翻訳、評論の分野で活動するSNSI研究員の古村治彦のブログ
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安倍晋三氏とも親しいイアン・ブレマー氏の日本政治論:フィナンシャル・タイムズ紙から

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



「グルジアのように、日本も強力な隣国があることで大きな恐怖を感じている(Like Georgia, Japan has plenty to fear from a powerful neighbour)」
イアン・ブレマー(Ian Bremmer)筆
フィナンシャル・タイムズ紙(Financial Times)
2012年12月5日
http://blogs.ft.com/the-a-list/2012/12/05/washingtons-message-to-tokyo-dont-push-island-dispute-with-china/#axzz2ECBUCjZO

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イアン・ブレマー

 石原慎太郎前東京都知事は、先日、新党を立ち上げた。石原氏は、「新党は、より強く、タフな日本の建設に貢献する」と述べた。この石原氏は、東シナ海に浮かぶ群島の支配を巡って、中国との間で摩擦を引き起こした人物でもある。石原氏やその他の政治指導者たちが中国に対して、より厳しい外交政策姿勢を取り、攻撃的な態度を取るのなら、まず、彼らは日本と全く違う地域にあり、全く違う歴史を持つある国のことを見てみることを私はお勧めしたい。

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 ミヘイル・サアカシュヴィリ(Mikheil Saakashvili)がグルジアで起きた2004年のバラ革命に乗って大統領になった時、国際社会は、小国の民主政治体制への移行を讃えた。
サアカシュヴィリは大統領就任直後、すぐにアメリカとブッシュ政権にコンタクトを取った。中央アジア地域で新しい戦略的裕子関係を築く相手国を探していたアメリカはすぐにグルジアに接近した。しかし、アメリカの政府高官たちは、サアカシュヴィリ大統領がアメリカとの友好関係という「楯(shield)」を手に入れると、ロシアとの紛争を起こすという間違いを犯すのではないかという懸念を持ち、それを公にしていた。ロシアはグルジアの北部にあり、敵意を持つ隣国であった。サアカシュヴィリ大統領の就任から4年後、懸念は現実のものとなった。

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ミヘイル・サアカシュヴィリ

 グルジアの若き大統領は、隣の超大国の虐めに立ち向かうことで愛国心を高揚させ、ポイントを稼ぎたいと願っていた。そして、ロシアから分離独立を目指す南オセチアに戦車を送った。ロシア政府はグルジア軍をグルジアの首都トゥビリシに押し返す事態になった。アメリカはグルジア、ロシアどちらにも肩入れしなかった。アメリカは、グルジアのサアカシュヴィリ大統領に対して、ロシアに手を出さないように警告していた。コリン・パウエル(Colin Powell)国務長官はサアカシュヴィリ大統領に警告を発し、アメリカは、コーカサス南部の、ロシアから分離独立を目指す南オセチアをめぐりロシアと戦争をすることはないと述べた。

 グルジアの事例は、東シナ海にある群島をめぐり緊張を高めている日本にとって教訓となる。日本はこの岩礁群島を尖閣諸島と呼び、中国は釣魚島と呼んでいる。そして、日中両国が領有権を主張している。日本が領有権の主張を確固としたものとするために、尖閣諸島を国有化した。これに対して中国の各都市で反日抗議運動が燃え上がった。中国政府は、抗議運動を鎮静化させる動きを見せたが、抗議運動をいつもより長く続けさせた。

 中国の抗議運動に参加した人々は、日系のスーパーや日本製品の多くを破壊し、日本企業のボイコットを求めた。日本企業にとって中国市場は重要であるが、深刻な損害を被った。2012年9月のトヨタとホンダの中国における売り上げは、昨年同月に比べ、それぞれ49%、41%も減少した。日本企業の中には、中国での売上予想を再考する企業や輸出やサプライチェーンを他国に振り向けることを考慮せざるを得ない企業も出てきている。

 更に、日中両国の間で領有権争いが起きている海域でより攻撃的な姿勢を見せている。2012年11月、中国は毎日のように東シナ海の日本領海内に船を送った。中国が日本に送っているメッセージは明白だ。それは「図に乗るんじゃないぞ(Don’t push your luck)」というものだ。

 アメリカ政府が持つ懸念に日本政府は耳を貸さない状況だ。商業上、また安全保障上、危険があるにもかかわらず、日本の指導者たちは外国に対する攻撃的な態度を取ることでポイントを稼ごうとしている。その中には、中国との争いも含まれる。1930年代の日中戦争をめぐる論争は両国関係を硬直化させている。橋下徹大阪市長(彼もまた新たなナショナリスティックな政党を結成した)のような人気を集めている指導者たちは、日本と中国を商業上、そして政治上の争いに巻き込もうとしている。そして、彼らの存在がアジア地域における緊張の度合いを増大させている。東京都の予算を使って尖閣諸島を買い上げると脅すことで尖閣諸島をめぐる争いを引き起こした人物こそ石原慎太郎氏である。

 日本の自民党はもうすぐ行われる選挙で政権の座に復帰することになるだろう。そして、党の総裁であり、元首相の安倍晋三氏が再び首相の座に就くだろう。安倍氏は有権者からの支持を集めるために素早く行動する必要がある。国民からの支持を十分に得て、政治的な資本を手にすれば、彼の在任期間も伸びるだろう。日本は過去24年間に17名の首相が登場した。安倍氏はこれまで中国に対して懐柔的な発言をしてきた。しかし、2012年10月、安倍氏は、日本の近隣諸国が戦争犯罪人だと見ている人々が祀られている靖国神社に参拝した。このことは、安倍氏が首相になった後、支持率が下がったら、中国に対して厳しい態度で臨むようになる党ことを示している。

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 日本はグルジアとは違う。グルジアは小国であり、ロシアの影響下に生きねばならず、友好関係を築かねばならない。グルジアは、発展途上国であり、社会資本の整備は進んでおらず、根本的な解決を必要とする経済問題を多く抱えている。日本も多くの問題を抱えているが、世界第3位の経済大国である。安定した、工業化に成功した、民主国家でもある。また世界でトップクラスの多国籍企業の本社も存在する。

 とは言っても、日本はグルジアの事例から教訓を得るべきだ。そして、隣国である中国との対立を避けるべきだ。中国にとって日本市場へのアクセスは未だに必要な存在である。中国は日本企業や日本からの投資を歓迎している。そして、日本の技術へのさらなるアクセスを求めている。しかし、中国が現在必要としているものは、5年前の必要としていたものとは全く異なる。このような傾向は日本にとって良いことではない。中国がアジア地域の国々と新たなパートナーシップを結ぶ、アメリカやヨーロッパの消費者たちが購買力を回復する、中国の消費者が中国製品を買うようになる、こうした事態が起きれば、中国にとっての日本の重要性は減少し続けることになるだろう。

 中国の指導者たちも、日本の指導者たちと同様に、中国に脅威を与える隣国である日本を悪く思わせることで、人々からの支持を得ようとしている。グルジアでは、サアカシュヴィリ大統領は、ロシアとの紛争で素早い勝利をおさめ、国家としての誇りを高揚させたいと願った。しかし、実際には、ウラジミール・プーチンが最終的な勝利を収めたように見えた。日本の指導者たちもこのことを教訓にすべきだ。

 最後に、日本の森本敏防衛相は先週、日米安全保障同盟関係の見直しを提唱した。その際、森本防衛相は中国の海洋における脅威を強調した。日米パートナーシップという歴史のある同盟関係について話すことは重要である。そして何より、日米関係は日米両国お互いにとって大変重要なのである。中国が尖閣諸島を奪取しようとしてきたら、アメリカは日本を防衛することができるし、そうすることになるだろう。しかし、アメリカは、中国市場で叩かれることが確実な日本企業を防衛することはできない。しかし、中国市場こそが本当の戦場なのである。

 勃興する中国からの挑戦に対して日本が取り得る最善の方法は、日本経済のダイナミズムを国内から再構築し、アジア地域や世界との新しい商業関係を構築することだ。そのためには、知恵、忍耐、そして政治的意思が必要となる。日本の若い指導者たちが国の舵取りをするようになれば、彼らは、経済的成功こそが国益を守るうえで最良の方法であることに気付くことになるだろう。

※イアン・ブレマー:政治リスクコンサルタント会社ユーラシア・グループ代表。著書に『「Gゼロ」後の世界』(北沢格訳、日本経済新聞出版社、2012年)がある。

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2012-12-06 14:13 | 日本政治

日本政治論:エコノミスト誌から

アメリカ政治の秘密

古村 治彦 / PHP研究所



極(pole、ポール)を巡って競争するポール・ダンサーたち(Pole dancers)

曖昧なマニフェストを掲げる小政党は日本の有権者たちをうんざりさせようとしている

エコノミスト誌(The Economist)東京発
2012年11月24日
http://www.economist.com/news/asia/21567116-small-parties-vague-manifestos-hope-entice-fed-up-japanese-voters-pole-dancers

 日本の自由民主党(Liberal Democratic Party、LDP)について言い古されてきたジョークがある。それは、自民党は、自由主義的(Liberal)でも、民主的(Democratic)でもなく、ましてやきちんとした党(Party)でもないというものだ。自民党は、1950年代に反社会主義の諸派閥の雑多な組み合わせで形成された。そして、2009年に総選挙で大敗するまで、半世紀以上にわたり、雑多な派閥の集まりである自民党はその団結を保った。現在、歴史は繰り返す、という状況になっている。野田佳彦首相が2012年12月16日に総選挙を行うことを宣言して以降、日本の政治の世界には14の政党が出現している。

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 野田首相率いる民主党(Democratic Party of Japan)は国民からの支持を失っている。そして、新しく結成された諸政党は政治的には右であるが、これらは連合して日本を再活性化したいと熱望している。こうした戦略は諸政党の名前によく反映されている。「太陽(Sunrise)」、「維新」、「ルネサンス(Renaissance)」といった具合である。日本の有権者たちは、「こうした政党は一体何を基にして連合するのだろうか?」という疑問を持っている。

 総選挙の約3週間も前になって、諸政党のリーダーたちは、日本のメディアが、民主党と自民党以外の選択肢となる「第三極(third-pole)」と呼ぶ、連合を形成しようと躍起になっている。有権者の多くは、民主党には罰を与えたいが、自民党に政権の座に復帰して欲しくないと考えている。それは世論調査の結果から明らかである。民主、自民両党は、両方の支持率を足しても半数の有権者の支持を得られていない。従って、残りの諸政党は、お互いに協力するか、民主、自民どちらかと協力することができれば、影響力を行使できることになる。

 このような状況下、諸政党は、政策がぶつかることがあっても、最も魅力的な相手と一緒になろうとして、お見合いパーティー(speed-dating)に狂奔している。ベテラン政治家で反中国の立場をとる、石原慎太郎は、東京都知事を辞任して、右翼政党「太陽の党(Sunrise Party)」を結成した。それからほんの数日後、石原は、橋下徹大阪市長率いる日本維新の会(Japan Restoration Party、JRP)に入党し、党代表となった。石原、橋下両氏は、合併のためにいくつかの政策をあやふやなままにしておいた。そしてそれを敢えて問題視しなかった。橋下市長は、日本維新の会が主張していた2030年代までの原発廃止という主張を取り下げ、石原は、アメリカが主導している自由貿易協定、環太平洋戦略的経済協力協定(Trans-Pacific Partnership、TPP)への参加に反対する姿勢を軟化させた。

●いろいろなことが噴出している

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「橋石(HashIsh)」合併は、これらと連合を組む可能性が高かった残り2つの政党を驚かせた。一つは、みんなの党(Your Party)である。みんなの党は、TPP推進と反原発の立場をとっている。もう一つは、減税日本(Taxcut Japan)である。減税日本は、石原慎太郎と合併について協議していたところだった。

 諸政党のリーダーたちはうまく立ち回るべく動いている。彼らの動きは激しさを増している。それは、そうした活動を行う余地が多く存在するからだ。各種世論調査によると、自民党は約25%の支持を得ており、民主党の倍の数字となっている。しかし、自民党の安倍晋三総裁の人気は下降気味であり、一方、野田首相の人気は、国会を解散して以降、上昇している。多くの有権者が態度を決めていない。日本政治に関するブログ「シサク(思索)」の著者マイケル・チュチェックは、有権者が態度を決めていないこと受けて、次のように書いている。「第三極の諸政党は、安易な連合を組むだろう。政策を粘着テープで適当につぎはぎし、政治家個人の人気に頼り、うんざりするほど愛国主義を煽り立てるだろう」と。まrた、自民党と民主党の親財界の人々は、選挙後、一時的な連合を組もうとする可能性ある。このような「大連立(grand coalition)」の希望は過去に成就しなかった。しかし、今回は分からない。

 選挙の結果について、たった一つ確実に言えることは、日本政治が右傾化するということだ。石原慎太郎は、日本と中国との間で尖閣諸島の領有権をめぐる争いの引き金を引いた人物である。日中間の争いによって、ビジネスは大きなダメージを負った。しかし、石原は後悔をしていない。先月、東京都知事を辞任して以降、石原は、日本の戦争を非難する憲法は「醜い(ugly)」のでこれを改正し、中国に対してこれまで以上の厳しい態度で臨むべきだと強く主張している。石原は、日本は核兵器を開発し所有すべきであるとも主張している。また、1937年に南京で起きた大虐殺(massacre)については否定している。減税日本代表で名古屋市長の河村たかしは、南京大虐殺には疑義があると発言した。名古屋市と南京市は姉妹都市の関係にある。

 みんなの党は、日本維新の会との合併協議から離れようとしている。みんなの党は最初から慎重な姿勢を崩さなかった。しかし、選挙後、非公開の場所での交渉が始まれば、政策は再び柔軟に取り扱われることになる。みんなの党所属の浅尾慶一郎代議士は、「そうしたことは、それぞれの政党のリーダーたち次第であろう」と述べている。何も心配することはないのだ。

※アジア版から転載

(終わり)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン / ビジネス社


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by Hfurumura | 2012-11-26 13:02 | 日本政治