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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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スーザン・ライス擁護論:フォーリン・ポリシー誌から③

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



※この記事に出てくるスーザン・ライスについては、拙著『アメリカ政治の秘密』で詳しく紹介しております。興味をお持ちの方は是非お読みくださいませ。

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スーザン・ライス擁護論:フォーリン・ポリシー誌から③_c0196137_15204438.jpg


●対イラン経済制裁(Iran sanctions)

 共和党はスーザン・ライスがイランに対して弱腰であると主張している。共和党は、ライスが国連大使を務めてきた4年間で、イランに対しての経済制裁を行うための国連決議を1つしか採択できなかったと言って批判している。また、ライスは、中国とロシアに対して宥和的すぎ、対イランの経済制裁について両国を説得して新たな制裁を科すということを怠ったと主張している。

 中国とロシアが新しい国連決議の採択を阻止してきたことは確かである。オバマ政権では、ブッシュ政権時に比べて、国連決議の採択の数が減少している。そして、オバマ政権は、イランの核開発プログラムを阻止できないでいる。これは事実である。しかし、これまでに科してきた経済制裁で、イランはかなりの痛手を被ってきた。イランの輸送産業は生き残りのために奮闘している。また、イランの通貨の価値が急降下している。

 オバマ政権がイランに科している経済制裁で最も有効な部分は、イランの船舶の航行禁止と金融に対する制限であるが、共和党は、これらの政策は共和党が政権を担っている時に導入したと主張している。しかし、彼らが認めなければならないことは、実際に実行しているのは民主党政権である。

●人権に関する問題(Human rights questions)

 共和党は、ライスの国家安全保障を担う資格について疑義を表明している。しかし、アメリカ国民は、それに対してあまり関心を持っていない。それは、ライスのイラン、北朝鮮、中東などの外交上の重要問題に対する姿勢が共和党とそれほど変わらないからである。しかし、ライスは、人権活動家たちから厳しく批判されている。活動家たちは、ライスが世界普遍価値に対して一貫した姿勢を取っていないと批判している。ヒューマン・ライツ・ウォッチの事務総長ケネス・ロスは、最近私に次のように語った。「スーザン・ライスは、アメリカの敵国が絡んだ人権侵害に対する時は大変強硬な姿勢を取る傾向があります。しかし、ルワンダやイラクのような友好国、あるいはスリランカのような中間国が絡んだ人権侵害の場合、彼女は余り強硬な姿勢を取らないのです」

 ワシントンにおいて、スリランカが外交政策の議論のテーマになることはほとんどない。しかし、長年続いた内戦の最終局面は2009年5月に終わった。しかし、オバマ政権下で、最も悲惨な状況が生み出されている。国連が行った内部調査は、スリランカの状況に関して、国連の事務局が市民を守るという義務を果たさなかったという結論を出している。内部調査はまた、国連安保理(ライスがアメリカを代表して参加している)もスリランカで起こった悲惨な暴力行為を止めるために必要な行動を取らなかったとも結論付けている。スリランカでは内戦終結後、主にスリランカ軍によって4万人から7万人の一般市民が虐殺された。私は当時、この事件に関するライスの反応を記事に書いた。

 スリランカ政府は、今年2012年、タミル・イーラム解放の虎(LTTE)に対して最終総攻撃をかけた。メキシコとオーストリアが最初に国連安保理に対してこの総攻撃への注意を喚起した。フランスとイギリスはそれぞれ外相をスリランカの首都コロンボに派遣し、スリランカ政府に対して攻撃には抑制を加えるように圧力をかけた。アメリカ政府は、国連安保理に対してスリランカで起きている危機に注意を促す努力をした。この努力に対して中国とロシアは反対の意思を表明した。アメリカ政府はこれら両国と妥協し、国連の場でスリランカ国内での軍事衝突について議論することに合意した。

 インターナショナル・クライシス・グループの副会長ファビエンヌ・ハラは「アメリカ政府はスリランカで起こった危機、特に武力衝突の初期段階に対して沈黙を守った。これはおかしい。オバマ大統領は選挙期間中、世界の人権侵害を阻止すると述べていたが、それを実行していない」と述べた。

 ライスはこのような批判に対して反論して、次のように述べている。「私は、アメリカ政府はスリランカの危機に対して声を上げています」と。ライスは、さらに続けて次のように述べている。「アメリカは、スリランカに特使を派遣して、アメリカの懸念を明確に伝えています。また、難民問題担当国務次官もスリランカを訪問し、総攻撃の状況を評価しています。ヒラリー・クリントン国務長官はスリランカの国内状況に個人的に大きな関心を持っています。アメリカは明確に、首尾一貫して、原則に則って状況に対処していると思います」

●M23問題(The M23 problem)

 共和党はベンガジ事件を使ってスーザン・ライスを攻撃している。人権団体は、M23問題を使ってライスを攻撃している。スーザン・ライスはクリントン政権で国務次官補を務めていた。そして、ライスはこれまで多くのアフリカ諸国の指導者たちと緊密な関係を築いてきた。その中でも、ルワンダのポール・カガメ大統領とはとくに緊密である。カガメは、1994年にルワンダで発生した大量虐殺を終息させた武装勢力を率いた将軍だった。

 カガメ政権率いるルワンダは、それ以降、アメリカの友好国となった。しかし、カガメ政権は、ルワンダ国内と近接している東部コンゴで反対勢力に対して報復攻撃を行い、大量殺人を行ったことに対して国連は調査をしたいと考えている。国連安保理が東部コンゴに科した武器の禁輸が機能しているかどうかを調査するために立ち上げた独立調査委員会は、今年の夏、ルワンダ軍が「M23」を自称するグループに軍事援助をしているという報告書を提出した。M23は、東部コンゴの大部分を支配下におさめようとして活動しているグループだ。

 M23によるゴマ近郊での大攻勢に対して、スーザン・ライスは、今日の午後、複数のツイートを行い、M23の軍事行動に「ゾッと」していると述べた。M23は、夜間暗視装置や自動車を使って大攻勢をかけた。ライスは、M23に対しての経済制裁の強化を提案し、コンゴの「M23の攻勢を撃退する」努力を支持すると表明した。国連安保理に参加している複数の外交官たちは次のような情報を私に教えてくれた。非公開の場では、ライスとアメリカの外交官たちは、独立委員会の報告書からルワンダを非難する文言を削除するように求めた、ということだ。

 コンゴの駐フランス大使アトキ・イレカは、今年9月に私の取材に答えて次のように語った。「私の考えでは、ライス大使は現在のルワンダ政府、キガリ政権に近すぎるようです。もっと率直に申し上げれば、彼らはルワンダを擁護するために何でもなっているという印象です。私たちは、アメリカが圧力をかけてルワンダが望むような行動が取れるようにしていることを知っています。そして、私たちが独立委員会が報告書を出していることを公にしなければ、報告書の存在が知られることはなかったでしょう」

 私は今年9月、ワシントン・ポストの記者として、ライスにインタビューを行った、その中で、ライスは次のように語った。「私が報告書の公開を阻止しようとしたというのは正しくありません。私は、公平を期して、ルワンダに反論のチャンスを与えるために、報告書の公開を遅らせるように求めただけです。また、私は、ルワンダがコンゴに対して行った不当な介入を批判しています」

※コラム・リンチ:フォーリン・ポリシー誌「タートル・ブログ」著者。ワシントン・ポスト紙国連担当記者。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


by Hfurumura | 2012-11-24 15:19 | アメリカ政治
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