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翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
by Hfurumura
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最後まで自説を曲げなかったヒラリー:アトランティック誌から

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社



ヒラリー・ドクトリン(The Hillary Doctrine)

デイヴィッド・ロード(David Rohde)筆
アトランティック誌(The Atlantic)
2013年1月25日
http://www.theatlantic.com/international/archive/2013/01/the-hillary-doctrine/272511/

 党派の戦いの場である議会の場はやはり一流の人間が集まる場所であった。ランド・ポール(Rand Paul)上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、「可能ならば、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)を首にする」と言い放った。ロン・ジョンソン(Ron Johnson)上院議員(ウィスコンシン州選出、共和党)は、ベンガジ事件に関し、オバマ政権はアメリカ国民を間違った方向に導いたと主張し、ヒラリー・クリントンは怒りをもって反論した。ジョン・マケイン(John McCain)上院議員(アリゾナ州、共和党)は、国務省が職員の安全に関してぞんざいな対応をしていたことに怒りを持ち続けている。マケインの怒りは正しい。

 議員たちは様々な態度を取っている。しかし、一つの疑問が浮かび上がってくる。それは、「北部、西部アフリカを席巻した武装勢力とアメリカは対峙しなければならないが、そこにどんな戦略があるのか?」というものだ。ヒラリーは、マケインとの緊張感あふれるやり取りの中で、次のような悲しくなる発言をした。

 「私たちは一致団結してことに臨まねばなりません」

 アメリカの政治家たちはアメリカの外交官たちの安全に関心を集中させている。これは正しいことだ。一方で、アフリカのイスラム教系のテロリストたちと戦ううえで重要なのは地元の政治家と軍隊だ。アメリカと同盟諸国はイラクとアフガニスタンで警察と軍隊のトレーニングを行ってきた。現在、その成果が試されているところだ。アフリカでもまた試される日が来るだろう。

 フランスがマリに介入して10日後、西アフリカの国であるマリでも私たちアメリカ人にはお馴染みのパターンが出現しつつある。アメリカ人ジャーナリストのピーター・ティンティは、電話インタビューの中で、ディアバリの住民たちがイスラム聖戦主義者たちをディアバリから退散させたフランス軍の空爆の後に「興奮」していた様子を語った。

 「地元の人たちはフランスの空軍能力が凄いことについて話したがっていた。地元の人たちによると、フランスの戦闘機はテロリストのトラック群は攻撃し破壊したが、近隣の住宅には被害を及ぼさないほどだったそうだ。彼らはフランス空軍の正確な攻撃に驚いていた。私が知る限り、公式には非戦闘員から死傷者が出ていないようだ」

 このような成果の後には、えてして人道主義による介入が起きる。外交官たちと海外支援の活動家たちは、介入後、世界の善意と影響力が最高潮に達する最高の瞬間について語る。1995年、NATOはセルビア人勢力に最初の空爆を加えた。この時、ボスニアのイスラム教徒たちは喜んでいた。2001年、アメリカはアフガニスタンに攻撃を加え、タリバンを追い落とした。この時、アフガニスタンの人々も喜びを表明した。2003年、アメリカはイラクに侵攻し、サダム・フセイン大統領を警護する共和国防衛隊を壊滅させた。この時、イラクのシーア派の人々はアメリカを応援した。問題は、このようなことが起きた後に何が起きるのかということだ。

 水曜日に行われた公聴会で、ヒラリー・クリントンは彼女の中にあるジレンマを次のように語った。

 「世界でアメリカ軍の能力と勇敢さに匹敵する軍隊は存在しません。しかし、私たちが直面している問題の多くは、軍事力だけですぐに、完全に解決できるということはありません」

 ティンティは、ジャーナリストになる前、マリ北部で平和部隊(Peace Corps)のヴォランティアをしていた。ティンティはマリ国内の政治状況がアフガニスタンとよく似ていると指摘している。イスラム聖戦主義者たちは国内では人気がないが、政府は弱体化している。マリの地方幹部の多くが国民の信認を失っている。マリ軍と治安維持部隊は機能不全に陥っている。トゥアレグ族やその他の人々は自治権を要求しているが、長年にわたり実現していない。そして、ヨーロッパへコカインを輸出する麻薬取引がこれら全てを悪化させている。

最後まで自説を曲げなかったヒラリー:アトランティック誌から_c0196137_1947373.png


 ヒラリー・クリントンは、公聴会で、ソマリアとコロンビアがマリにとっての良い具体例になると発言した。クリントンは、「アフリカ連合(African Union)によるソマリア・ミッション(AMISOM)」に対してアメリカは資金援助を行っており、これが徐々にではあるが、アル・ハシャブやその他のイスラム原理主義勢力の駆逐に役立っていると主張した。コロンビアでは、コロンビア政府がコロンビア革命軍と麻薬組織の駆逐に成功しつつある。

 ソマリアでもコロンビアでも後退している部分はあり、努力が完璧な形で実を結んでいるという訳ではない。しかし、国際社会からの資金援助とトレーニングを受けている地域の警察や治安維持部隊は徐々にではあるが、成果を出し始めている。

 クリントンは公聴会で次のように発言している。「私たちがやらねばならないことは、長期にわたり、北部、西部アフリカにとどまり、問題解決に努力しなければならないと認識することです。これは、アメリカが歴史的に無視、もしくは軽視してきた地域に注意を払わねばならないということを意味しているのです」

最後まで自説を曲げなかったヒラリー:アトランティック誌から_c0196137_1948982.png


 熱を帯びたやり取りの中で、マケインは、ヒラリーとオバマ政権に対して、リビアの軍隊と警察に十分なトレーニングをしてこなかったと批判した。ヒラリー・クリントンは、この批判に対して、オバマ政権は、リビアの治安部隊へのトレーニングに対する予算を求めたが、連邦下院の共和党が請求を拒絶したのだと反論した。

 「リビアの軍隊と警察をしっかりとしたものとするためにリビア政府を手助けすることが最優先事項であり、私たちがそれに本気で取り組もうとするならば、私たちは協力しなければなりません」とヒラリー・クリントンは述べた。

 ヒラリーの述べたことが正しい。また、マケインの批判も正しい。議会での政治的な駆け引きが国務省の邪魔をしたのだ。そして、国務省はベンガジで大きなミスを犯した。私はこれまでクリントンを批判してきた。しかし、ヒラリーは、中東における脅威については正しい認識を持っている。

 ヒラリー・クリントンは中東を席巻している変化に言及し、次のように述べている。「私たちは新しい現実に直面しています。私たちは誰も予想しなかった事態に対応しなければなりません。そして、私たちは新しい現実と共に生きていかねばなりません」

 ヒラリーは、アメリカが海外では「謙虚さ」を示し、国内では、国家安全保障問題を「政争の具」にしてしまうことを止めるように求めた。ヒラリーは、アフリカとアラブの春が一段落した中東地域において、治安維持のための警察力を強化し、民主政治体制を促進するためにアメリカが長期にわたり関与するために、冷戦期のような超党派の合意が必要であると述べた。

 ヒラリーは、ソマリアとコロンビアに言及しながら、次のように述べた。「私たちは賢くならねばなりませんし、過去の教訓から学ぶ必要もあります。私たちは政権が代われば変更されてしまう政策を遂行するのではなく、一つの全く同じ政策を遂行していく必要があります」

 ヒラリーは更に次のように語っている。「私たちは世界で誰も持っていない政治力、経済力、軍事力を持っています。しかし、私たちはこのような力を最も効果的に使う方法を知ろうとせずに、横道にそれてばかりいます」

 「横道にそれている」とは、国家安全保障を危険にさらす党は争いについてのヒラリー・クリントン独自の婉曲表現である。もしアメリカが一つにならなければ、ベンガジ事件のようなことは更に起こることになるだろう。

(終わり)

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所


# by Hfurumura | 2013-02-07 19:48 | アメリカ政治

読売新聞が大々的に報じた東京財団出身者の動き

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社



 昨日の読売新聞に興味深い記事が掲載されていました。今年の夏に行われる参議院選挙の山形選挙区の自民党候補に大沼瑞穂氏という女性が決定したということです。党内の選挙で現職の県議に圧勝しての候補の内定ということになりました。

読売新聞が大々的に報じた東京財団出身者の動き_c0196137_1392136.png


 地元出身の県議が東京出身、公募で山形に移住してきた候補者になったということです。これは日本ではなかなかないことで、よほどのバックアップがなければ難しいことです。そのバックアップの一つの要素が「東京財団(Tokyo Foundation)」というシンクタンクです。

 東京財団はアメリカ(のジャパンハンドラーズ)の日本における一つの拠点になっています。東京財団の研究員一覧(→http://www.tkfd.or.jp/research/people/)を見ていただければわかりますが、ジャパンハンドラーズの頭目、現地司令官のジェラルド・カーティスコロンビア大学教授が研究員として在籍しています。ジェラルド・カーティス氏については、拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)で詳しく書きました。お読みいただければ幸いです。

読売新聞が大々的に報じた東京財団出身者の動き_c0196137_14027.jpg


 大沼氏の内定には、自民党本部の意向、もっと言えば、アメリカの意向が反映したものと思われます。

 東京財団と読売新聞社は共同で講演会やセミナーを開催するなど深い関係にあります。この2つの組織は共にアメリカの手先の拠点となっています。その点で関係が深いのは当然のことだと思われます。

 今回の大沼氏の内定は、読売新聞にとっても喜ばしいことだったようです。それで大々的に報道したようです。しかし、それは属国メディアのさもしい喜びということになるでしょう。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「女性元研究員、自民党員選挙に圧勝…参院候補に」

読売新聞電子版 2013年2月5日
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130205-OYT1T00340.htm

 自民党山形県連は4日、参院選山形選挙区(改選定数1)の公認候補を選ぶ党員投票の開票を行い、元東京財団研究員の大沼瑞穂氏(34)が選出されたと発表した。

 県連は近く、党本部に大沼氏の公認を申請する。

 大沼氏と県議の児玉太氏(42)の2人で争われた。発表によると、投票総数は5702票で、大沼氏が約63%にあたる3579票を獲得し、2118票の児玉氏に大差をつけた。投票権を持つ党員は8801人で、投票率は64・79%だった。

 大沼氏は、2010年の前回参院選でも公募に応じたが、党員投票で現職の岸宏一氏に503票差で敗れている。再挑戦で公認の座を射止めた大沼氏は「女性と高齢者の雇用を取り込むことが経済成長に欠かせないと訴えていきたい」と抱負を語った。

 県連を二分する激しい選挙戦が展開された前回の党員投票から一転、今回は県選出の国会議員が目立った動きを見せない「静かな」戦いとなった。大沼氏は前回の党員投票で培った知名度や若さを武器に、幅広い支持を集めた格好だ。

 今回の結果について、記者会見した同党県連の志田英紀幹事長は「もっと競ると思っていたので予想外だった」とした上で、「決まったからには大沼さんを挙党一致でもり立てていきたい」と話した。

 同選挙区は、いずれも新人で共産党の太田俊男・党県副委員長(59)、幸福実現党の城取良太氏(35)が出馬の意向を表明。改選を迎えるみどりの風現職の舟山康江氏(46)も近く立候補を表明する見込み。舟山氏が離党した民主党は、県連と連合山形が3月末までに共同で候補者擁立を目指す。

(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所


# by Hfurumura | 2013-02-06 01:40 | 日本政治

みんなの党・渡辺喜美代表についての記事を読んで:米政翼賛会内の動きが活発化している

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社



 今年の1月に入ってから、みんなの党と日本維新の会の選挙協力、合併の記事と合わせて、渡辺喜美・みんなの党代表に対する攻撃記事が目立つようになりました。これらの記事は、週刊CIA日本版の週刊文春(文藝春秋社)と日刊CIAにもなれない哀れな属国メディアで、全国紙の落ちこぼれの産経新聞に掲載されています。文藝春秋社と産経新聞が海の向こうの意向を受けて渡辺氏に攻撃を加えていることは明らかです。

みんなの党・渡辺喜美代表についての記事を読んで:米政翼賛会内の動きが活発化している_c0196137_20315647.png


 渡辺氏は、日本維新の会との合併や協力について慎重な立場を取っています。確かに、渡辺氏は一時期、みんなの党と日本維新の会の合併を模索したことがありました。しかし、日本維新の会が石原慎太郎氏率いる太陽の党(今となってはもう懐かしい響きですね)と合併したことで、昨年の総選挙では選挙協力までは行いましたが、それ以降、合併の話はしなくなりました。

 一方、橋下徹大阪市長は、「日本維新の会がなくなっても」「自分が下がっても」良いので、みんなの党と日本維新の会の合併を進めたいと主張しています。「第三極」として、自民党に対抗するという姿勢を見せています。

 これに対して、渡辺氏は、「日本維新の会が政策の異なる太陽の党と合併したこと」に対して、不信を持っているということになっています。しかし、渡辺氏以外のみんなの党の政治家たちは日本維新の会との合併に乗り気で、(恐らくとしか言えませんが)渡辺氏の許可を得ることなく、選挙協力や合併に向けての話し合いをしているようです。

 私は昨年から、渡辺氏以外のみんなの党の面々は日本維新の会との合併を望んでおり、渡辺氏は孤立しているということを感じ、そのことをツイッターなどで書いてきました。いよいよそれが現実になりそうです。これには権力闘争の面とよりアメリカの意向に沿うように米政翼賛会の引き締めを図るという面があるように私には感じられます。

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 みんなの党の江田憲司幹事長は、橋本龍太郎元首相の女婿であり、元通産官僚です。竹中平蔵氏や堺屋太一氏との関係も深い人物です。諸事情で今はみんなの党にいますが、元々は自民党や日本維新の会の中核、米政翼賛会の中核となる人物です。また、浅尾慶一郎氏もまた同じような人物と言えます。

 党の代表が放り出されるということは、近々であれば、亀井静香氏が国民新党から追い出されるということがありました。みんなの党もまたそのようなことが起きるのではないかと思われます。それにしても、文藝春秋も産経もアメリカの御用聞きばかりで情けなくないのでしょうか。いっそとのこと、合併してしまえばすっきりしてよいのではないかと思います。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「ミスター・アジェンダ 渡辺喜美の孤独な闘い 前門の橋下、後門の江田 みんなの党がひとりの党になる可能性も」
MSN産経ニュース 2013.2.1
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130201/stt13020122560002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130201/stt13020122560002-n2.htm

 みんなの党の渡辺喜美代表が、日本維新の会に対し“けんか腰”の姿勢を強めている。連携を互いに模索しているはずの維新の橋下徹共同代表と舌戦を繰り広げたかと思えば、国会での維新との幹部間協議まで「どうでもいい」と一刀両断。ただ、足下の党内には渡辺氏のワンマンぶりへの不満もくすぶっており、今のところ「孤独な闘い」を強いられている。(原川貴郎)

 「維新のペースに巻き込まれてしまうと、ズルズル遅れちゃうんです…」

 1日の国会内での記者会見。夏の参院選の候補者擁立について問われた渡辺氏は、維新をこう牽制(けんせい)し、一部公認候補を月内に発表すると明言した。

 維新との候補者調整が緒に就いたばかりであることを考慮し、1月27日の党大会で予定していた候補者のお披露目を見送ったことを踏まえての発言だった。

 「維新ペース」を警戒するのは昨年8月の苦い思い出があるからだ。渡辺氏は維新に「対等合併」を持ち掛けたが、維新は渡辺氏を袖にし、旧太陽の党と合併。結局、昨年の衆院選で自民党の大勝を許す結果となり、渡辺氏は「(維新には)猛省を促したい」と発言している。

「ミスター・アジェンダ(政策課題)」を自認する渡辺氏にとって、政策の一致は譲れない一線。維新の政策にも「旧太陽系が本当に原発ゼロの路線を飲めるのか」と疑問のまなざしを向ける。

 「渡辺氏には合併を拒否しながら、政策的に異質の旧太陽と合流し、今になって結婚したいと言ってくる橋下氏への不信感がある」

 そう解説するのはみんなの党幹部。橋下氏がみんなの党と民主党の一部を巻き込む形での新党結成に言及するなど、野党再編の主導権を握ろうとしていることも、「元祖第三極」を自負する渡辺氏の神経を逆なでしているようだ。

 だが、そんな渡辺氏の「不信感」は、党内をも覆いつつある。

 維新との連携話を進める江田憲司幹事長の動きすら、「選挙協力の権限の持ってない人たちが集まっているわけで、どうでもいい話」とこき下ろしたのだ。これには党内から「本来、選挙は幹事長マター。江田さんの立場がなくなる」との声が出ており、江田氏との主導権争いの様相を呈している。

 前門の橋下氏に、後門の江田氏。このままでは渡辺氏が孤立し、みんなの党が「ひとりの党」になりかねない。

●「「もう少し大人の政治家に」 橋下氏、みんなの党との合流に期待「維新なくなっても…」」
MSN産経ニュース 2013.1.28
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130128/stt13012814280003-n1.htm

 みんなの党の渡辺喜美代表が今夏の参院選に向けた日本維新の会との合流に否定的な姿勢を示していることについて、維新の共同代表に就任する橋下徹大阪市長は28日、「自公政権への対抗勢力となる新しい大きな政党をつくり、参院選で選択肢を示したい。そのために維新がなくなっても構わない」と重ねて合流に期待感を示した。

 渡辺氏は、維新が昨年の衆院選直前に太陽の党と合流して以降、維新について「政策が分からなくなり信頼が壊れた」との発言を繰り返し距離を置いている。

 これに対し、橋下氏は「反省すべきところは反省する」としつつ、みんなとは政策が基本的に一致しているとの認識を表明。両党の合流を求め、「どちらが吸収するとかではない。渡辺代表が気に入らないなら僕が引いても構わない。もう少し大人の政治家になってほしい」と述べた。

 一方、自民については「既得権を打ち破り、新しい社会構造をつくるというスタンスが決定的に違う」と対決姿勢を鮮明にした。

●「維新との幹部級協議、渡辺代表「どうでもいい」」
読売新聞電子版 2013.2.1
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130131-OYT1T01205.htm?from=ylist

 みんなの党の渡辺代表は31日、国会内で記者団に対し、同党と日本維新の会の幹部級協議について、「選挙協力などの権限を持っていない人たちが集まっているのだから、どうでもいい話だ」と語った。

 国会内で同日開かれた幹部級協議には、維新の会の松野頼久国会議員団幹事長とみんなの党の江田幹事長らが出席し、協議の定例化で合意した。両党の政調会長らは30日、10項目の基本政策でも合意。夏の参院選の選挙協力に向けた連携の動きに、渡辺氏が冷や水を浴びせた形だ。

 維新の会幹部は31日、渡辺氏の発言について、「ひどい発言だ。江田氏の立場もなくなる」と憤った。みんなの党内では、「選挙協力を主導する江田氏と渡辺氏の主導権争いが激化している」との見方が出ている。

(2013年2月1日08時04分 読売新聞)

(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所


# by Hfurumura | 2013-02-02 20:32 | 日本政治

自民党内の新しい動きについて:小泉氏の人脈づくりと石破氏の派閥づくり

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



ここ数日、自民党内の新しい動きの話が記事になっています。小泉進次郎氏が率いる、自民党青年局の陣容が紹介されたり、石破茂幹事長(脱派閥を標榜しているし、昔は武村正義氏が主宰したユートピア政治研究会に参加していたこともある)の側近がグループ作りを行っているという記事が出たりしています。

 現在の自民党の派閥について、読売新聞の取材・記事によると、次のような状況になっています。

・町村派(町村信孝元官房長官):80名→岸派・福田派・安倍派・三塚派・森派
・額賀派(額賀福志郎元財務相):約50名→田中派・竹下派・小渕派・橋本派
・岸田派(岸田外相):40名→池田派・前尾派・大平派・鈴木派・宮澤派・加藤派
・麻生派(麻生太郎副総理):34名→河野(洋)派
・二階派(二階俊博総務会長代行):28名→中曽根派・渡辺派・亀井派・伊吹派
・石原派(石原伸晃環境相):約15名→山崎派
・大島派(大島理森前副総裁):12名→三木派・河本派・高村派
・無派閥:約120名

 石破幹事長の側近と言われているのが、鴨下一郎国対委員長や山本有二衆院予算委員長です。彼らが石破派作りに動いているようです。一方の記事は、青年局の人事のことで、この中から小泉派ができてくるという筋立てになっています。

 小泉派ができるまではまだまだ時間がかかるでしょう。派閥はお金を配り、人事に介入し、若手の教育をするための組織です。小泉氏自体にはお金がなく、時分がまだ教育課程にいる身ですから、シンパグループ作りにはなるでしょうが、派閥という訳にはいかないでしょう。しかし、小泉進次郎氏のグループ作りの記事が出て、すぐに石破氏の派閥づくりの記事が出たというのは興味深いことです。こうした動きは恐らく、自民党内では、安倍氏の次は石破氏で、その次の次位は小泉氏であるちということを示すためのものでありましょう。

 小泉氏は父親の純一郎氏がある意味で最大の切り札です。はっきり言ってそれ以外には、学閥や閨閥(これはこれからのことですが)がありません。そこで、青年局長の今こそ、人脈作りをしなければならず、現在の青年局には、将来、小泉氏のライバルになる人、側近になる人、他派閥・グループながら親小泉氏になる人が出てきそうです。小泉氏の学閥と言えば、コロンビア大学やアメリカ留学経験者ということになるでしょう。これならば、自民党の内部にもたくさんいます。青年局次長には初当選組の福田達夫氏が入っています。福田氏は福田康夫元首相の長男です。福田氏と関係が深いのが国務省日本局長のマーク・ナッパー氏で、ナッパー氏は、ケント・カルダー・ジョンズホプキンズ大学SAIS教授の弟子筋であり、自民党で秘書をしていたということでは、マイケル・グリーンとは先輩後輩ということになります。ここに恐らくですが、今年の参議院議員選挙で中曽根康弘元首相の孫である康隆氏(コロンビア大学大学院で小泉氏とほぼ同時期に学ぶ。指導教授は共にジェラルド・カーティス教授)も加わってくるものと思われます。ジェラルド・カーティス、ケント・カルダー、マイケル・グリーンとの関係が深い人々が「若手」として自民党内で蠢動を始めようとしています。ここら辺のことは拙著『アメリカ政治の秘密』に書きましたので、お読みいただければ幸いです。

 自民党青年局で思い出すのは、竹下登青年局長と宇野宗祐次長の関係です。彼ら2人は、正力松太郎氏などからお金をもらい、アジアを歴訪し、青年海外協力隊創設のアイディアを得て、その創設に尽力します。2人は別派閥でありながら、友人関係を続けます。そして、竹下氏が退陣した後に、宇野氏の名前が出てきたのです。歴代の青年局長の名前を見ると、のちに総理大臣にまでなった人たちの名前が散見されます。現在の安倍氏も1996年から青年局長を務めています。この青年局長というポストはこれからの自民党内では、スッテピングボードになっていくのかもしれません。

 小泉氏にはまだ時間的な余裕がありますが、石破氏は待ったなしの状況で、党内に勢力を作らねばなりません。前回の自民党代表選でも明らかなように、国会議員の中で人気がないのが石破氏の弱点でした。しかし、今回の衆院選では新人たちが多数当選し、党内のバランスも変わってきています。新人たちが誰よりも恩義を感じるのが幹事長です。ですから、石破氏には現在の状況は大きなチャンスと言えましょう。ポスト安倍と言って、名前が出てくるのは石破氏と石原伸晃氏くらいのものです。ここで石破氏が党内を固めておけば自然と次の総理の座は転がり込んでくるでしょう。そうした中で、キーマンになるのは、山本有二代議士ということになるでしょう。汚れ役も引き受けられるキングメーカー型の政治家です。鴨下氏は医者からの転身で、ソフトな語り口の理論派であり、テレビ受けのする政治家です。硬軟取り合わせた人たちが側近にいるというのは、石破氏の強みとなります。石破氏の派閥づくりは石破氏の個人的な意向というよりも、ポスト安倍に向けた大きな動きであり、その裏にアメリカがいると言えましょう。政治家たち以外での人気は証明されたわけですから、不安要因である政治家たちの人気を固めておけば、安倍氏が辞任するような事態になってもすぐに対応できます。

 自民党内で新しい動きが出ているようです。若い小泉氏の人脈づくりとベテラン石破氏の派閥づくり。これはポスト安倍へ向けた動きであり、将来に備えた動きです。そして、これらの動きの裏にはまたアメリカがいるようです。その点では確かに記事として連続して出てくるべきものなのでしょう。

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「石破氏、“無派閥の派閥”を旗揚げ! 「包囲網」打破が狙い?」

ZAKZAK 2013年1月29日
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130129/plt1301291136003-n1.htm

 自民党の石破茂幹事長を支持する無派閥議員が、事実上の「石破派」を立ち上げることが分かった。昨年9月の総裁選で、石破氏は「脱派閥」を掲げて戦ったが、安倍晋三首相率いる主流派が「石破包囲網」を敷くなか、前言を修正して基盤強化に乗り出すつもりなのか。

 石破派の名称は「無派閥連絡会」。総裁選で石破氏を支えた鴨下一郎国対委員長や、山本有二衆院予算委員長ら約30人が参加し、31日に初会合を開く。党内第4、5勢力となる見込み。他派閥と同様、今後、毎週木曜日昼に定例会合を開くという。朝日新聞が29日朝刊で報じた。

 昨年末の衆院選で圧勝し、自民党幹事長に留任した石破氏だが、その立場は極めて微妙だ。

 石破氏は党三役に懇意の小池百合子元防衛相を推したが、安倍首相は、野田聖子総務会長と高市早苗政調会長を抜擢した。自身の周辺にも、安倍首相に近いベテランの河村建夫選対委員長や、細田博之幹事長代行、二階俊博総務会長代行らがおさまり、完全に包囲網を敷かれているのだ。

 政治のイロハを学んだ田中角栄元首相の教え通り、「数の力」で政治の壁を打ち破るつもりなのか。

 自民党関係者は「『脱派閥の派閥』なんて冗談みたいな話だ。まあ、石破氏が『脱派閥』を掲げたのは、所属した額賀派の幹部らとソリが合わず、同派を飛び出たから。本気で『脱派閥』を唱えたわけではない。今後、隙を狙って『ポスト安倍』に踏み出すつもりだろう」と語っている。


●「進次郎氏、事実上の旗揚げか 82人決起! メンバーは大物の子弟ズラリ」

ZAKZAK 2013年1月28日
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130128/plt1301281826006-n1.htm

 自民党内で若手エース、小泉進次郎青年局長(31)をめぐる動きが活発化している。通常国会の28日召集を受け、青年局は30日に役員会を開いたうえで、2月1日から毎週、定例役員懇談会を開くというのだ。役員数は衆院議員72人、参院議員10人の計82人で、党所属国会議員の5分の1以上になる。永田町では「事実上、進次郎派の旗揚げでは。一致結束すれば、無視できない勢力になる」と見る向きもある。その全容とは-。

 「進次郎氏がやる気満々らしい」

 自民党の一部に先週初め、こんな噂が飛んだ。関係者によると、進次郎氏は先々週あたりから、若手の議員会館事務所に「これから頑張りましょう」などと、あいさつをして回っていた。

 念頭には青年局の人事があったようだ。22日の総務会で青年局役員人事が決定され、新体制が発足した。45歳以下の衆院1-3回生、参院1、2回生のうち、政府入りした議員などを除く82人が役員になった。

 同日、青年局事務局から会館事務所に、会議・会合の案内がファクスで届いた。それによると、1月30日正午に党本部で役員会を開き、2月1日以降の毎週金曜日、正午から定例役員懇談会を行うという。

 進次郎氏の脇を固める青年局メンバーの顔ぶれはどうなっているのか。目につくのは、父である小泉純一郎元首相と縁のある大物政治家らの子弟だ。

 橋本岳(がく)氏は、1996年と2001年の総裁選で小泉元首相と争った橋本龍太郎元首相の次男。武部新氏の父は、小泉元首相に「偉大なるイエスマン」として尽くした武部勤元幹事長。福田達夫氏の父は、同じく官房長官として仕えた福田康夫元首相。中川俊直氏の父は、やはり政調会長を務めた中川秀直元幹事長、大野敬太郎氏の父は、大野功統(よしのり)元防衛庁長官…。

 彼らが国会議員になる前の経歴としては、地方首長や財務・農水・国交官僚、弁護士、医師、経営者、松下政経塾出身者、五輪メダリスト、ミスコン女王など、まさに多士済々といえる。

 こうした面々を統括する役員懇談会が、定例化されたのが特筆される。

 政治評論家の浅川博忠氏は「自民党の各派閥は、毎週木曜日に定例会を開いており、進次郎氏は曜日をズラして同じ形を取った。青年局所属議員は、国民的人気の高い進次郎氏とともに行動することで後援会などに発信できて選挙にプラス。進次郎氏としては、今後に備えてそれなりのグループを作りたい思惑もありそうだ。政策が近く、気心の知れた議員が絞り込まれて『進次郎グループ』のような形になるのではないか」と語る。

 過去の若手議員グループとしては、2005年衆院選で初当選した「小泉チルドレン」83人がつくった「83会」が記憶に新しい。08年の総裁選では、83会メンバーが中心となって小泉元首相の再登板を目指すなど、政局にも絡んだ。

 24日現在、自民党の国会議員は378人(正副議長含む)だから、青年局の82人が結束して動けば大きな力となるのは間違いない。

 自民党中堅議員は「83会と違い、青年局には進次郎氏という『核』があるのでインパクトが大きい。政策形成の過程で執行部に圧力をかけたり、いざとなったら進次郎氏を総裁候補として立てる可能性もある」と警戒感を隠さない。

 実際、進次郎氏は存在感を発揮し始めている。

 新年早々の党厚生労働部会で、70-74歳の医療費窓口負担を1割に据え置いている特例措置の存廃について議論した際、進次郎氏は「2割という本来の水準に戻すべきだ」と主張し、夏の参院選への影響を懸念する議員と対立した。

 進次郎氏と青年局メンバーは2月10日から11日にかけて、全国の青年部長や青年局長も交えて、1泊2日で東日本大震災の被災地・福島を訪問する。毎月11日、被災地を訪問する青年局の事業「TEAM-11」の一環で、被災者を招いて同事業の1周年報告会を開催するという。

 さらに、島根県が2月22日に主催する「竹島の日」記念式典に、進次郎氏は青年局メンバーと出席する予定で、石破茂幹事長も了承済みだ。

 青年局長は「首相への登竜門」といわれ、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相も経験者だ。進次郎氏もここで人脈を作り、政策、グループの動かし方を学びステップアップしていくのか。

 前出の浅川氏は「先輩議員から『若手を囲い込んでいる』と嫉妬されないように、うまくやれるかが課題だ。参院選までは『選挙の顔』として進次郎氏には活発に動いてもらいたいはずなので、動きは黙認される。参院選後は難しいかじ取りを迫られるだろう」と話している。

(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所


# by Hfurumura | 2013-01-30 21:24 | 日本政治

ネオコンは死なず:ナショナル・インタレスト誌から

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



マルコ・ルビオとネオコンの復活(Marco Rubio and the Neocon Resurgence)

ジェイコブ・ハイルブラン(Jacob Heilbrunn)筆
ナショナル・インタレスト誌(National Interest)
2013年1月24日
http://nationalinterest.org/blog/jacob-heilbrunn/marco-rubio-the-neocon-resurgence-8016
http://nationalinterest.org/blog/jacob-heilbrunn/marco-rubio-the-neocon-resurgence-8016?page=1

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フロリダ州選出の共和党所属連邦上院議員マルコ・ルビオ(Marco Rubio)は、次の大統領選挙出馬の準備として、小さいが重要な動きを行った。それは、ルビオがジェイミー・M・フライ(Jamie M. Fly)を国家安全保障担当補佐官として雇った。フライは、シンクタンクのフォーリン・ポリシー・イニシアチヴ(Foreign Policy Initiative)の事務局長を務め、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権に参画していた。これはなかなか賢い決定であった。それは、イラク戦争が失敗だったとは認めることを拒否し、ネオコンが支配している共和党向けには賢いということではあるが。ネオコンが、外交政策について議論を行う際の決まりきった定型文を作っている。共和党内部をネオコンが支配している状況では、共和党内で外交政策に関する議論、内輪もめさえも起こすことができないでいる。ネオコンは共和党内部をこれまでよりも完全にコントロールしているようである。

フォーリン・ポリシー・イニシアチヴ(FPI)は2009年にウィリアム・クリストル(William Kristol)によって創設された。その目的は、有望な若手を訓練することだ。この組織は目的を達成したように見える。FPIは、ニューヨークに1か所、ワシントンに2か所のリーダーシップ・プログラムを作った。フライは、手堅い手腕と熱意にあふれたネオコンであり、シリア、アフガニスタン、イスラエルといった幅広い外交政策に関する諸問題で強硬な発言を繰り返している。昨年の秋、フライは『フォーリン・ポリシー』誌で次のように書いている。

「オバマ大統領は、同盟諸国を疎外し、専制国家に対する国家を代表して発言することを失敗している。オバマ大統領はアメリカの国益を脅かす暴政国家に関与し、異議申し立てを無視してきた。イランが核兵器開発能力を手にする日はだんだん近づいている。アメリカと同盟国イスラエルとの間の不協和音は大きくなっている。そして、テロリストによるアメリカ国民や政府関係者たちへの攻撃計画は、イラン政府の指令に基づいて次々と立てられている」

フライがマルコ・ルビオのスタッフに参加したことは、共和党内にネオコンの影響力が残っていることを示している。そして、ウィリアム・クリストルが自分の片腕を共和党内部で地位を得させることに成功したことも示している。

 フライは、ゲイリー・シュミットと共著で、『フォーリン・アフェアーズ』誌に記事を掲載した。この記事の中で、フライは、アメリカがイランを攻撃することを求めている。記事の中から引用する。

「限定的な軍事攻撃が一時的であるが、有効な解決策である。しかし、核兵器開発プログラムを阻止したいとアメリカ政府は考えているのに、実際には反対のことを行うことになる。イラン政府は核兵器開発プログラムを地下に潜らせ、アメリカとアメリカの同盟諸国に脅威を与える能力を保持している。それをアメリカは許しているのだ。アメリカは軍事行動の採用について真剣に考える場合、イランの核開発プログラムにだけ攻撃するだけではなく、イランの現体制を不安定にするべく攻撃することが必要だ。それによって、イランの核開発危機を一気に解決することにつながるのだ」

 残念なことに、空爆を行っても、体制変革(regime change)が起きるという保証はない。どれほど大規模な空爆を行っても、体制変革が起きないこともある。オリバー・ノースはかつてイラン・コントラ事件について述懐した時、攻撃が体制変革につながるとは限らないという考えを「きちんとした考え」と評した。アメリカによる空爆によって、中東地域を混乱に陥るか、イランの現体制を強化するという結果で終わることもある。ルビオは、自分の領分をはっきり区分している。外交問題に関して言うと、敵を作らないようにという意図を持っている。ルビオの決断は他の大統領選挙立候補希望者たちにも影響を与え、彼らがネオコンを自陣営に招くこともあるだろう。そして、大統領選挙の予備選挙と本選挙での焦点となる可能性もある。

『ニューヨーカー』誌にジル・レポーレによる重要な記事が掲載された。その記事によると、冷戦終結後、アメリカの軍事的な立ち位置について再評価はなされてこなかったということだ。レポーレは、ボストン大学のアンドリュー・J・バセヴィッチ(Andrew J. Bacevich)教授の文章を引用している。この部分は単純ではあるが重要である。バセヴィッチはアメリカの軍事中心主義(militarism)に対して批判的な人物として有名である。

「アメリカは地理的に言えば、2つの大洋によって世界から隔絶されているが、同盟諸国に囲まれている。アメリカは地理的に見て、偶然の結果ではあるが、地上で最も堅固に守られている国である。それにもかかわらず、太平洋戦争終結後の約60年間、約30万のアメリカの将兵が海外に駐留してきた。ドイツには5万5000人、日本には3万5000人、イタリアには1万人が駐留している。連邦政府の「国防」予算とは言っているが、国境警備やアメリカ国民警護にはそこまでのお金が投入されてはいない。それどころか、アメリカ軍は、アメリカの外交政策を補強しているのだ。

 これは否定しづらいものだ。オバマ大統領はイラクからアメリカ軍を撤退させ、アフガニスタンからも撤兵させつつある。しかし、アメリカの国外における軍事力と目的についての基本的な議論は、オバマ政権内でも連邦議会でも行われていない。これまでの20年間のことを懐かしむ人は、アメリカは冷戦期に持っていた精神を現在でも保つべきだと考えているようだ。中国とイスラム教徒のテロリストが冷戦期のソ連の代わりになっている。また、冷戦期の主張が現在もなされていることもある。体制変革のような考えを現在でも主張しているのはネオコンである。しかし、レポーレが書いているように、アメリカ国民の中で、そのような暴力を伴う政策に対して違和感を持っている。しかし、アメリカ軍に対しては違和感を持っているということではない。「年若い帰還兵への対処が重要になっている。2011年にピュー・リサーチセンターが行った調査によると、アフガニスタンとイラクからの帰還兵のうち、半数がアフガニスタン戦争は戦う価値のないものだと考えている。約60%はイラク戦争も戦う価値のない戦争だと考えている」アメリカ国民は、イラン、シリア、その他の紛争地域に軍事介入すべきではないと考えているのは疑いようのないところだ。しかし、アメリカ国民のこのよう気持ちは共和党内部では反映されていない。オバマ大統領は、二期目では軍事よりも外交を優先するという姿勢を見せている。これに対して、ネオコンは、オバマ大統領が小心過ぎると非難している。1月22日にPBSのテレビ番組に出演したアメリカ・エンタープライズ研究所のダニエル・プレツカは、オバマ政権を激しい言葉づかいで非難した。プレツカは、アメリカの安全に対する多くの脅威を無視していると主張した。

「私は、全体の流れはトラブルだらけということになっているように思う。ベンガジ事件は、オバマ政権の後退政策を象徴したものである。また、オバマ政権がアルカイーダからの挑戦に対処したくないという姿勢が招いたものだ。オバマ政権がアルカイーダに対して消極的なのは、アルカイーダが北アフリカ、リビア、マリ、アルジェリアだけで活動している訳ではないからだ。アルカイーダは、イエメン、シナイ半島、イラク、南アジア、アフガニスタン、パキスタンでも活動している。アルカイーダに対処するには世界中に出なければならないが、オバマ大統領はそれに対して消極的なのだ」

言い換えるならば、脅威というのはどこにでもあり、全く予想しない場所にすらある。マルコ・ルビオはネオコンをこんなに早い時期から支持することを表明した。しかし、共和党がネオコンに支配され続ける限り、次の選挙でも敗北することになるだろう。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


# by Hfurumura | 2013-01-26 18:13 | アメリカ政治