyan crisis has brought a new surge.

Many refugees arrive in small, overloaded craft on trips often organized bysmugglers. The boats are sometimes stripped of fittings — including life jackets — to make room for a larger human cargo. Crossings are particularly problematic in winter months, and there have been cases of sinking and drowning.

On the island, new arrivals are fed, given warm clothing and medical care, and screened. They are eventually sent to identification centers on Sicily and in the Italian mainland.

With its thousands of miles of coastline, Italy has for years faced waves of illegal immigrants. In 2009, it renewed an agreement with Tunisia promising financial aid in exchange for added steps to stop would-be immigrants from leaving that country. That pact appears to have fallen apart since the uprising in Tunisia forced President Zine el-Abidine Ben Ali from power.

When one Italian official last month warned of an “unprecedented biblical exodus” from North Africa, some Europeans officials called his language overwrought. But in appealing Monday for more money for emergency aid, a U.N. official suggested that the outward flow was probably far from over.

“This appeal is based on a planning scenario projecting up to 400,000 people leaving Libya — including the 200,000 who have left to date — and another 600,000 people inside Libya expected to need humanitarian aid,” said the official, Valerie Amos, the U.N. humanitarian and emergency coordination chief.

For the people of Lampedusa, the migration is hardly theoretical. The island’s mayor, Bernardino De Rubeis, said that unless the European Union provided more aid and opened its doors wider, Lampedusa and Italy risked being overwhelmed.

Col. Muammar el Qaddafi, the Libyan leader, appeared to be playing into such fears in comments he made Sunday.

He told the French newspaper Journal du Dimanche that if he should fall, “you will have immigration — thousands of people from Libya will invade Europe. There will be no one to stop them anymore.”

Amid reports and speculation that Colonel Qaddafi’s forces have hindered some migrants from leaving, the U.N. secretary general, Ban Ki-moon, expressed new concern about their plight and urged the Libyan authorities to ensure the safety of all foreigners.

U.N. officials now say they expect the Libyan crisis to last more than three months.

http://www.nytimes.com/2011/03/08/world/africa/08iht-evacuate08.html?scp=3&sq=europe%20%20immigration&st=cse

(新聞記事転載貼り付け終わり)
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by Hfurumura | 2011-03-09 13:48 | アメリカ政治