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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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2012年アメリカ大統領選挙:バラク・オバマ大統領が再選される

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社



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 2012年11月6日(アメリカ時間、日本時間では7日)に、アメリカ大統領選挙の投開票が行われました。結果は、民主党(Democrats)のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領が、共和党のミット・ロムニー(Mitt Romney)候補を破り、再選されました。現在もまだ投票の集計が行われていますが、既に、ミット・ロムニー候補は、オバマ大統領に電話をかけ祝意を示し、敗北宣言を行いました。

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 現在、フロリダ州では、オバマ大統領が412万9360票(49.8%)、ロムニー候補が408万3321票(49.3%)という結果になりました。従って、獲得選挙人数は、オバマ大統領が332、ロムニー候補が206となりました。前回が365対173ですから、オバマ大統領の圧勝という訳ではありませんが、完勝と言えるでしょう。

 選挙人数は大きな差が付きましたが、得票数は接戦でした。オバマ大統領が約5823万票、ロムニー候補が約5616万票を獲得しました。その差は、全米で約200万票です。割合で言えば51対49です。このブログでも紹介したように、アメリカの大統領選挙は選挙人の獲得数を争うもので、直接選挙ではありません。ですから、得票数の差以上に、獲得選挙人数の差が出てしまいました。

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 全米規模の世論調査の数字を過度に評価すると、事前の予想を間違うこともこの選挙人システムのせいです。直接選挙ではないし、各州で選挙人の総取りのシステムですから、各州の世論調査を見ていかないと、予想を間違うことがあります。今回も、日米のネオコンの人々が自分たちの希望をまぜながら、ロムニー氏有利の情報ばかりを既存メディアとSNSで垂れ流し続けた結果、選挙戦の報道自体は大変面白くなりましたが、ネオコンの人々は恥をかくということになってしまいました。

 今回の大統領選挙は、結果として、オバマ氏の圧勝のように見えますが、私は、ロムニー候補の善戦であったと言えると考えます。得票数を見てもオバマ大統領約5800万票、ロムニー候補約5600万票で、その差は僅か200万票でしかありませんでした。選挙人数で言えば、激戦州のうち、ロムニー候補が獲得すると思われていた、ヴァージニア州とフロリダ州を僅差でオバマ大統領に逆転されてしまい、差が付きましたが、それがなければ、290対248となるところでした。

 ロムニー候補の敗因はこれからいろいろと分析がなされると思いますが、私が考える一番の要因は、穏健派が共和党の主流を追い出されている現状であると思います。ロムニー候補も元々は穏健な人であり、マサチューセッツ州知事時代も穏健な政策を実行した人です。

 しかし、現在の共和党の主流派は穏健派でありません。ティーパーティー運動、宗教右派、ネオコンといったある意味で「極端な」人々が共和党の主流派を占めています。こうした人々の支持を得られなければ、共和党の大統領選挙予備選で勝利を得て、大統領選挙の候補者にはなれません。しかし、ここで候補者にとって悩ましいのは、大統領選挙の候補者になって、共和党主流派が支持してくれた公約を変更することはできないし(もし変更したら核となる支持者を失います)、かと言って、そのままでいけば、穏健な政策を望む有権者の支持を得られないということです。これでは勝てません。

 ロムニー候補はこのジレンマに悩まされたと思います。こうした不利な状況(時には敵よりも味方の方が邪魔になる)で、ロムニー候補は、オバマ大統領に対する批判票を集め、接戦に持ち込んだという点は、ロムニー候補の力が大きかったと思います。しかし、彼の周りに集まるアドバイザーたちは、ネオコンで、そういった点で、不利になったと思います。こうした不利な状況下、ロムニー氏は良く健闘したと言えます。

 このジレンマ(共和党の大統領候補にはなれても選挙に勝てない)は、ロムニー候補の個人から出た問題ではなく、共和党全体の問題です。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領とその補佐官カール・ローヴ(Karl Rove)以来、共和党は右旋回をしてきました。そして、穏健派は主流派ではなくなりました。そして、大統領選挙では2連敗ということになりました。もし、ブッシュ前大統領が2000年にごちゃごちゃの間にうまく大統領になれていなければ、1992年からずっと連敗したことになります。

 1980年から民主党は大統領選挙で3連敗しました。これに危機感を覚えた若手たちが、デモクラッツ・リーダーシップ・カウンシル(Democrats Leadership Council)という組織を結成しました。そして、この組織から、ビル・クリントン(Bill Clinton)やアル・ゴア(Al Gore)といった人物たちが出てきました。共和党も現在、人材(大統領選挙に勝てる人材)不足です。予備選を見ても人材不足は明らかでした。共和党も右旋回を少しずつでも修正し、穏健派を惹きつける人材を育成しなければなりません。

 第二次世界大戦前後、アメリカ国内政治を見てみれば、民主党のフランクリン・D・ルーズベルト、ハリー・トルーマンに対して共和党は負け続けてきました。戦時中という特殊な環境ではありましたが、民主党に全く歯が立ちませんでした。しかし、共和党は、ドワイト・アイゼンハワーを候補者とし、ついに民主党の牙城を崩しました。

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 現在の共和党には、アイゼンハワー(愛称:アイク)のような人物の登場が必要なのです。

(終わり)

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所


by Hfurumura | 2012-11-07 19:34 | アメリカ政治
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