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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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リバータリアニズムの立場からの米軍撤退論②

「私の指揮する沖縄に駐留する全海兵隊員たちは日本の安全を守るためなら喜んで命を捧げる。日本はアメリカを守るという互恵的な関係にはない」と米海兵隊太平洋司令官のキース・スタルダー中将は今年2月に発言した。こんな発言が現在のアメリカでどのように通用し、理解されるだろうか?

アメリカ政府の関係者たちは、アメリカ政府の役割はとても重要だと思いたいのだ。アメリカに依存することを望む国々は喜んで、「アメリカの役割は重要だ」ということを言い続けてくれる。しかし、日本をはじめ、他の人口が多く、経済的に繁栄していて、工業も発達している国々をアメリカが守るというのはアメリカ国民の利益にはならない。

アメリカが半帝国の地位を保てる時代はとうに終わったのである。国の債務残高はすでに13兆ドル(約1170兆円)を超えている。アメリカ政府は今年だけで1兆6千億ドル(約144兆円)の赤字を計上している。これから10年、アメリカ政府の計上する赤字は10兆ドル(約900兆円)に達するだろう。しかもこの数字はその間に銀行や年金基金などの破綻がなければという条件付きである。社会保障と医療保険の赤字は100兆ドル(約9000兆円)を超えている。簡単に言うと、今の状況はアメリカ政府は自国で防衛可能な国を守るために債務を積み重ねている、ということだ。

日本国民の中には、日本の周辺には危険がないとし、過剰な防衛力は必要ではないと考える人たちがいる。他の人たちは、そこまで言い切れるのか不安だと主張している。どちらにしても、防衛は、日本国民が決定することだ。

北朝鮮の持つ軍事能力はどのようなものかはっきりしていない。また彼らの攻撃的な意図は予想がつかない。鳩山前首相は次の様に述べている。「現在の朝鮮半島情勢を考え、その不透明さが沖縄に米軍基地を置いておく理由となる」と。

更に、中国は国力を伸ばしている。中国政府は攻撃的ではなく、受身的だ。しかし、日中両国が所有権を主張する島々をめぐり、争う意思を鮮明にしてきている。その争いが武力衝突までエスカレートしない最良の方法は日本政府がその島々を自力で防衛することだ。

日本の近隣職の中には、第二次世界大戦中の日本の侵略行為を思い出し、日本が軍事能力を持つことを懸念する国が存在する。アメリカ人の中にもそのような心配をする人たちもいる。しかし、日本国民は原罪(original sin)とも言うべき第二次世界大戦での過ちを繰り返さないあろう。侵略戦争を計画し、侵略を実際に実行した人間たちは全員亡くなっている。非武装の
平和維持活動部隊を海外に派遣する時でさえ政治的な混乱が起きるような国が何処か他国を侵略するようなことはない。

とにかく、東アジア各国の日本に対する懸念を和らげる最良の方法は日本と近隣諸国の間に協調を推進する合意と構造を構築することだ。韓国、オーストラリア、インドなど民主政体の国々はアジア太平洋地域が平和で経済的に繁栄を保つために日本と協働していきたいと思っている。それは日本にとっても利益となるし、地域の平和と繁栄のために日本は多大な貢献ができる。日本政府は自国の防衛のためにほとんど何もしないと決めているようだ。しかし、アメリカに防衛を負担してもらおうとすべきではない。

米軍が沖縄に駐留していることは日本を超えて東アジア地域全体の安定に寄与しているという主張がよくなされている。しかし、この主張には根拠が薄弱だ。ヘリテージ財団のブルース・クリングナーは次のように主張している。「沖縄に駐留している米海兵隊はアジアで危機が起きた時のアメリカの対応にとっての欠かすべからざる重要な要素となる」と。しかし、第三海兵遠征軍(the 3rd Marine Expeditionary Force,MEF)は軍事的能力は高いが、東アジア地域で危機が起きた場合、何もすることがないと言える。

第三海兵遠征軍は軍人の数が多い韓国を支援する必要はない。韓国軍は北朝鮮からの攻撃を防ぐ能力を持っている。米海兵隊はもしアメリカが中国と戦争状態に入った場合も有効な使い道がない。彼らが役立つとすれば、国防総省が北京の天安門広場に急襲上陸をして毛沢東の霊廟を確保するという作戦を立てた時だがそんな馬鹿げたことはない。米中間で、台湾、もしくは
所有権を争っている島々を巡る紛争が起きる場合、アメリカは空軍と海軍を主に投入する。インドネシアでの反乱、ソロモン諸島やフィジーでの内戦、タイ、ビルマ、カンボジアとの間の国境紛争などアジア・太平洋地域では不安定要因が存在するが、それらにいちいち米軍を派遣するのは愚かで、馬鹿げたことだ。

アメリカ空軍前参謀長だったロナルド・フォグルマン大将は次のように語っている。「沖縄にいる米海兵隊は米軍全体の軍事計画に対して何の貢献もしていない。海兵隊は沖縄に駐留する必要はない。戦争計画の中で彼らが派遣される時間などが決められるが、作戦遂行において、彼らが沖縄に駐留している必要はない。私は彼らがカリフォルニアに帰れば良いと思っている。彼らがカリフォルニアに帰りたがらないのは、彼らがカリフォルニアに帰ってしまうと、“海兵隊に2万人も必要な理由は何か”という疑問をアメリカ国民が持ってしまう恐れがあるからだ」

沖縄に米軍基地があることで東アジアの各国の軍事費を抑える効果があるのだろうか?これは検証されたことがなく、ただの思い込みと言ってよいだろう。たとえ東アジア各国の軍事費が抑制されているとしても、それがアメリカの利益とは言えない。中国の近隣諸国にとって、中国に責任のある外交・軍事政策をとらせる最良の方法は、充分に軍事力を高め、近隣諸国間で協力関係をしっかりと結ぶことだ。二国間もしくは地域の争いをアメリカの介入で収めるようなやり方はすべきではない。

アメリカが東アジア地域の平和に関与しないというのは何も日本人とアメリカ人が経済的、文化的つながりを断つとか、日米両政府が安全保障問題で協力をしないなどということではない。それは、アメリカが日本の安全を保証したり、日本の国土に米軍を長期にわたり駐屯させる理由はもはや存在しないということなのだ。

オバマ政権の外交政策は前任のブッシュ政権の外交政策のように恐るべきものとなっている。アメリカ政府は世界を支配しようとしているし、同盟諸国に対し自分の希望を押し付けている。

このような外交方法を採っていると、長期で見ればアメリカは自壊してしまうことになるだろう。経済的に豊かになり、影響力を持つようになった同盟諸国が防衛政策を自国の思い通りにやりたいと主張してきた時にのみ、アメリカの傲慢さはある意味で、功を奏したと言える。しかし、そうでなければ、アメリカ政府が経済的に繁栄し人口も多い国々を防衛することは、アメリカを国家破産の危険にさらしているのと同じなのだ。

アメリカ政府は外国への関与と海外での米軍の展開を縮小しなければならない。日本はまずその手始めとしては良い場所である。


ダグ・バンドウ(Doug Bandow):ケイトー研究所上級研究員。レーガン大統領時代には大統領特別補佐を務めた。著書に『罠:
変化し続ける時代の韓国とアメリカの外交政策』(ケイトー研究所刊)、共著に『朝鮮半島問題:南北朝鮮とアメリカの困った
関係』(パルグレイブ・マクミラン社刊)がある。

(終わり)

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by Hfurumura | 2010-06-21 19:23
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