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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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甲子園を巡る悲しい話

現在、兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場では全国高等学校野球選手権大会が開催されています。ベスト8が出そろい、これから佳境に入っていきます。甲子園大会は夏の風物詩となっています。高野連に対して言いたいことがありますが、今回は、本当に悲しい話がありましたのでこれについて書きたいと思います。

現在、沖縄県代表の興南高校は好投手島袋君を擁し、勝ち進んでいます。沖縄県代表のチームの試合となると、沖縄民謡や歌謡曲が数多く演奏され、大変にぎやかです。今年は、沖縄民謡の中でも多くの人々に知られている「安里屋ユンタ」も演奏され、沖縄らしさを存分に楽しむことができます。

しかし、以下の記事にあるように、沖縄を代表する名曲中の名曲「ハイサイおじさん」が2回戦から演奏されていません。これまで「ハイサイおじさん」の軽快なリズムと指笛の高音はまさに沖縄県代表チームの象徴とも呼べるほど全国に定着しています。

この「ハイサイおじさん」が「教育的指導」によって演奏されないようになったというのです。以下の記事によると、今年7月に沖縄の地元紙に「ハイサイおじさん」の歌詞が酒ばかり飲んでいる近所のおじさんをちゃかす内容で高校野球にふさわしくない、という内容の投書が寄せられ、興南高校野球部OB会が使用自粛を決めたというのです。

これは何と底意地の悪い、投書でしょう。この投書を行った人はおそらく「ハイサイおじさん」のできた経緯も知らず、そこに込められている意図を理解できなかったのでしょう。ちょっと深読みをすると、投書された内容と時期を考えると、この「ハイサイおじさん」を作った喜納昌吉氏(当時、改選を迎えた民主党参議院議員)に対するネガティブ・キャンペーンとも言えます。

「ハイサイおじさん」は1976年、喜納昌吉&チャンプルーズが発売した名曲です。その内容はある少年と近所に住むどうしようもないおじさんの掛け合いです。それを沖縄方言で表現しており、沖縄方言を知らないとその内容は理解できません。しかし、アップテンポなリズムを聞いていると、体が動いてしまうという曲です。

この「ハイサイおじさん」は表面上は、朗らかで、だらしない感じがしますが、その裏には悲しい話があります。この曲は、喜納氏の実体験を基にしています。彼の近所にどうしようもないおじさんが住んでいました。その人は遊郭や盛り場をほっつき歩いてばかりいる、ダメ人間になりました。それは、そのおじさんが全てを失ったことのショックのためでした。そのおじさんの奥さんが沖縄戦の凄惨な経験を経て、精神に異常をきたし、戦後、自分の娘の首を切断して殺害するという悲しい事件を起こしてしまいました。それ以降、そのおじさんは酒浸りになってしまいました。

こうした背景を知れば、単純な馬鹿馬鹿しい内容の歌ではないことが分かります。そして、歌詞にはそこはかとない悲しみが漂っていることも分かります。そして、そうした悲惨な背景を持ちながら、アップテンポな曲調であることの重みが分かるはずです。

だいたい、「教育的指導」などということは抑圧でしかありません。これは戦時中と何が違いますか。そしてそれを利用して「自粛」などをする。本当に情けない話です。

違う見方をしたら、「ハイサイおじさん」だけを教育的指導で取り締まるのは不公平です。恋の歌も教育的に良くないでしょうから(不純異性交遊を助長するでしょうから)、高校野球の応援には使ってはいけないということになります。それなら国語の古典の時間に万葉集や古今和歌集を勉強することも不可です。国語の教科書に村上春樹の作品の抜粋が掲載されていますが、あれはどうなのでしょう。「教科書に載るほど立派な作家さんなら他の作品も読んでみよう」ってなったら、どうするんですか。夏目漱石はどうですか。『それから』とか『こころ』は教えて良いんですか。森鴎外の『高瀬舟』は?漢詩に酒を飲む内容の物はいっぱいありますが?アホらしい。

今回の話は本当に恐ろしく感じました。「教育的指導」の名の下で、沖縄歌謡曲の名曲が否定されました。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「【甲子園・夏】あの名曲…応援歌「ハイサイおじさん」が教育的指導で消された」

2010年8月18日付 MSN産経ニュース
2010.8.18 12:27
 
 甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれている第92回全国高校野球選手権大会で、準々決勝進出を果たした興南高校(沖縄)のアルプススタンド応援席から、沖縄代表の定番応援歌「ハイサイおじさん」が、ピタリと消えた。理由は、酔っぱらいおじさんを扱った歌詞が高校野球にふさわしくないという“教育的指導”。興南高校は18日の準々決勝第2試合に登場するが、おなじみのメロディー復活を求める声は根強い。

 1通の投書きっかけ…全国のファン復活望む声

 「ハイサイおじさん」は、約30年前に沖縄で生まれた歌謡曲。25年ほど前、沖縄出身で兵庫県尼崎市内の中学校で音楽教諭をしていた羽地靖隆さん(62)が、甲子園に出場した沖縄勢を応援するため、生徒たちと演奏したのが始まり。独特のリズムが人気となり、沖縄県勢共通の応援曲となった。

 ところが今年7月、地元紙に、「遊郭を遊び歩く酒飲みおじさんをからかう原曲の歌詞が、高校野球にそぐわない」という内容の投書が掲載されたことから、興南高校野球部OB会が使用自粛を決めた。

 代わりに用意されたのが「ヒヤミカチ節」。戦後の沖縄を元気づけようと作曲され、祝い事で流れる地元ではおなじみの民謡だ。「アップテンポな曲調や前向きな歌詞が応援歌にふさわしい」と、野球部OBの仲村智(ち)成(せい)さん(51)が提案。アレンジや練習が間に合わず、甲子園が“初登板”となり、羽地さんも演奏の指導に力をこめる。

 1回戦ではこの新曲の準備が間に合わず、「ハイサイおじさん」が一度だけ流されたが、2回戦からは演奏されず、大会期間中は使わない方針。

 ただし、全国のファンや興南高校応援団から「新曲もいいが、ハイサイおじさんをやらないのは寂しい。リズムだけでも残してほしい」との要望は強く、興南高校の教諭も「生徒から演奏したいという声はある」という。

 仲村さんは「『ハイサイおじさん』をやるかやらないかは出場校次第だが、『ヒヤミカチ節』も慣れてくると思う。こちらも沖縄代表の応援歌になってほしい」と期待をこめる。

(新聞記事転載貼り付け終わり)
by Hfurumura | 2010-08-18 14:17 | 日本政治
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