人気ブログランキング | 話題のタグを見る

翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
スポーツ
社会
アメリカ政治
宣伝
国際政治
pivot to Asia
中国政治
福島
日本政治
個人的なこと
学問
未分類
以前の記事
2013年 11月
2013年 10月
2013年 07月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
お気に入りブログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


都市部を固める民主党、地方を固める共和党:アトランティック誌から②

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



 2000年から2004年の間に、選挙に関わる地図はほとんど変化していないように見える。例えば、共和党が強い州でも、毎年民主党が根強い州がいくつかある。2004年と2008年の選挙結果を比べてみても、大きな違いというのは、いくつかの選挙区での勝敗の差といったものである。クリントン大統領時代と2008年、民主党の支持率は大きく上昇した。これは印象的であった。しかし、これも、現在の民主党の軸、基盤となっている都市部に沿ったものだった。

 長年、こうしたことは続いている。都市部と地方は、選挙のたびに支持が入れ替わるほんの少しの郡をめぐって争っているのだ。本当の意味で、有権者の支持政党の交代という現象は起きていない。アメリカの都市部と地方との間の分裂が大きくなるにつれて、ただ、常に綱引きが行われるという感じになっている。

一般投票の数を拡散してみて、ミシガン大学の物理学教授マーク・ニューマンが作成した選挙の統計地図は、人口密度を基にした民主党が強い郡の力を示している。ニューマンの作成した地図は、これまでの選挙に関する地図の裏に隠されてきた真実を描き出している。そして、民主党支持の郡は数が少ないのに、地理的に広いエリアを持つ共和党支持の郡に優越してきたのかという理由も明らかにしている。

都市部を固める民主党、地方を固める共和党:アトランティック誌から②_c0196137_057117.png


 しかし、この地図は大事な点を示していない。都市が重要なのはその位置ではなく、物理的な環境のためである。下にある地図は、アメリカで出現しつつある「メガ地域」を示しているが、この「メガ地域」と上にある地図の青の部分は重なっている。

都市部を固める民主党、地方を固める共和党:アトランティック誌から②_c0196137_0574138.png


 時間が経つにつれて、リベラルな都市部は人口を増やし、その結果、同性婚の許可といった新しい州法の制定や裁判所の判決に影響を与えるようになっている。こうした州法は、連邦法律と対立する内容であるが、その他の州もこうした州法の導入に続いていく。こうした州法に関する住民投票は常に議論を巻き起こすということはない。例えば、2010年、ミズーリ州では提案Bと呼ばれる議題が住民投票にかけられた。これは、犬のブリーダーたちが開催するショーを規制するものであった。こういったものはあまり激しい議論を巻き起こさない。しかし、こうした州法の提案や住民投票は、都市部とそれ以外の地域との間で深刻な分裂を引き起こす。一方で、同性婚を禁止する州憲法を持っているのは、サウスダコタやアイダホといった、アメリカでも人口密度の低い州である。

全米州議会会議によれば、2012年11月6日の投票日では、37の州で174の選挙と住民投票に参加しなければならない。住民投票にかけられた問題は、ギャンブルからマリファナ、死刑に関することまで幅広かった。174という数字は歴代2位の多さである。また、今回の選挙では、オバマケアと同性婚といった連邦議会を通過した法律に反対するかどうかの投票という重要なものであった。各州の州法は将来の連邦法の基礎となるものだ。各州の州法の間で大きな隔たりがあると、一つに集約は難しい。しかし、各州それぞれが違った方向性を持って作った州法がそれぞれの重要性を持つことが、アメリカを特徴に持たせているのだ。下の図は、アメリカ各州の同性で行えることや同性愛者に対する保護に関する立法環境を示したものである。

都市部を固める民主党、地方を固める共和党:アトランティック誌から②_c0196137_0581515.png


 今年の選挙後、全50州のうち、大体半分が、同性婚、マリファナ使用、自殺ほう助の中のいくつか、もしくは全部が実施されている。アラバマ州、ミズーリ州、モンタナ州、ワイオミング州の有権者たちは、もう一つの生活スタイルに関する法律であるオバマケアを禁止する州法を通過させた。オバマケアに反対した州の全ては同性婚とマリファナ使用を禁止している。モンタナ州では、州政府は州民が健康保険を購入することに補助はしないが、自殺はほう助してくれる。アメリカ人の多くが健康保険の購入が強制される州に住んでいる。しかし、自分で自分の人生を終わらせること、自分が愛する人と結婚することは許されていない。

 連邦主義はアメリカを結びつける偉大な制度である。そして、時節が至れば、アメリカの新しいコンセンサスが生まれることだろう。しかし、アメリカは良くなる前に、ますます分裂していくだろう。選挙後、20州以上に住む、10万人以上のアメリカ市民がホワイトハウスに対して、アメリカから離脱したい旨の請願書を書いた。

 この動きに対して、専門家の中では、150年前に起きた南北分断のような、新しい離脱の動きなのではないかという懸念が起きている。そして、選挙のたびにアメリカの分裂が拡大していることを嘆く声も出ている。しかし、新しい分裂は、州境にそって起きているのではなく、州の内部で起きているのだ。そして、州が連邦から離脱するという考えは、今や、少数の不平を持つ人々の絵空事以上のものではない。コネチカット大学で南北戦争以前のアメリカ市の研究をしているロバート・フォーブス教授は、アメリカの分裂の恐怖は誇張されていると述べている。

フォーブスは次のように語った。「1860年のアメリカと比較したら、現在2012年のアメリカはユナイテッド・カラーズ・オブ・ベネトンと言った方が良いかもしれませんね」

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


by Hfurumura | 2012-12-02 00:59 | アメリカ政治
<< ブレジンスキーからオバマ大統領... 都市部を固める民主党、地方を固... >>